第11話 リスナーさんに勝ちたい!
今日は視聴者参加型のゲーム配信を行う。
ド派手な技や魔法を駆使して戦う一対一の対人アクションゲームで、操作が比較的シンプルなところが個人的にとてもありがたい。
「十戦やって、勝った数だけミミちゃんのおっぱいを揉ませてもらうんだ~。あんまり大きな声では言えないけど、わざと負けてくれてもいいからね? あっ、もちろん本人に許可は取ってるから」
始めのあいさつをした後、今回の趣旨について説明する。
実際のところ条件がなくてもミミちゃんのおっぱいを揉むことはできるけど、たまにはこういうのもいいんじゃないだろうか。
『忖度を求めないで』
『ミミちゃんのためにもユニコちゃんには全敗してもらわないと』
『揉んだら感想聞かせてね』
「さてと、それじゃあさっそく始めよっか。パスワードは下に映しとくから、早い者勝ちで参加してねっ」
コントローラーを手に持ち、対戦マッチングを開始する。
すぐに相手が見付かり、対戦画面へと移行した。
「よーしっ、ボッコボコにしちゃうぞ~!」
ミミちゃんのふわふわもちもちおっぱいの感触を思い浮かべながら、上機嫌で対戦に臨む。
防御や回避を意識しつつ積極的に攻め続け、こちらはほぼ無傷のまま、相手の体力ゲージを残り一割未満のところまで削った。
あと一撃加えれば勝ち!
「って、えっ? んぐっ、うっ、ちょっ、ちょっと待っ、ひっ、いやぁああぁああっっ!」
あと一撃を加えられないまま、ほぼ満タンだったあたしの体力ゲージがあっという間に削り切られた。
一瞬チートを疑うレベルの、鮮やかすぎる動き。
「いきなり負けたーっ! っていうかひどいよ! 普通に負けるよりショックなんだけど!?」
『ミミちゃんの胸は守られた』
『全敗する未来が見えた』
『次頑張ろう』
「次! 次は絶対勝つから!」
敗北を糧にやる気をさらに燃やし、二戦目に突入する。
「ぷぎゃっ! ま、待って! ストップ! 靴紐ほどけたからタイム!」
必死に逃げ回りながらそう叫んでいると、要求通り相手はピタリと動きを止めてくれた。
あたしは一時停戦を呼びかけておきながら、それとなく背後に回る。
「不意打ち上等! はっはぁっ、戦いの最中に油断する方が悪いんだもんね!」
恥も外聞も捨て、後ろから最速の攻撃を放つ。
このタイミングなら、回避も防御も間に合わない。
今度こそ勝――ってカウンター!?
「そ、そんな……割と卑怯な手まで使ったのに……」
『割とっていうレベルじゃないけどね』
『これはクズ』
『神獣じゃなくて魔獣を名乗るべき』
『これが、卑怯者の末路……』
「負けてショック受けてるのにコメントで追い打ちかけないでよ!」
三度目の正直。
次こそ勝つ!
「――あぇ#$‘?+*@%っ!」
『なんて?』
『なんて?』
『もう一回言ってほしい』
『悲鳴助かる』
二度あることは三度ある。
だとしても、四度目以降は変えてみせる!
「んきゅうっ!」
ま、まだまだ!
「ひんっ!」
四戦目、五戦目と立て続けに惨敗。
六戦目は接戦の末、相手の出方を読み違えて負けてしまう。
七戦目は持久戦に持ち込もうとしたら怒涛の速攻をさばききれず敗北。
八戦目と九戦目は無言になるほど集中して挑んだけど、結果は圧倒的な実力差を見せ付けられただけだった。
「うぐぐっ……次で最後だから、これに勝ったら一万回勝ったってことにする!」
『言うと思った』
『バラエティかな?』
『桁がおかしい』
『どうせ負けちゃうよ』
「ラストは絶対勝つもん! みんな、あたしの勝利をたたえる準備しといてね!」
あたしは決して、このゲームが特別不得手というわけではない。
むしろそれなりに上手な方だと思っていた。
ただ、その自信が実力に裏付けられたものか否かはともかく、あたしより上手い人はごまんといるわけで。
この日、SNSで『ユニコ全敗』がトレンド入りした。
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