朝の訓練バッカス相手の茶番劇(朝③)
よしっ、少し本気でいくか!
と気合いを入れたのはいいけどバッカスがどんなことをしてくるか思い出せないことだし、どう動こうかな?
…妙にバッカスも動こうとしないな。ならこっちから突っ込んでみるか──────────────
…?どうしてこんなにも懐に入られているのに動こうとしない?舐められているのか?避けないともうあたるが──あっ
「ぶべぇぇうえっへぇぇぇぇ!?」
やべっやっちまった。確かに速度重視で剣を振るうようにしてみたがここまで反応できないのかよ…。
鍛練をさぼってるってのは本当らしいな…。
ここで勝っちゃうと後が面倒なんだけど大丈夫か?
「くそがぁぁ!お前ぇなんかずるしやがったなぁ!じゃなきゃ俺が落ちこぼれの攻撃なんか当たるわけねぇもんな!?」
…元気っぽいな。話の内容は聞いてて大分悲しくなるけど。
「はは!お前には使えない技でお返ししてやるぜ!食らいやがれスキル──」
っなんだまた頭が痛くなってきた!?
「メルトスラッシュ!」
っっ!…………なるほどな…。
「てめぇ避けてんじゃねぇよ!」
避けるだろそりゃ…下手したら普通に死んじゃうじゃねぇかよ。
それよりも…大事なことが今わかった。今のスキルは俺のスキルだ。なんでそう思ったのかはまだわからないけど直感的に俺のスキルだと理解できた。
また少し軽い頭痛がしたがそのおかげ(?)か頭の中にあったもやが晴れていく感じと同時にバッカスとのことを完全に思い出した。
どうやって毎回負けているのかもだ。
「今度は避けられないように念入りに止めさしてやるよ。」
ひどく楽しそうに顔を歪めて笑っているバッカス。嫌いとはいえよく家族にそんな顔ができるよな。
「スキル威力拡散!からのメルトスラーッシュ!」
「ぐっ、うわぁぁぁぁぁ!」
そう言って僕は後ろに飛ぶ。
訓練場の壁に激突して止まり僕はあえて動かないようにする。
「はっははははは!こんなもんかよ!やっぱり落ちこぼれは落ちこぼれだな!早くここから出ていけよ。今からここは俺が使うんだからな!」
また後でくるまでに出ていっとけよ、と台詞を残して訓練場から出ていくバッカス。
そうだった…こうやっていつもわざと負けてるんだった。
負け惜しみに聞こえるかもしれないが最後に食らったスキルの複合技は実は元の技よりもかなり威力が下がっている。
スキルの内容は持っている本人にも実はどんなスキルなのかはわからない。どれだけ凄いスキルなのかは自分のステータスを見ればレアリティを見ればわかるのだが、効果自体は実際に使ってみて発動してどんなものかわかる。
今僕が持ってるスキルはどちらのスキルも常時発動方で傍目から見ていると何も起きてないため本当のことを伝えても嘘つき扱いされてしまい職業もスキルもない落ちこぼれ、王族の恥扱いをされてしまった。
僕は女神様にスキルの内容を詳しく教えて貰ってからここに来てるから他の人よりもよりわかる。
本当に詳しく知りたい場合は職業・鑑定士の人から鑑定のスキルを使って詳しく聞くしかない。鑑定士は希少でこの国には1人もいない。
バッカスはそのスキルの内容を勘違いして使っているけどまだそれに気づいていない。
最後に使ったスキル威力拡散は確かに広範囲に自分の意思で使った技の範囲を決定出来るが範囲を拡大すれば拡大するだけ威力が範囲と共に分散していく。
そのおかげで僕は実際には岩を溶かすほどの斬撃をただの熱風が強めに当たっただけのダメージしか受けていない。
むしろ風が当たると同時に後ろに飛び壁に背中当たったときの方がよっぽど痛かった。
今回いつもと少し違ったのはバッカスのスキルを思い出せなかったことだが、それも頭痛と同時に思い出せた。仮説だが思い出せない時は僕自身のステータスのおかしなところが関係しているんだと思う。
色々考え事をしているとバッカスが出ていくのと入れ違いで訓練場に入ってくる人影があった。そいつはバッカスから
「よぉ!見てたのか!俺の戦い格好よかっ─」
「確かに凄かったですね。それでは。」
…話しかけられていたがくいぎみに話を終わらせこっちに近づいてくる。
バッカスが完全にいなくなるとぼぼ同時に
「お兄様!大丈夫ですか!?」
駆けよってくるのはユキだった。
「いつものことだから大丈夫だってわかってるだろゆき?」
「あの戦いで何が起きてるのかは教えて貰いましたがそれでも見てると心配なんです!」
そう言ってユキは僕に両手を向けるように構えをとる。
「スキル
ユキのスキルは回復系のスキルなので今回の訓練でついた僕の傷やアザが引いていく。それにしても…
「確かそのスキル、日に一度しか使えないんじゃなかったっけ?しかも僕はなかった1人の為に広範囲回復を… 」
「いいんですお兄様の他に使ってあげたい人もいませんし使わないのも宝の持ち腐れですから♪」
「バッカスも怪我してたと思う─「お兄様に酷い扱いをしている人に使うつもりはありません」─けど…」
あぁそうですか…。
「まぁありがとうね。いつも助かってるよ。今からまだ体動かすつもりだしね。」
「それもわかっています。それでは…はいっ!お兄様!」
そう言って僕にバスケットを手渡してくれる。ずっしりとした重みがあっていい匂いがしてくる。
「今日も弁当作ってくれてたのか。ありがと、お昼になったら食べるよ。」
ユキの頭を撫で僕もその場から立ち上がる。
「私はお兄様のことを応援していますからね。頑張って下さいね!」
「あぁ」
本当にユキには支えられてばっかりで申し訳ないな。ユキだけはしっかり守ってやらなくちゃ。
僕はユキにお礼をいい、いつも昼から訓練している場所に行く前に、もう1人の信頼できる人のところ行くことにした。
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今回新登場スキル
〈
・広範囲に効果がある回復スキル
〈鑑定〉
・相手のステータスの詳しい内容がわかる
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