急転する事態

 今朝は雨だった。散々降っておきながらまだ降るのかと悪態を吐いてみる。小雨なのはせめてもの救いか。


 俺は一人で登校の路を進んでいる。殊勝にも毎朝のように迎えに来る玲於奈が今日に限って姿を現さなかったのは妙だ。別にあいつと登校することを楽しみにしているわけではないが、兆しもなく日常と違うことが起きたりするとどうにも調子が狂う。ここで言う兆しというのは玲於奈からの連絡なのだが、あいつが何の連絡もよこさずに学校を休むなんてことは今までになかった事態だ。最近は色々なことが起こるもんだな。


 とはいえ、この時の俺は特に玲於奈の不在を気に留めていなかった。人それぞれ事情ってのはあるもんだし、いちいち詮索するのもプライバシーの侵害になりかねない。


 俺の頭の中には世界がどうたらの情報が巡っており玲於奈を気にかけている余裕がなかったとも言える。玲於奈の休みと世界の危機を切り離して考えていたのだ。

 そりゃそうだろ。幼馴染みが休んだくらいで世界の存続に関わると思う奴がどこにいる?


 だが、築山唱子はそうは思わなかったらしい。

 どうやら、俺は未だに常識の枠に囚われていたようだ。

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