第84回「捨てる/棄てる」 五人囃子の乱心
五人囃子の様子がおかしい。
気づいたときには遅かった。笛に太鼓に仕込まれた暗器、瞳に宿る禍々しい光。楽師たちの突然の凶行に、三人官女は逃げ惑い、お雛様は腰を抜かして震えるばかり。
「気でも狂うたか!」
お内裏様の喝が轟いた。立ち上がりざま折り取った橘の枝は、見る間に鏡の刀身へと姿を変える。これこそは破魔の刀、人を殺めず、ただ邪心のみを斬り捨てる。一閃、また一閃。やがて憑き物が落ち倒れ伏した五人の頬へ、静かに桃の花が降る。
* * *
「悪いものにつけこまれた心の甘さを恥じた五人囃子は、位も約束された正体も捨てて、長い長い修行の旅に出ました。だからうちのおひなさまは五人飾りなのです」
「もー、うそばっかり!」
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