廃病院

 一瞬ひやりとしたのは宙高くに浮いていたからだ。


 古ぼけた白い建物を見下ろすようにして視界が広がっている。落ちるかと思ったがそんなことはなく、視界が固定されたまま動くことさえできなかった。

 目の前の光景は確かに見えている。しかし、そこにあるべき存在感を感じない。まるでテレビを見ているような気分だった。


 一体何が起こったんだと思う暇もなく、画面はゆっくりと降下を開始して廃病院の屋上から建物の中へと入った。真っ暗だが見えるという不可思議な視界に引っ張られるまま階段を下り廊下を進み、とある病室へとたどり着く。


 四〇四号室。

 扉をすり抜けて室内に入り、そこにいた人物を見て俺は仰天した。

 黒いマントと大きなコーンハット。例の魔女っ娘の後ろ姿があったことにも驚いた。


 だが、本命は《俺》だった。

 男の《俺》が、眩い光に包まれて浮遊していた。

 視界は進んでいく。俺に向かっているようだった。魔女っ娘が振り返って驚いたような反応を見せ、振り向いて杖を振りかざしたところで、

 画面にノイズが混じり、目の前は真っ黒になった。

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