ポトリ・6

_______________


_______



ガバッと、オレは布団から起き上がる___。




胸が痛くて、苦しくて__張り裂けそうだ。


何故だか、悲しくて悲しくて


オレは、涙を零し、泣いている・・。



君を想って、泣いている。



君は誰__?



この気持ちは?__誰の気持ち?


この想いは?__誰の想い?



あの大きな椿の下に居る


白い着物を着た人を想っている気持ち____。




涙が止まらない。


逢いたい、逢いたい、逢いたい。


君に逢いたい。


気持ちが、想いが溢れて止まらないんだ____。




身体が勝手に動き出す。


行かなくては、早く行かなくては・・


椿の木の下に、早く________。




朝早いキーンと張り詰めた空気の中を


オレは寝巻のまま、外へ飛び出した。


急いで、庭の、あの夢で見た椿の木の下へ


急いで____広い庭に走って行く。




_____夜中に雪が降って庭は、一面真っ白だった______




急に、ピタッと立ち止まり


オレは立ちすくんだ_______。




大きな椿の木が見えた。


そこだけ紅い花を付け、鮮やかだった。



ゆっくりと、ゆっくり一歩一歩近付いて行く・・。



その度に、胸が締め付けられ


たくさんの想いが溢れ出す_________。



そう・だ・・。そう。


この木・・この椿の木が・・・。




____________っっ。




大きな椿の木の下に・・


細い人影を見て・・ドキリとした___。




「慶之介________。」



自分の口から零れ落ちた名前____。


自分でも驚いた。


知らない名前を言ったはずなのに


言い慣れた言い方だった・・。



___誰の名前・・?_____




オレが言ったんじゃない気がした。



オレが?オレの心の中がザワザワしている。


そんな訳ない。居る訳ないって。


君は。君は誰なんだ____?





「あ。。

 おはようございます。」



椿の木の下から、ハッキリと


仕草は控えめだったのに


ハッキリと聞こえた。




特徴的な小鳥の様な声。


初めて聞いたはずなのに


何故だか、胸が締め付けられて。





オレは、椿の木の下に走り寄り


控えめに立ち、こちらを見て居たその人を


強く強く、抱き締めた______。





「慶之介______っっ。」




オレの口からまた零れ落ちた名前。


オレの体が勝手に動き、その人を


もっと、もっと強く抱き締めた、離さないという様に。



__その人は、驚いたと思う。


でも、オレの耳の傍で


その人は、ポツリと何か言った____。

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