ポトリ・9

おばあちゃんが涙を拭いながら


庭の方を2人がそこに居るかの様に見つめた。




その姿をオレは見つめながら、肩を震わせ泣いている。


自分の事の様に、苦しくて、悲しくて


___涙が止まらない。




歯を食いしばって泣いているオレに


涙ぐんでいる母さんが驚いて声を掛ける。


「ちょっ__龍一、どうしたの?!

 そんなに泣いて___。」



「わ、、わっかない。分からないんだけど

 涙が止まんなくて、苦しいんだ。

 何でだか、涙と気持ちのコントロールが

 出来なくって。」




オレの横に座っていた慶さんも


静かに泣いていた。


慶さんは、溢れ出す涙を手で拭いながら


ゆっくりと立ち上がり言った。


「龍一くん__ちょっと、いい?」


腕を掴まれて、クンっと引かれた。


「あ。。はい__。」



しくしくと泣く慶さんに手を引かれ


涙を拭いながら付いて行った_____。





_____________


コタツの部屋を出て


涙が止まらない慶さんの気持ちを


落ち着ける為、静かな納戸に行った。




肩を揺らして、しゃくり上げる慶さんに


オレはそっと近付き、優しく後ろから


抱き締め語りかけた。


「慶さん、オレ__オレ、思うんだ。

 もしかしたら、幸一お祖父さんの気持ちが

 オレの中に生きているかもしれないんだ。」



慶さんをギュッと強く抱き締める。



「オレ、夢で見るんだよ。

 椿の木の下に居る慶さんにソックリな

 白い着物を着た人を。だからオレ、慶さんに

 初めて逢った気がしなくて・・。

 あとはね、こうして触れられる事が

 信じられないって思ってるんだ___。」



もう一度ギュッと腕に力を込めた。



「俺・・慶さんに

 触れたくて、抱き締めたくて

 仕方ないんだ____。」




慶さんは、そっとこちらを向いて


溢れ出す涙をオレの頬に落としながら


小さい、消え入りそうな声で


「兄さん_____。」と言った。



____兄さん______

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