第9話 ミミちゃんと寝た話
「こんユニ~! お昼のまったり雑談配信、はっじまっるよ~っ!」
日曜日の正午。配信開始と同時に、リスナーさんたちに向けて元気よくあいさつする。
『こんユニ!』
『こんユニです』
『こんユニ』
『まったりとは』
『こんユニでーす』
『テンション高いね』
『こんユニ~』
「配信開始早々ですが、みなさんに報告しなきゃいけないことがあります! 実は昨日、ミミちゃんと寝ました!」
さりげなくBGMをオフにして、『ドドンッ!』という効果音を鳴らす。
デビュー当初は配信を始めるだけでも四苦八苦していたあたしが、いまや息をするように――とまではいかないけど、ある程度の操作ならササッとこなせるようになった。
BGMを戻し、ドヤ顔で配信を続ける。
「もちろんエッチな意味じゃないよ? あたしとしてはそれも大歓迎だけど、軽く触りっこしたり、遅くまでおしゃべったりしたぐらいで、やましいことはなにもしてないからね」
『サラッととんでもないこと言ってる』
『いい匂いしそう』
『楽しそう』
「めちゃくちゃいい匂いだったし、おっぱいの柔らかさや体温を感じながら癒しボイスを至近距離で堪能して耳が幸せで……ん~っ、ほんっとに最高だった! 朝から体調もいい感じだし、ミミちゃんの添い寝効果は素晴らしいね!」
自慢兼のろけ話を、意気揚々と配信に乗せる。
「あっ、そうだ。ミミちゃんいまヒマだったりするかな。みんな、ミミちゃん呼んでもいい?」
『急展開w』
『いいよー』
『突発コラボだー!』
『わくわく』
リスナーさんたちの反応を確認しつつ、ミミちゃんに『いま時間ある? 通話できる?』とチャットを送る。
すると、即座に『はい!』と返信が来た。
そこでふと、通話じゃなくて部屋に来てもらったほうがよくない? という考えが浮かぶ。
改めてチャットを送り、『了解です!』というチャットの数秒後に本人が部屋に現れた。
「みんな~っ、ミミちゃんが来てくれたよ! 最初は通話しようと思ってたんけど、せっかく一緒に住んでるから直接部屋に来てもらっちゃった! それじゃあミミちゃん、あいさつよろしく!」
あいさつを促しつつ、ミミちゃんの立ち絵をあたしの隣に表示する。
「みなさん、こんユニです。闇の力を司る魔神、ガールズパーティ二期生の闇神ミミですっ」
「ミミちゃんありがとう! ということでね、ミミちゃんの匂いを嗅ぎながら配信させてもらいます」
『ミミちゃん逃げて』
『通報の準備しなくちゃ』
『ユニコちゃんそこ代わって』
『女神と変態のコラボ』
「まぁまぁ、リスナーさんたち落ち着いて。配信中には取って食べたりしないから。で、さっきの続きだけど――そうだ、まずミミちゃんに説明しないと」
「あっ、配信見てたので大丈夫です。ある意味、大丈夫じゃないですけど……」
チラッと隣に視線を向けると、ミミちゃんの頬がほんのり赤くなっていた。
この初々しさ、ほんとにかわいい。
もちろん、初々しさが皆無になったとしてもかわいいけどね。
「せっかくミミちゃんに来てもらったことだし、エッチなことは適度にぼかしつつ、昨日の添い寝について話していこうかな。そもそも、なんで一緒に寝ることになったんだっけ?」
「忘れたんですか? ユニコちゃんが怖い画像を見て一人で寝れなくなって、わたしのところに来たんですよ」
「そうだった! うわっ、本気で忘れてたんだけど……」
めちゃくちゃ恥ずかしい。
どうやら防衛本能が働いて、楽しい記憶だけ残してくれたらしい。
「枕をギュッと抱きしめて涙目で部屋に入ってきたユニコちゃん、すごくかわいかったです」
「わーっ! わーっ! ちょっと待って! 恥ずかしいからやめて!」
『それはかわいい』
『かわいい』
『かわいい』
『文句なしにかわいい』
『もっと聞きたいです』
ミミちゃんが活き活きとした様子で昨晩のあたしについて語り、コメント欄は今日一番の盛り上がりを見せる。
話が一段落つく頃には、あたしの顔は羞恥で耳まで真っ赤になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます