試験結果 2
なるほどな。あの魔女っ娘が心配ないといった意味が理解できた。昨日の今日でいきなり俺だけの性別が変化していたら、色々な問題が生じることだろう。しかし、世界中の性別が逆転していればその限りではない。
名前の変わり具合にも関心が生まれた。人によってまったく違う名前に変わっていたり、あるいは少変していたり。俺や玲於奈のように変化さえない人間もいた。名字に関しては誰も何の変化も無かったのはなぜだろうか。
よくよく考えてみると、この世界がいかにうまく作られているか実感する。男女が入れ替わっていても社会の働きに何ら影響がない。
当然疑問も浮上する。あの魔女っ娘は一体何者なのだろう。いま最も気になるのがそれだ。
本当に魔女だったのだろうか。だとしたら俺は人生観を変える必要がある。非科学的な現象はありえないという既成概念に囚われていては駄目だということらしい。彼女にはまた会えた時のために謝罪と感謝の言葉を用意しておこう。
「あ、そうそう」
昨日と同じ帰宅への道で、玲於奈が何かを思い出した。
今日も雨は降っている。決して強くはないが傘を差していなければ風邪をひくだろう。今朝は降っていなかったのに、雨ってのは厄介なものだ。梅雨の季節に折りたたみ傘は必需品だ。
「明日さ、暮太の見舞いに行こうと思ってるんだけど。ついてきてくれない?」
「暮太……」
ああ、御厨のことか。
「別にかまわないけど、あたし、そんなに仲良くないわよ」
「仲悪いってわけでもなし。病室の前までついてきてくれるだけでもいいからさ。病院に一人で行くのってなーんかやだし」
女の姿で出かけてみたいと思っていたし、ちょうどいい。ご一緒させていただくか。
御厨暮太(こいつも名前が変わっている)というのはクラスメートの一人であり、玲於奈の幼馴染である。玲於奈の幼馴染であって俺の幼馴染ではない。小さい頃から体が弱く、高校二年になった今でも入院することがしばしばある。今までは玲於奈と共に見舞いに行くことはなかったが。いつも一緒に行く友人の都合が合わなかったとか、そんなとこだろう。
「新病院の方だよな。行くのは初めてだ」
「新しい病棟が建てられてからそこそこ経ってるけど?」
「元来健康だからな」
明日の放課後に病院に直行するという計画を立てた後、俺と玲於奈はいつもの岐路で別れた。
雨の中、自宅を目指して歩く。
住宅街の真ん中。あの魔女っ娘が現れたのはこの辺だったか。昨日は空間の亀裂とやらが発生してよく解らないことになったが……さすがに今日は出てこない。
まさか本当に女になるとは俺も思っていなかったから、大人気ない行動を取ってしまったが。
まあ、あの出来事は無かったことになっているようなので、今となってはどうでもいい。
魔女っ娘の姿を思い返しながら、自宅へと歩を進めた。
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