第19話 デレ期は唐突に訪れる
願望とか妄想とか思い込みではなく純然たる事実として、あたしとミミちゃんは相思相愛だ。
それはもう、みんなに延々と語り聞かせたいようなことから誰にも言えないことまで、とにかくたくさんのイチャイチャを経験している。
ところで、あたしはいま自室のベッドでゴロゴロしながらミミちゃんの配信を見ている最中なんだけど――
「こ、これは……っ」
開始から十分が経過した辺りで違和感に気付き、三十分を超えた時点で確信へと至った。
ゲームの実況を終えてエンディングトークに移ったのが、配信開始から一時間ほど経った頃。
果たして、リスナーさんたちは気付いていただろうか。
ミミちゃんが『ユニコちゃんにもやってもらいたいです』とか『ユニコちゃんなら、こっちを選びそうですね』など、いつもの数割増しであたしの名前を口にしていたことに。
断言しよう。配信を終えたミミちゃんは、この後すぐあたしの部屋に現れる。
これで来なかったら黒歴史の一ページに刻まれるところだけど、そんな心配は不要だ。
コンコンとノックの音が響き、「どうぞー」と声をかけると同時に扉が開かれる。
あたしは体を起こしてベッドに座り、こちらへ歩み寄るミミちゃんに微笑みかけた。
「ミミちゃん、配信お疲れ。あたしもリスナーとして楽しませてもらったよ~」
「ありがとうございますっ」
パァッと明るい笑顔を咲かせながら、ミミちゃんがあたしの隣に腰を下ろす。
ただ隣に座るだけではなく、肩が当たるほどに距離を詰め、あたしの左腕にギュッと抱き着いた。
これまで幾度となく五感すべてで堪能しているとはいえ、押し当てられた胸の感触はあたしの鼓動を否応なく加速させる。
「ふふっ、ユニコちゃんの温もりを感じます」
ミミちゃんは普段こそ恋愛やエッチなことに対して一歩引いた態度というか、恥ずかしがり屋な一面があるけれど、たまにあたし以上の積極性を見せる時がある。
あたしはそれを、デレ期と呼ぶ。
短くても丸一日、長ければ一週間ぐらい続く。
「ユニコちゃん、今日は一緒に寝ませんか?」
「もちろんいいよ。寝る前にキスもしようね」
「はいっ、たくさんしましょう。ユニコちゃんがよければ、いまからでもっ」
顔ごと視線を横に向けると、ミミちゃんが瞳をキラキラさせてこちらを見ていた。
別に人格が変わっているわけではないため、大胆な発言に対する羞恥心はどうすることもできず、頬がほんのりと紅潮している。
かわいい。あまりにもかわいすぎる。
「あたしはいつでも大歓げ――んむっ」
言い終わる前に唇を奪われてしまった。
プルンとした唇の柔らかさと温もりは、触れ合っている面積からは想像もつかないほどの強烈な快感と幸福感を生み出す。
この後、一緒に晩ごはんを作ったり、二人でお風呂に入ったり、おやすみのキスを何度もしたり、手をつないで眠りに就いたり、とにかくめちゃくちゃイチャイチャした。
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