第29話

これが日本の介護技術だ!!と発揮したユーイチ。だが、ユーイチ。ここは異世界だ。ファンタジーだ。冒険はどうした?と思う作者。

やっとユーイチは冒険?へ旅立ちそうです。



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「今すぐ特許を取りに行ってきてください。」


 お茶をしながら今後の流れを相談しつつ、良い天気や悪い点について話しをしていると、特許の件になった。

 ユーイチはリッケルドさんに、技術や知識を登録していない事を伝えると、真面目な顔で言われた。


 冒険者や戦争体験した人達の中には、高位ポーションや高位回復魔法が使えず、そのまま四肢が欠けたまま生活しているらしい。

 その為、この技術は一定の人に必要とされる技術で、特許を取って広めれば、世の中の人が喜び、そしてお金になると。


(索敵出来た範囲に、精巧な義手、義足を付けている人は確認されませんでした。一般人でも加工可能なデータを作成します。)


 マモリちゃんが、そろばんを弾いているイメージが出てきた。お金は好きです。


「はっきり申し上げます。登録しなければ、いつか私の姿を見た人物が登録するでしょう。なので、早急に手続きを取ってください。

 私は貴方に命を助けられた。勿論約束は守ります。その上で、貴方が困った事があったら言ってください。全力で力になります。」


 奥さんと手を握りながら、その事を伝える姿は真実に見えた。ユーイチは笑いながら伝える。


「ありがとうございます。私が望むのは、変わらずミリィちゃんとレオン君の幸せです。その為に力を貸してくれるならありがたく歓迎します。

 そう言えば、行商人の方々を奴隷契約で雇ったのですが、荷馬車はあります。彼等に働きに出てもらう事を考えているのですが、馬を購入した際に置いておく馬小屋を作るにも許可が必要ですか?」


「馬小屋でしたら、うちに空いているスペースがあるので使う事は可能ですよ。2人の為にも協力させてください。」


「ありがとうございます。助かります。今のお二人なら大丈夫だと判断します。

 だいぶ早いですが、契約の始めに伝えたあのメモを開けてもらって、言葉に出して読んでもらって良いですか?皆さんに行ってきた私の対応についても理由を説明します。

 そこに書かれているのは、あなた方の一つの未来でした。それを防ぐ為に今回の仕事をしました。」


 メルビアさんは奥からメモを取り出してきてくれる。

 そして中を開くと、青ざめた表情で叫ぶ!!


「私はこんな事をしません!!」


「わかっています。お2人は私の説明を聞いたら納得する事になりますよ。読み上げてください。」


「『私が夫を殺す。』と書いてあります。」


 そこからユーイチは話し出す。日本の介護環境の現状を誤魔化して伝える。相手を愛する余り、愛する人を楽にする為に殺してしまう事件が起きている。と。

 そしてその原因の一つが『介護疲れ』だと言う事を。愛があるからこそ殺してしまう事があると言う事を。


「私のこの知識は、そんな人達が苦しまないようにする為の知識です。2人とも前より大変な事もありますが、その分を話し合い、思いやり、過ごしてください。」


 椅子から立ち上がると、ユーイチは笑いながら言う。


「良いですか。私は利用されるのも、利用するのも、騙させるのも嫌いです。私は私の我儘で行動しています。

 ですが、隣人としてなら相談になりますし、何か起こる前に出来たら相談に来てください。1年間は私も村人なので。」


 そう伝えると、ユーイチは椅子から立ち上がる。


「さて、私は失礼しますね。ゴワイルに声をかけて、数日以内に町まで出かけて特許とやらを取りに行ってきます。

 今回かかった金額はゴワイルに聞いておいてください。全て彼がお金を払っていたので。」


 ユーイチが家から去ってから、リッケルドはメルビアに伝える。


「私が死ねば楽になるだろうと、考えてしまった事がある。すまなかった。」


「はい。ユーイチさんから聞きました。それで怒られたとも。」


「あぁ。今思い出しても恐ろしかったよ。そんな人が私達を助けてくれるなんて。」


「ユーイチさんは言ってましたよ?貴方がユーイチさんを恐ろしく感じてるから、もしかしたらユーイチさんをこの後に追い出そうとしたり、殺そうとするんじゃないか?って。」


「それでユーイチさんはなんと?」


「出来たらやめて欲しい。と。反撃しなくちゃいけないから。と。それから数日後には、義手や色々なものを作ってくださって、持って来てくれました。」


「そうか。彼は知っていて、手を差し伸べてくれたんだな。」


 そんな事を話してる2人の会話を、ナノ君経由でマモリちゃんから聞いているユーイチ。さて、次は町に行かないとな。


(マモリちゃん。ナノ君。なに食べたい?お昼は食べてて。って言ってるから、食堂で食べる?それとも何か作る?)


