気絶

 どうやらリビングで気を失っていたらしい。


 俺ははだけたバスタオルの上に全裸で倒れていた。冬だったら確実に風邪をひいているところだ。

 それでも湯冷めしそうだったので急いでスウェットを着込み髪にドライヤーを当てる。櫛で丁寧に髪をといてから居間のテーブルに座った。さて。


 夢。なわけないよな。


 転がっていた携帯電話を拾い、唱子の番号を知らないことを思い出してこめかみを押さえる。こういう時こそあいつの力を借りたいというのに、今日のことといいつくづくタイミングが悪い。

 さっきのあれが何なのか確かめる術が有るか無いかと問われるとはっきり無いと答えられるのだが、よく考えると無いこともないような気がしないでもない。

 あの映像がリアルタイムならば廃病院に直行してあの病室に飛び込めばいいわけだ。


 階段を駆け上がり自室のクローゼットを開く。動きやすい服装がいい。カットソーとショートパンツにした。戸締りを確認すると、休日専用の自転車に跨って目的地を目指した。

 この労力が無駄にならなけりゃいいけど。

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