御厨暮太の病状 2

「ありがと」


「え?」


「こんな話、聞いてくれて」


 何言ってんだ。水臭い。


「元気、出せよな」


 今の俺に言えるのはこれくらいだ。正直、俺にとって御厨は幼馴染みの友人というだけの存在だ。だから、気の毒だとは思っても玲於奈のように親身になって考えてあげることはできない。

 でも、玲於奈がどれだけ御厨のことを心配しているか。心配しても、自分には何もしてやれないというやるせなさ。それは十分伝わった。


「きっと、大丈夫だ。うん」


 気休めかもしれない。それでもいい。今ここで俺がやるべきなのは、気休めを言うこと。少しでもこいつの気を楽にしてやることが、幼馴染としての務めだ。


「何だかんだ言って、今まで無事に生きてこられたんだろ。だから大丈夫」


「……そうよね」


 玲於奈は儚げな笑みだけを見せて、


「みぃやがそう言うなら、そうかも」


 そうだよ。悄然とする玲於奈などらしくない。こいつはいつも快活で明るいだけが取り柄なんだ。

 楽観的に、とは言わないが、あまり物事を後ろ向きに考えるのはだめだ。自分の力ではどうにもならないこともある。だったら、ちょっとでもポジティブな考え方をした方が良いに決まっている。果報は寝て待てって言うだろ?


「みぃや」


「ん?」


「なんか奢らせて。今日付き合ってくれたお礼に」


 おや珍しい。こいつにしては殊勝な心がけだ。じゃあ遠慮なく甘いものを頼ませていただくか。


「すいません! デラックスジャンボパフェデラックス一つ!」


 玲於奈はぎょっとしてから、諦めたように大きな溜息を吐いた。

 この店の名物でもあるデラックスが二つもついた特大パフェは、樋口一葉さんが一人去ってしまうほどの高コストだった。

 男の頃は何となく敬遠していたパフェも、女の今なら遠慮なく食べることができそうだった。

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