末っ子の妹(ユキ視点) 前半

私には夢があります。


それは今、私の目の前で困っている兄…リョウガお兄様とずっと一緒にいることです。


何故私が一緒にいたいのか?


それは私がリョウガお兄様の生き方に尊敬しているからです。王家の家の人達は一部を除いてお兄様を嫌っています。


でもそんな人達に限ってちゃんとお兄様を見て、どれだけの多くの努力をしているか知らない人達ばかりです。お父様もその内の1人でした。


初めて見たリョウガお兄様はただ一心不乱に剣の稽古をしていました。様子が気になって見ていると私に微笑んでくれて何故かとても恥ずかしくなったのを覚えています。


次に姿を見たのは訓練場ではなく図書室でした。どうやら勉強をしているようで、そのときの私は五歳なこともありお兄様がどんな勉強をしているのかわかりませんでした。ですが明らかに7歳のお兄様には難しそうな図が書かれていました。


また次に会ったときは私がもう1人のお兄さんバッカス兄さんに訓練場で虐められていたときでした。


お父様達がリョウガお兄さんよりバッカスお兄さんの方が強く賢いと教えられていたし私とあまり話したこともないのにどうしてリョウガお兄様が助けに来てくれたのかわかりませんでした。


「バッカス今すぐユキを離すんだ。」


「お前には関係ないないだろうがよリョウガァ!」


私にはバッカス兄さんが殴る矛先をリョウガ兄さんに変え殴りつけように見えたのだけど倒れていたのはバッカス兄さんのほうだった。


「ふぅ…一回で成功してよかったな…。」


リョウガお兄さん何も無かったかのように訓練場を出ようとしていたが…


「まって!」


気がつくと私が呼び止めてしまっていた。どんなことを話せばいいかわからなかったが…


「どうして私を助けてくれたの?」


最初から考えていたこの質問だけ聞くことができた。するとお兄様は


「ユキが僕のことをどう思っているかわからないけど僕にとっては大切な兄妹だからね。…バッカスにも本当はこんなことしたくはないけど止めないとユキが殴られてたろうしな…。」


そう言ってリョウガお兄さんは今度こそ訓練場を出ていった。


そんなことがあってリョウガお兄さんの事が気になるようになり普段はどんなことをしているのかよくお兄さんを見るようになった。


リョウガお兄様とは食事も別で普段は会うこともないのですが必ず毎日、朝には誰もいない時間から訓練場で剣の訓練を、昼間は城の外に出てどこで何をしているかわからなかったが、夜には遅くまで図書館で勉強をしていました。


何がそこまでお兄様をそうさせるのか知りたくて私は一度だけお兄様が朝訓練をしている時に話を聞いてみました。するとお兄様は、


「僕はそのうち王家からいなくなるだろうからね。多分成人したらだろうから15歳の頃かな?」


どうしてお兄さんはいなくなっちゃうのですか?


「僕はこの家にいたらこの家の恥らしいからね。どう追いやられるかは僕にはまだわからないけどね。」


なんであんなに頑張ってるお兄さんが恥なのですか?


「あっやっぱり見てたの?頑張ってる頑張ってないとかじゃないんだって。生まれ持った才能が僕にはないんだってさ。」


どうして?私にはわかりません。もう1人の兄さんよりも私はリョウガ兄さんの方が凄いと思います。


「…!ありがとうね。でもお父様も弟のバッカスもスキルしか見ない奴だからな。あっいま言ったの内緒ね。じゃあまたね。」


そう言ってまた訓練に戻って行くお兄さん。私は…私だけは知っている。お兄さん…いいえお兄様がこの家で一番努力して自分の力で生きていこうとしていることを。お兄様の心の強さを。


私がもしお兄様の立場だったならすぐ心が折れていたと思う。それだけの状況なのに自分を高めているお兄様を見ているうちに私の中でお兄様の存在が誰よりも大きくなっていった。


それにもし私がお兄様にしてあげることがあるなら力になってあげたいと思うようになった。


…だからお兄様。


「どうしてお前が俺の布団の中にいるんだよ…。ユキ…」


「えへへっ…ばれてしまいましたか。」


お兄様がどこかに行ってしまうと言うならせめて少しだけでも側にいさせてください。


「ここには用事もなくきちゃダメだとお父様から言ってあるだろう。」


怒られてもいいです。今だけしかこんなこともできないんだから。


「当たり前だ。少し厳しくしないとまたお前はここにくるだろう?」


もっと私にお兄様のことを教えてください。私に側でお兄様を支えさせてください。


「いや少し昔の嫌になるような夢を見たんだよ。」


怖い夢を見たのはお兄様の立場がお父様やもう1人のお兄さん、バッカスのせいで悪くなっているからだろう。


安心してください…お兄様がこれからもし本当にいなくなって1人でも生きていこうとしてるなら私は陰ながらお兄様のサポートをしていこうと思います。


私が眠るときでも一緒にいれば誰もお兄様には手出し出来ないでしょうからね。


だからお兄様…安心して眠って下さいね。


「おやすみなさい…お兄様…」


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