第77回「答える」・冥土の土産

「お兄ちゃんならもう帰ってくるよ」

「や、やっぱりいい」

 人ならざる姿を縮めるように立つかれは、いつも旬の野菜を抱えてやってくる。逃げ腰の腕を私はしっかとつかまえた。

「ただいまー」

「ほら、今日こそ言うんでしょ!」

 この街の土も遠からず封じられてしまう。同時にかれの寿命も尽きるだろう。ならば後悔のないように。

 ドスドス現れた兄と、かれはようやく向き合った。

「と、友達になってほしい」

「ん? いいけど」

 それを聞いたかれの嬉しそうなことといったら!

 今日の土産はとうもろこし。薄絹の如き皮をはいで顕れる真珠の粒。ほんのり染まった形の良い耳と、遠慮なくかぶりつく兄。なんとなく見ていられなくて、私はそっと目をそらした。

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