第10話 和室で寝る時は

 配信を終えてお風呂に入った後、あたしとミミちゃんはリビングで晩酌を楽しんでいる。

 テーブルの上には、お酒の缶とビッグサイズのスナック菓子。


「寝る前にこんなの食べたら、太っちゃうかなぁ」


 なんてことをつぶやきつつ、お菓子を口に運ぶ。

 うん、おいしい。


「ユニコちゃんは華奢ですから、少しぐらいふっくらしても太ったうちに入りませんよ」


「そう言ってくれると気が楽かも。ミミちゃんは脂肪が全部おっぱいに行くから、心配いらないよね」


「わたしとしては、むしろ心配の種なんですけどね」


 ミミちゃんは自分の胸に視線を落とし、すぐさま目を逸らして溜息を漏らした。

 胸は大きければ大きいほど、伴う苦労も多いと聞く。

 肩こりの原因になったり、かわいいブラがなかったり、運動すると揺れて痛かったり。

 しかし、あたしはそれを覚悟の上で巨乳になりたいと心の底から思っている。


「ところでミミちゃん、今夜は一緒に寝る?」


 配信の都合で一緒に寝れない日の方が多いけど、今日みたいに時間が合う日はどちらかの部屋で寝るのが恒例だ。


「ユニコちゃんがよければ、ぜひ」


 ミミちゃんが嬉しそうに微笑む。

 恋人だから当然と言えば当然なんだけど、あたしがミミちゃんを一方的に好きなわけじゃなく、ミミちゃんもあたしに対して同じ気持ちを抱いてくれている。不意にそれを実感して、あたしもおのずと口元が緩む。

 最愛の人と一つ屋根の下で暮らし、お酒を酌み交わし、一緒に寝る。

 自分のことながら、爆発していないのが不思議なほどに幸せな生活だ。


「あたし、今日は和室で寝たいな」


 ミミちゃんの瞳を見つめながら、ポツリと漏らす。

 二人とも自室にベッドがあるのに、なぜあえて和室を指定したのか。

 それにはもちろん理由がある。


「わ、和室で、ですか……」


「うん。ダメ、かな?」


 あたしが訊ねると、ミミちゃんは慌てて首を左右に振りながら「ダメじゃないですっ」と答えてくれた。

 普通に考えれば、単にいつもと違う部屋で寝るだけのこと。

 けど、あたしとミミちゃんにとっては特別な意味を持つ。

 来客時を除き、あたしたちが和室で寝るのはエッチする時だけだからだ。

 つまり、『和室で寝たい』と口にするのは、『エッチしたい』という意思表示に他ならない。


「今夜は寝かさないつもりだけど、朝配信の予定とかある?」


「明日は夕方から配信するつもりなので、大丈夫です」


 あたしたちはテーブルを挟んで熱い視線を交わし、片付けを後回しにしてリビングを離れる。

 この後、和室でどんな光景が繰り広げられたのか。

 決して配信では話せない、二人だけの秘密だ。

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