お母様(昼①)

ユキにお礼を言った後、バッカスに邪魔されないために見つけた訓練場所に行く前に僕はユキ以外に、もう1人僕のことを認めてくれている人に会いにいった。


その人は体が悪くあまり外を出歩けないためこちらから会いに行くしかないのだ。


──コンコン「お母様入ってもいいですか?」


「大丈夫よ~こっちにおいで~♪」


「失礼します。」


扉を開けると豪華なベッドに座り込んでいるお母様─アリシア・アクアス─が手招きしているのが見える。


「今日はどうしたの~?」


「お母様の体調がだいじょ──「そのまえに!」…はい?」


「その他人行儀な喋り方はしなくていいのよ~もっと普通に喋って欲しいわ♪」


「…わかったよ。母さん。」


「どうして照れてるのかな~」


…この人は息子のこういう姿を見て楽しむところがあるよな。ユキのちょっと強引な所や見た目なんかは絶対に母さん似だな。いまだになんでお父様と結婚したのかわからん。


「それはいいじゃないですか。別に照れてませんし…。というよりもまたユキのことわざと見逃しましたね?」


「ナンノコトカシラ~」


「もう隠す気もないのか…。」


そうなのだ。ユキが僕の部屋にくるときは王宮の誰かの部屋を通るしかない。


「ユキとお母様が仲がいいのは知ってますけど僕の部屋に1人で来るのは危ないんですから止めて下さいよ…。」


「いいのよ~ユキには貴方と一緒にいて勉強して貰いたいのだから。それにユキは貴方をとても気に入ってるみたいですしね~♪」


「そうは言ってもですね…母さんが教えてくれたんじゃなかったっけ?僕が15歳の成人の後ここから追い出されるって…その後はユキここに残るのだからバッカスと仲良くして貰いたいんだけどな…」


そう僕がまだ今よりも小さい頃に普段から笑顔をやさないお母様が泣きながら教えてくれたことで僕はそれを知った。今でもあの悲しい顔を鮮明に思いだせる。


「あの子は少し性格がね…あの人…お父さんに似てちょっと自分勝手に育っちゃったからね…。強いスキルを持って生まれるのは凄いことなのだけどそれで傲慢になったら意味がないの。王族なら特にね…」


母さんの言い分もわかる民を導く立場がになるべきな人が自分勝手だとついて来る人もいなくなるだろう。


「その点貴方はあの子よりも凄いとおもうけど?」


ニヤニヤしながらからかってくる…。母さんは僕の言うことを信じてくれて実際にスキルを試すことにも付き合ってくれたので僕がスキルが無いわけではないことを知っている。


「僕は母さんやユキにしか信じられて無いからね。だから性格も大人しくなっちゃったんだと思うよ?」


「そんなことないとおもうけど?それに毎日お見舞いに来てくれるしね~。」


変に誉められるとやっぱり照れるな。


「それに…」


「それに?」


「いや…なんでもないわ~」


言って貰わないときになるんだけどな…


「貴方は自分で信じた道を生きなさいね!出来ればユキと一緒に!」


「だからそれは…まぁ考えてはおきますが…」


「ならいいわ。今日もまたで特訓をするの?」


「えぇはい。強くなって損は無いですからね」


特にこの世界では。


「頑張ってね。将来の夢は冒険者だったよね?」


「そうですよ。だからもっと強くなって知識もつけないと!」


「ふふ!やっぱり冒険者の話になると元気になるわね。じゃあ気をつけて行ってらっしゃいね~」


「はいお母さんがびっくりするような冒険者になるので待っていてくださいね!」


そう言って僕は部屋を出る。


───────────────────────


「行ってきます。」


そう呟いて僕は王宮から出た。誰からも返事は帰って来ないが変に習慣付いてしまったことだ。日本でもしてたからだろうか?


「じゃあ行こうかね。」


そう言って僕は町を歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る