魔族の子供

イリスにお願いしてあの魔族の子に会わせて貰った。


会わせて貰うって言っても同じ部屋にある、あえて近づかないようにしていたイリスのベッドの近くに来ただけだけど。


ベッドの上では仰向けで未だに目を閉じたまま眠っている魔族の子供がいた。


…昨日は色んなことがあって魔物から助けた…でいいのかな?

とにかく時間がなかったからイリスから話を聞くだけで余り気を使ってなかったが、


…改めて見ると女の子だったのか。


今でこそ安堵した表情で眠っているがあそこで助けない事を選択しないで良かったと心から思う。


なんで魔物に襲われていたのか。それ以外にも魔族の子が1人でどうやって魔族がおらず人間が中心で暮らしているこの国に来たのか。


正直まだわからないことだらけで話を直接聞ければいいと思ってはいるんだが…。


「この状況で無理矢理起こすのもなぁ…。」


起こす以前にいつ目を覚ますのかもわからない。

…こんなことだったら魔族の事ももっと勉強していればよかった。


僕が何を考えているのかわかったわけではないだろうがイリスから声がかかる。


「…リョウガはやれるだけの事をやろうとしたんだから。この娘のことばかり気にしてたらリョウガがつぶれちゃうよ。」


そう言われて心が少し楽になる。…僕はどうやらこの娘のことを気にしすぎてたみたいだな…。


「ありがとう。」と言いながら隣にいるイリスの頭を撫でる。最近になって気づいたのだが、昔は恥ずかしがって嫌がっていると思っていたがどうやら違うらしい。むしろ撫でられて、今ではトロン、とした表情をしているので良くしている。


…今も僕の後ろに立つユキが羨ましそうに見るのはおいといて。


大分撫でた後でイリスとユキに僕は気になっていたことを話す。


「なぁ二人ともこの子は誰かに拐われそうになっていたってことでいいのかな?」


「そうね。その可能性が高いと思うけど…。」


…とイリスが、


「何故かあの時殺されないで拐われそうになっていたのでその通りかと…。」


ユキからも肯定の言葉が帰って来た。


実際にあの魔物が最終的にどうしようとしたのかはわからないが少なくともあの場では僕達のことはどうでも良くこの子だけに執着しているように見えた。


「イリス。なんで拐われそうになってたかわかるか?…魔族の子は魔物にとって利用価値があるとか?」


「そんなの記憶の中にはないけど…。それに魔物に自主的に行動して殺すだけならともかく拐うことはないと思うけど…。」


「だよなぁ…。」


魔物の行動にしてはおかしな点ばかりなんだ。

その事をイリスと悩んでいるとユキから僕も考えてはいたが確信がなく、迷っていたことと同じ答えを導き出した。


「私は魔物のことをお兄様達ほどは知りませんけれど誰かが魔物を操つってやったのではないでしょうか?」

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