TSしました 4

 とにかく答えを聞きたいんだよ俺は。

 スカートのポケットに入れた携帯電話を取り出し、時刻を確認。うむ、これなら歩いてもギリギリ間に合うだろう。

 乱れた制服を直しながら、俺は歩き出した。あわてて玲於奈もついてくる。


「ねぇ」


 隣から話しかけてくる見慣れない玲於奈を見る。


「どうしたの、変なことばかり訊いてきて。みぃや、なんか変だよ? 言葉遣いもおかしいし。男みたいな話し方してさ」


 そりゃそうだ。いきなり女になっているのでその通りだよ。むしろ変の極みだ。変態だ。

 けどな、俺からすればお前の方がよっぽどおかしい。


「そりゃこっちの台詞だ」


 俺は玲於奈に言う。


「いきなり女になって、何も感じないのかよ?」


 少し尖った声になってしまったかもしれない。玲於奈は僅かながら困惑しているようだ。


「えっと……私、みぃやが何を言っているのかさっぱり理解できないんだけど」


 理解しろよ。もしかして俺の言葉足らずだったか?


「だから。昨日まで男だったのに、今日いきなり女になってて何とも思わないのか?」


 ますます困惑する玲於奈。頭上にハテナが回っている。


「それ、私の事を言ってる?」


「他に誰がいるんだ」


 玲於奈はショートヘアの髪をガシガシと頭を掻き、深い溜息を吐いた。


「何を言い出すかと思えば……」


 呆れた様に玲於奈は言った。


「私は元々女。元来淑女だってーの」


 俺の足が止まった。


「……なんだって?」


 どういう事だ。玲於奈が、元々女? そんな馬鹿な。

 良くない予感が頭に浮かぶ。


「もういいでしょ。止まってると遅刻」


 先へと歩を進めていく玲於奈を眺めながら、俺は立ち尽くした。

 感じた予感を反芻させ、焦心する。


 まさか。


 咄嗟、俺は矢も楯も堪らず駆け出した。俺の推測が正しければ、答えは学校にある。のんびり歩く玲於奈を追い抜き、全力疾走で学校を目指した。


 ここまで学校に行きたいと思ったのは、小学校の入学式以来だ。

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