イリスの憂鬱(イリス視点)

「もう全部話せば良かったかな…。」


リョウガとユキが帰ったあと私は1人でソファーに寝転がりながら考え事をしていた。


リョウガ達には嘘は言ってない。私の事を信じてくれた、私が覚えている記憶の中でもの人達。


そんな人が現れるなんて思ってなくて、つい外でも色んな事を喋ってしまった。私が気づく範囲ではリョウガ達以外では誰もいなかったから良かったが私を…龍を討伐しようとしてる人達に聞かれてしまうことを考えると恐ろしい。


でも私の心は自分でも驚くほど落ち着いていた。こんなことは初めてかも知れない。


私が震えているのに気づいて手を添えてくれたリョウガの事が頭に浮かぶ。


ユキも私の事を信じてくれている。でもリョウガは私の事を知った上で、驚いてはいたが怯えていた様子は微塵もなかったようだった。


私が龍種だと知った人の反応は討伐しようとするか怯えて逃げ出すか。今までこの2つだけだった。


だからなのかな…ここまで私の事を龍ではなく人として…女の子として心配してくれるだけで胸が高鳴ったのは。


それに最後にリョウガが言っていた言葉。


『なぁイリス。もし僕のことを信じてくれてるんならさ。僕が大人になったら一緒に……。』


ユキとずいぶん前に話したことがある。将来、リョウガは1人でどこかに行ってしまう。その話を聞いてなかったらわからなかっただろう。


…もしかして私も一緒に着いてきてほしかったのかな?


リョウガ達が帰ってからもずっと考えちゃってる。こんなに自分の気持ちを押さえられないのも始めてのことだ。


リョウガと出会ってから長い記憶の中で始めての事ばかり経験してる。


…ユキはこのモヤモヤした感情を恋だと言っていた。一年前の私は冗談だと流した話しではあったが、ここまでリョウガの事を考えてると本当にそうなんじゃないかと思えてくる。


でもそんな事考えたら本当は


さっきも話を不自然に切り上げてリョウガ達を帰らせたのもそのせいだ。


これ以上私に優しくされると本気になっちゃいそうだったから。


まだ話してはいない…話すつもりも今はないが龍種は人種に


生まれたときに私達龍種は、そうお母さんに言いつけられている。


私達に見合った相手はお母さんが見定めて決める…らしい。もう昔の記憶もあわせると何年生きているのかもわからないが今まで決まったという連絡はお母さんから届いてはいない。


…届いて欲しいとも思ったことはないけど。


だから私はこの気持ちの正体がわかっても我慢しないといけない。


リョウガにはこれからも協力してあげる。でもそれはあくまでとしてじゃないといけない。


そんな誰かに聞かれるわけでも無いことをずっとこうやって言い訳してる時点で手遅れなのかも知れない。


…今日はもう寝てしまおう。そう考えてベッドに向かうがいつも使ってる方は魔族の子供を寝かせていた。


そんなことも忘れかけているほど考えていたらしい。


仕方なく毛布を用意してソファーで眠る。


──今日は困ることばっかりだ。明日からどんな顔してリョウガに会えばいいんだろう…。


そんな事を考えていながらも疲れていたのかゆっくりと眠りに落ちていった。

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