(食堂に行きましょう。今日のメニューも中々な評価だと報告しますね。)


(ナノ君を使って味見してたの?材料とか調理方法はわかる?)


(勿論。数日間ですが、記録に残してあります。仮想空間での練習の準備も、万端です。)


(マモリちゃん。村にいる間はそれ作らないからね?それやると、作り方を知っちゃってる時点で泥棒なんだから。

 村にいる間は、ちゃんと食堂に行きます。そして村から出たら作ってあげるからね。)


(了解しました。普段作ってくれている食事が1番好みですので問題ありません。)


 《僕。も。》


 そんな話しをしながら食堂へ行くと、店は混んでおり、賑やかだ。そして店内を見回すとジルさんが居た。歩いて近づいて声をかけてみる。


「こんにちわ。ジルさん。宜しかったら席をご一緒しても良いですか?」


 ジルさんは笑いながら返事をする。


「こんな婆さんと一緒で良ければ、どうぞどうぞ。」


 お婆さん対応って事だね。わかってるよ。ジルさん。


「今はミリィちゃん達との食事で賑やかなので、のんびりと食べる食事を魅力的だと思ってしまうのです。贅沢な悩みですけどね。」


 ジルさんは笑いながら答える。


「確かにそうじゃな。子供達の賑やかさは本当に可愛らしいからのぉ。」


 すると厨房からルークさんが食事を持ってきてくれる。


「こんにちわ。ユーイチさん。今日のメニューはこちらになります。」


 パン。ピンクやら黄色のカラフルな肉野菜炒め。スープ。の3点だ。スープの中身は豆かな?


(本日のメニューに危険物は入っていません。安心して食事を愉しみましょう。)


 《僕。残念。これも。食べる。好き。》


 早速食べてみる。スープを飲んでみると、気持ち味付け薄く感じる。だが、豆を噛むと、豆の風味が合わさり、味に深みが出て来た。どんな料理漫画だよ。と思う位の味の変わる料理だが、そうとしか感じられない。


(美味しいですね。やはりナノ君での味の偵察には限界があります。食べ合わせて評価の変わる料理だと気がつきませんでした。)


 《美味しい。ね。》


 肉野菜炒めも食べてみる。一つ一つの野菜に甘さや風味があり、1つの味付けが浸透はしているが、それぞれが味を主張している。だが打ち消しあってないと言えばいいのか?美味い。

