ユキとイリス後編

「あの~イリス…?」


イリスが遠目から見ても震えてるのがわかる。本当に何にそこまでおびえてるんだ?


…?手招きしてるけどそっちに行けばいいのかな?

…ユキには少し悪いけど待ってて貰うか。


「ユキ。ちょっと待っててくれる?」


「はい…、わかりました…。」


ユキもイリスのこと見て驚いてるな…。どうしよう…これ。


「ユキ…イリスってかなり人見知りだから最初は優しく接してあげてね…。」


「はい。あの様子ですし…。」


ユキに一言、言ったあとイリスの言う通り(?)イリスのそばまで向かう。


遠目から見た通りやっぱり震えてるな…。


「どうしたの?昨日は会うって言ってたけど…大丈夫…じゃなさそうだね…。」


「…ごめん…その…怖く…なっちゃって…。」


これは駄目だな。僕と初めて会ったときよりも酷いかも知れない。…手まで震えてるし…。


「イリスちょっと手出して。」


「うっ…うん…。」


僕はイリスの手を握る。少し恥ずかしいだろうけどそれは…我慢して貰うしかないな…。


「…っ!どうして急に?…さすがに恥ずかしいんだけど…。」


…だろうな。でも。


「でもこれで取り敢えず手の震えは止まったでしょ?」


怖い感情が胸の中にあるなら別の強い感情で上書きして上げればいいと思ったんだけど成功したみたいだ。


「それに僕も妹の前で少し恥ずかしいんだからさ…。でもこれで大丈夫そうかな?」


「……うん…やってみる。」


「よし!頑張れ。」


イリスに少し笑えるだけの余裕が出たならやったかいがあったな。


イリスと手を繋いだまま二人でユキの前まで戻るとユキがニヤニヤしながらこっちを見ていた。


「こういうところを見るとリョウガの兄妹だって思うわね。」


「…僕もそう思う。」


変なところばかり似てるんだよな…。


「じゃあ改めて紹介するぞ。ユキ、彼女がこの場所で知り合った友達のイリスだ。イリス、こっちが妹のユキだ。仲良くしてあげて欲しい。」


「どうもお兄様の妹のユキです。」


「…イリスです。」


…お互いに喋るのが止まる。はたから見たら美人さん同士が見合ってる謎の光景なんだけどさ。お見合いじゃないんだから。


「お兄様?」


「どうしたの?ユキ?」


「イリスさんとお二人で喋ることって出来ますか?」


二人で…二人でかぁ。正直今のイリスと喋れるかって言われると…


「あ~それなんだけど…ちょっとな…。」


「…大丈夫だよ。リョウガ。」


意外なところから返事がくる。まさかイリスの方からOKがでるとは…。


「…本当に大丈夫か?」


「うん。…勇気貰ったしね。」


こっちを見て微笑むイリス。その顔ができるなら大丈夫かな…?


「…わかった。僕はいつも通り剣の訓練でもしてるから二人で話して見るといいよ。」


僕はイリスと繋いでいた手を離しその手で剣を握るその場を離れる。…見える距離にはいるけどね。


二人の声が少し聞こえるけど二人を信じて、一旦考えを戦闘の方に切り替える。仲良くしてくれると嬉しいと思いながら。


そこから一時間か二時間した頃だろうか。訓練を終え、一旦二人の元に戻った時きっと一番驚いたのは僕だろう…。まぁ僕しかいないけれどさ。


二人とも何を話してるのかはわからなかったけど明らかに最初の雰囲気とはかけはなれており楽しい雰囲気に包まれてるんだもの。


目を疑ったよね。イリスにいたっては僕と話してるときより楽しそうにしてないか?…心配して損したかも。


「…二人とも楽しそうだな。」


「「わっ!」」


同時に驚くじゃん。僕に気がつかないくらい盛り上がってたの?


イリスがまず僕に話しかけてくる。


「あっ!リョウガ。お疲れ様。」


「あぁお疲れ様…。心配いらなかったみたいだね。」


「そうなの!ユキと話があってね。つい話し込んじゃった。」


「へぇー!何の話してたの?」


「えっと…それはね…」


えっなんで目をそらすのさ。話しにくいこと?


イリスと話しているとユキも加わってくる。


「お兄様!それは女の子同士の秘密ですわ!」


…というか明らかに何か隠そうとしてるな…まぁいいけどさ。


「わかった!わかったから二人とも落ち着いてくれ!」


僕からしたら仲良くなって欲しいってことは叶ってるしな。それならそれで問題ない。


「それよりもイリス。良かったな。」


「うん!…ありがとね…リョウガ。///」


「これからも仲良くしてやってくれ。ユキも僕と一緒で友達少ないからさ。」


「お兄様!何を言ってるんですの!」


こうしてイリスとユキは仲良くなった。なんであんなに話が合うのかは未だにわからないけれど…。


このときからユキもこの場所にたまに来てはイリスと仲良くしてる。ユキがくる時は訓練は前みたいに一人でするようになった。


イリスは申し訳なさそうにしてたけど妹と仲良くしてくれてるんだしこっちもありがたい。


僕はこんな毎日が続いてくれれば嬉しいしね。



───僕の願いとは裏腹に僕の日常は少しずつ変化していく。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(作)やっと次の章に入れる…。でも次は閑話イリスとユキの会話でっす。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る