友達

…う~ん?なんかぼうっとする。


…?なんでイリスの顔を下から覗いてるんだ僕…?


「ってこれは…?」


膝枕されてるのか………って!速く起きないと…


立ち上がろうとするとふらついてしまい尻餅をついてしまう。


「まだ…体調完全じゃない。…もう少しここで寝ててもいいよ…?

……毎日こうすれば私にとっても役得なのでは?

でも訓練に支障が…。」


最後の方はぼそぼそ言ってて、聞こえなかったけどイリス優しいな…。


でも…くっそ…!イリスの方はまだ元気そうなのに僕といったら…


「イリス…ごめんね。」


「…ん?どうして?。」


「僕がまだ弱いから…手加減してくれたでしょ?

それなのに…僕は倒れちゃって…。」


さっきの模擬戦うっすらとだけど、どうやって負けたか覚えてる。イリスから油断が消えたと思ったら一撃で吹っ飛ばされた。


これが実戦だったとしたら…考えるだけで恐ろしいな…。新鮮な体験が出来たのは喜ばしいが。


「違うよ!謝るとしたら私。リョウガが想像よりも強かったから向きになっちゃって…こっちこそごめんね…。」


僕の方は全く怒ってないんだけどな…?でも本当に悪そうにしてるしどうするかな…?


そうだ…いいこと思いついた。


「本当に悪いと思ってるのかな~痛かったな~。」


ぶっちゃけどれだけ痛かったとかは覚えていない。


「うっ…どうすれば信じてくれる? 何でもするよ…?」


ほほう、何でもとな。あからさまにニヤニヤして見せる。


「そうだな~どんなことして貰おうかな~」


イリスってなんか僕に遠慮がちだし少しでも楽にして欲しいんだけどな。本当は。


良い感じにイリスは勘違いしてくれたみたいで──


「えっ…エッチなのは駄目なんだからね!」


案の定僕が変なこと考えてると思ったみたいだな。

まぁ考えなかった訳ではないけど…男のさがだね。


「ぷっ!あっはははは!しないよ!イリスがどんなこと考えたかは知らないけどね?」


「もう!からかったの!」


怒ってるけどそこまで怖くないな。どっちかっていうといじけてるのも可愛く感じる。


「いや~ごめんね?イリスが本当に悲しそうにしてたからさ。別にイリスが謝ることじゃないのに。

出来ればこれからも同じように相手して欲しいしね。」


「えっ本当にいいの?」


「まあでも出来れば最初はもう少し手加減してた」貰えると嬉しいけどね。あと突然じゃなくて事前に言ってから模擬戦始めようね?」


これも本心だ。自分より強い人と戦えるのは貴重だし、イリスぐらい強かったら教えるのも上手そうだしね。

……実は僕がまだ弱すぎるのかも知れんけど。


それに僕がどれだけ弱いのかわかった。イリスが強いって言っても女の子…それも同い年っぽい子に負けるのはちょっとショックだったし…。


「リョウガって実は…M?」


「急になんてことを言うんだ。おい。」


変な誤解まで生むつもりはないぞ!


「あんなにふっ飛ばされたのにまたやってって言うもんだから…。」


「そんな悲しい人を見る目で言わないで!それに…どうして人の顔を見て笑うのかな?」


それも楽しそうに…。


「お返しにからかい返しただけだもん。」


からかっただけかよ。まだ笑ってるし…でもなんか今のイリス──


「やっぱりこっちの方がいいね。」


「…?何が?」


「気づいてる?今凄く自然に笑ってたよ。それに喋り方も取り繕ったみたいなのから変わってるし。

それが素なんだね。」


「っっ!本当?嫌だった?」


「嫌なわけない。今の方が可愛いな。」


「なっ!」


あっ赤くなった。


今が一番良い笑顔してたしね。

作戦大成功。いえ~い


「僕ももう、遠慮しないで喋るつもりだけど嫌じゃない?」


「うっ…うん!」


「じゃあ今日から友達としてよろしくね。」


「こっちこそ!」


喜んでくれてる見たいだし何よりだね。昨日のより今日の方が断然いいな。



あのあと僕達はたわいもない話をしながらお互い笑ってたら訓練をする時間はあっという間に過ぎた。


本当はもう一戦ぐらいしたかったがこれはイリスから「今日はもう体を休めないと駄目!」と注意された為やめた。


順調に遠慮がなくなってるようでよいよい。


僕も正直テンションが上がってたんだと思う。この世界で初めての友達だし。


また明日も会う約束をして城に戻るとユキがいつもより帰りの遅い僕を心配してたみたいで入り口近くで待ってくれていた。


「お帰りなさい。お兄…様?」


「んっ?どうしたの?」


なんかいつもと反応が違うけど?


「いえ…こんなに楽しそうなお兄様、久しぶりに見ましたので…」


「そうか?いやそうだろなぁ。」


遠慮なく話せる人って僕にとって貴重だしな。


「何か良いことがあったのですか?」


「あぁまぁ友達が出来てな。」


妹にこんなこと話すのは少し恥ずかしいな。


というか妹よ。何故そんなに戦慄した表情をしてるんだ。


「お兄様にお友達が!」


「そこまで驚く…?」


ちょっとショックなんだが?


「当たり前です!私が知る限り初めてですよね!」


いや確かにあんまり人と話すことをしてなかっただけで別にコミュ障とかじゃないからね。

前世は結構友達いたし…。


「それで男の子ですか!女の子ですか!ご年齢は!」


「ちょっと待て!取り敢えずあとはまた僕の部屋で話すから。声おさえて!」


まだ入り口だから!使用人達に凄い見られてるから!。


「絶対ですよ!後で教えてくださいね!」


あんなにはしゃいでるユキ久しぶりに見たな…。


ちなみに後で僕の部屋でイリスのことを話したところ、「私のお姉様になる人ならお話してみたいですわね」とか言っていた。

何故イリスがお姉様なんだ?


結局この2日間のことを夜遅くまで根掘り葉掘りきかれた。…なんだか訓練の時よりも疲れたぞ…。


いつかユキのこともイリスに教えてあげないとな。

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