 相変わらず気がつくとガツガツ食べてしまうユーイチ。それをジルさんは笑って眺めていた。


「やっぱりここの料理は人を魅了するねぇ。」


 そうだ聞いてみよう。ユーイチは食事を中断して聞いてみる。鳴り響く2人の声とメッセージ。待ってて。大事な事だから。


「ジルさん。用事が出来てしまい、ゴワイルに声をかけてから、町に出掛ける事となりました。町のお勧めの料理や食事処などのオススメは有りませんか?」


 ジルさんはそれを聞くとため息を吐く。そして小さい声で答える。


「あんたは、食べ物にしか興味はないのかのぉ?」


 少しエルフっぽい話し方だ。ユーイチは考える。そして結論が出た。

 食べ物を好む子が2人も居るので、食べ物を優先しますとも。別に今欲しい物とか無いし。あ、魔法とか使えるなら使いたいかも。


「そういえば魔法についても調べたいと思っています。」


「魔法。ねぇ?そこは町で聞かないで私が教えてやろう。これでも魔法にはちょいと詳しいからね。」


 そして周りの騒音でギリギリ聞こえる小さい声で呟かれる。


「アンタの場合、見つかると厄介な事があるんだから、私がやってあげるわよ。この前、愚痴も聞いてもらったし。」


 エルフがデレた。でも、そこは顔を赤らめて欲しい。普通に言われてるから、デレではないのだろう。まぁ魔法を調べてもらえるなら助かる。俺も魔法を使いたい。


「では、町から戻ったらお願いしても良いですか?」


「それじゃ気をつけて行くんだよ。土産は例のお酒でいいからのぉ」


 ウィスキーを気に入った様子。まぁナノ君お手製だから良いかな。


「わかりました。今度、伺いますね。」


 そんな会話をジルさんとして食事を済ませると、ゴワイルの所に行く事にする。ナノ君に聞くと、今は森で狩りを終わらせて、肉を川で冷やしている最中のようだ。

 待ってるのも面倒だし、さっさと向かう事にした。


 村を出るまでに、何人かに声をかけられて感謝されたり、少し話しをしてから門番にも声をかけて、ゴワイルの元へと向かう。


「どうしてユーイチがここにいる?」


「ゴワイルを探して山の中を移動していたら、合流出来たんだ。」


 めっちゃ疑われてる。俺は真実しか言っていない。まぁそんな事は気にせず、要件を伝える。


「ゴワイル。リッケルドさんから言われたんだが、リッケルドさんを助けた技術なんだが、特許を取ってこいと言われて、町に行こうと思う。

 ゴワイルとの契約もあるから、声をかけておこうと思って。」


「ああ。わかった。あの契約は村に縛り付けるわけじゃないから、数ヶ月離れる訳でもないからな。大丈夫だ。」


「まぁ契約とか特許とか知らない事ばかりだから、契約した行商人達にも聞きながら勉強してくる事にするよ。」


「商人の中にはタチの悪いの者もいる。頼むから騙されるなよ。」


「心配してくれたのか。ありがとな。」


「いや、騙した奴らが報復を受けると、お前が捕まって帰ってこれないような気がしてな。」


 どんな目で見てるんだよ!まぁそれ位の事はやりそうだな。まぁ近い事はやるかな。


「それじゃ、明日に町まで出かけてくる。行商人とミリィちゃん達も行きたいらしいから、7人で行ってくる。俺は村に帰ってみんなに話して準備をするが、ゴワイルはどうする?今帰るなら、肉を持つのを手伝うぞ?」


「あぁ。頼む。」


 ユーイチは川に入ろうとして、立ち止まる。


(マモリちゃん。俺の記憶はマモリちゃんも見れるって前に言ってたよね?それは細かく?それとも大雑把に?)


(簡単な記憶しか見る事が出来ません。名前や家族。どんな環境で育っていたか。などですね。)


(ナノ君。俺の荷物の本を出してくれる?異世界なんたらって書いてるヤツ。)


 《わかった。これ。?。》


 早速出してくれたようだ。リュックから取り出して本を開くと、確かこの辺に...あった!


(マモリちゃん。ナノ君。この本に書かれてる臓器と、ブッシュボアの解体で捨てられた臓器を比べてくれる?後、捨てられてる臓器に人間が食べて害があるか調べてくれる?)


(切断面。ブッシュボアの身体的特徴から計算して、本との類似点99.87%を確認しました。ナノ君による診断も毒物など検出されておりません。)


 やった!!ホルモンとか食べれるぞ!!ゴワイルに振り向く。怯えるゴワイル。


「ゴワイル。頼みがある。俺が村に帰って来た時に、ブッシュボアを取りに行く時、声をかけてくれないか?俺は解体のやり方を知らないから、やりたいんだ。

 そして俺の本題だ。捨てられた部分に食べると美味い部分がある。調理法もこの本に書かれている。だから食べたい。」


「なんでお前は、ユーイチは食べ物とミリィ達の事になると目の色を変えるんだ?」


 呆れた表情のゴワイルだが、当たり前だろう。ゴワイルには判らないだろうが、俺とマモリちゃんとナノ君も騒いでるんだからな!

 2人とも!使える能力を使って、肉を洗う為の必要な物がこの世界にあるか探すぞ!


(ただ今、本に記載されている材料に似た物を確認しております。緊急対応の為、広範囲に索敵していたナノマシンも集合させます。)


 《僕。頑張る。美味しい。正義。》


「さて、思わぬ収穫があった。帰るか。」


 川にザブザブ入って、沈められたブッシュボアの巨体を軽々と担ぎ上げて、川から出てくるユーイチ。


「頼むから町で騒ぎを起こすなよ?」


 同じ事でまた注意されながら、村へと帰るユーイチとゴワイルなのであった。



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作者のイメージしている『異世界に行っても必要になる知識』の本に合ったらいいな!と思うのは、

・サバイバル知識(水の確保。狩りの仕方。パッチテスト。石のナイフの作り方。などサバイバルの達人や軍人さんが知っているような知識)

・食料品の作り方。(味噌、醤油、塩の生産方法。)

・食料品の加工の仕方(薫製、一般的調理方法。ホルモンなど洗う方法)

・金属加工の仕方(レンガの作り方。耐熱レンガの作り方。炉の作り方。金属の識別方法。耐久力を上げる為の混合方法。製鉄方法。現代の日本刀製造方法。)

・定番ファンタジー知識(手押しポンプ。水車。畑に撒く栄養素の作り方。便や腐葉土の正しい使い方。ピンホールカメラの作り方。食料加工品の大量生産方法。ガラスの作り方。蒸留酒の作り方。)

を1巻として発売。興味のある方は是非とも製造販売してください。後書きにはチャールスに捧ぐ。とても書いて頂ければ(笑)

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