昔語り

「実は…私ね。

もう何度も人間に殺されているの…。」


…!まさか僕が考えていた以上の答えが返ってくるとは思わなかった。


じゃあ今僕達と一緒にいるイリスは?


僕の話を先に聞いていたからか、先に答えにたどり着いたのはユキだった。


「もしかして…お姉様もお兄様と同じで転生することが出来るのですか?」


「うん。でもリョウガとは少し違うんだ。私は死んだら嫌でも自分の意思とは関係なく生まれ変わるから。龍種のイリスとしてね。」


…それでか。てことはもしかして


「…記憶も受け継がれてるのかな。」


「そうだよ。でもそこも少し違うんだ。私達、龍種は記憶を引き継ぐ時その死ぬまでに経験した感情のなんかは受け継がれるけれど薄くなってるんだ。」


「えっと?前に凄く怖い経験を引き継いだらちょっと怖い事を今は思い出せるかんじ?」


「うん、その認識で大丈夫だよ。」


…正直これであってて欲しくはなかったな。この考えでいくとイリスは一体どれだけの恐怖を感じたんだよ。


人間に殺されたときに強く、怖いと感じたのだろう。今でも震えるほどの怖さなのに、それ以上の感情。今の僕では想像もつかない。


…というかじゃあなんで僕達は大丈夫なんだ?人間を恨んでいてもおかしくないだろうに…。


「なぁイリス…。ならなんで僕達のことは信用してくれるんだ?その…怖くないのか?」


イリスは僕が質問すると顔が少し赤くなったと思ったら何故かジト目がとんできた。ユキからも呆れた目線がとんでくる。なぜだ。


「…リョウガは特別。他の人達が取らない行動ばっかりとって心配して見てたのよ。その間いつの間にかリョウガ相手に興味がでたのよ。」


「…ん?見てた?イリスと会う前の話をしてたつもりだけど?」


僕が不思議に思っているとイリスは「あっ」と口をふさいだ。


えっ、もしかして


「…イリスと会う前に誰かの視線を感じてはいたけど、あれ…もしかしてイリス?見てたの?」


そういうとイリスは開き直ったのか少し大きな声で


「うぅ~…だって私のお気に入りの場所で危ない訓練ばっかりしてるんだもん!心配でしょうがなかったんだから!私がいなきゃ危ないときもあったんだからね!」


それを聞いて僕は嬉しい気持ちもあったが余計に不思議に思ってしまった。


「…イリスってやっぱり人間好きだよね。じゃなきゃ僕のこと見ててくれないでしょ?」


「違うよ…。人間は怖い。でも私達龍種はこの世界を守る為にいるから…そこに住んでる人や魔族だって完全に嫌いにはなれない。なったことない。

…それに誰とは言わないけど私を1人の女の子として扱ってくれる人もいるしね…。」


…僕のことはさておき。

完全に嫌いになれないのは種としての特性だって言うんだな。でも守るべき対象に殺されて来たことを考えると人間を嫌うのも当たり前に思える。死んでも転生してしまうから自分の意思で死ぬことも許されないんだから。


そう思っていると少し強引にイリスから


「今日はもう終わりにしましょうか。時間も遅くなってきたし。この魔族の子供は私が預かるわ。1人でもなんとかなるから。」


そう言われ今日は解散する流れになった。


まだ聞きたいことがあるにはあったが時間も足りない。


僕は別れ際にイリスに対して何を思ったのか自分でも言うつもりのなかったことを口走っていた。


「なぁイリス。もし僕のことを信じてくれてるんならさ。僕が大人になったら一緒に……すまん忘れてくれ。」


そこでまだこの言葉を言うのは早いと思い言葉を切ってしまったが今思うとなんであんなことを言ってしまったのだろう。


──イリスにもっと人間と…僕と一緒にいて欲しいから?


そんな考えが頭をよぎったがそこで僕は考えるのをやめた。 僕の我儘でイリスも巻き込みたくないと自分に言い訳して。

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