第23話
前回のあらすじ
マモリちゃん。ナノ君。楽しく喋る。
マモリちゃん。ナノ君。楽しく食べる。
マモリちゃん。謎のプロテクトを作成。
ユーイチだけプロテクトを使えず、食べて悶絶する。
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食事も終わり、レオン君はお昼寝をしている。そして椅子に座っているミリィちゃんに尋ねる。
「ミリィちゃんに聞きたいんですが、家の隣の敷地に荷馬車を置いて、そこで寝泊りをしても良いですか?」
「狭いですが、ユーイチさんもここで寝てください。」
「外で寝る道具も色々とあるんで、大丈夫ですよ。案外便利なんです。」
そう伝えると、ミリィちゃんから外での生活の許可を貰う事が出来た。さっそく外へ出るとユーイチは腰に手を当てて宣言する。
「ここを俺のキャンプ地とする。」
昼下がり。隣の家の人から不思議そうに見られてしまった。
荷馬車の横にテントを建てると、寝袋など中に入れておく。そんな作業をしていると、マモリちゃんから声をかけられる。
『ユーイチさん。部屋の隙間の補修を完了しました。本格的な作業は夜間行う予定です。』
《ユーイチ。出来た。》
「ありがとうね。マモリちゃん。ナノ君。お疲れ様。」
外から見えていた家の隙間が全く見えない。流石、匠の技である。
ユーイチは荷馬車に腰掛けると、マモリちゃんに尋ねる。
「どうやって村の人達の目をごまかして修理をしたの?」
『簡単です。村人達全ての行動を監視していますし、運ぶ際は反対側に音を立てる。視線を何かが横切る様に見せて、全ての村人達から一時的にこの家を『死角』にしました。」
不可能を可能にするマモリちゃんだな。泥棒の相棒になったら、大儲け出来るんだろうなぁ。と思うユーイチ。
「それじゃ相談ね。今後の予定として、掃除。洗濯。食料確保。お金の確保。家の横にある畑がミリィちゃんの土地か確認。育ちが悪そうだから、コソッと栄養とか与えて育てたいよね。」
あまり目立つ事をしたくないユーイチ。余計な事をして、仕事も増やしたくないから、今後も地味な生活をしたい。
『掃除。洗濯。肉類の確保は問題ありません。畑に関しても卵の殻。米を粉砕後、水で栄養素を希釈し散布する事で畑の食物も成長率が向上するでしょう。畑仕事もナノ君で対応が可能です。
現在の村人達の職業。技術力を確認しましたが、金を稼ぐ。目立たない。と言った点から、木工職人など如何でしょう?ユーイチさんにも行えますし、作成に関しては私やナノ君にも対応可能かと。』
「マモリちゃん?なんで最初、殺戮AIって説明だったのに、なんで家庭的なの?あと、木工職人は良いね。」
米のとぎ汁を撒くって、田舎のお婆ちゃんの知識だぞ?
『私を構成する際、大量のデータを与えられましたが、その際の一部に生活情報がありました。
現在、この村人達の生活環境で必要な商品のピックアップを行いました。リストがこちらです。』
殺戮AIを作るのに、お婆ちゃんの知識が必要だとは知らなかった。まぁ加工技術がそこまで無いみたいだし、コップに柄とか彫ったら売れそうだよね。
そんな事を考えていると、リストに義足。義手。松葉杖が出てくる。
「マモリちゃん?この義足とか松葉杖って?誰か怪我人でも居るの?」
『現在の村人の中で先先代の村長が左脚。右腕を損傷しております。村長の家の一室にて療養中。ゴワイル達村人達と現在。村について検討中です。』
そうか。それで歩いたり出来なければ村長も引退とかしてそうだよな。それなら恩を売りに行こう。そして後日に作った義足やら義手を売りに行こう。
家へ入ると、ミリィちゃんが部屋の掃除をしている。ごめんよ。さっき掃除をナノ君にお願いしちゃって終わってるんだ。
「ミリィちゃん。隣の畑って、ミリィちゃんの家の畑?」
「そうです。ウォルお兄ちゃんと私で作った畑です。村のみんなに聞きながら作ったんですが、あまり大きく作れなくて。
普段は、ウォルお兄ちゃんと私で山に入って狩りや食べれる野草を取ってました。」
「畑をいじったら、もう少し美味しく育ちそうなんだけど、今度弄っても平気?あと、村長の所に行ってくるから、荷馬車を見ていてもらって良いかな?」
ミリィちゃんは笑顔で答える。
「美味しくなるんですか!お願いします。やり方を教えて下さい。あと、荷物番は任せてください。」
意気込んでいるミリィちゃんの様子を見て、ユーイチはナノ君に頼んで、荷馬車にクッション2つとスポーツ飲料水を2本。バナナ4本を用意して貰う。
仕事とは過酷な物なんだよ。
「それじゃ、見張りをよろしく。クッションを使って、ちゃんと水分補給をして、バナナを食べたかったら食べる事。残しても食べても、ナノ君が後で片付けちゃうから、ミリィちゃんの好きにして良いからね。トイレの我慢とか禁止。ちゃんと行ってね。」
ミリィちゃんは慌てる。
「見てるだけですから、大丈夫ですよ。」
「ミリィちゃんは頑張りすぎない事。レオン君が起きてきたら、残ったバナナや飲み物もあげて良いからね。夕飯も作るから、待っててね。昼より軽い物だけどさ。」
さて、ミリィちゃんに大変な仕事を押し付けたから、俺も出かけてきますか。上手くいけばミリィちゃん達の後継人になるかもしれない案件だ。
とりあえずリュックを持って、村長の家に向かう。歩いていると昨日会った村人達に声をかけられて立ち話しをする。
村に力を貸した事に対する感謝の言葉を言われ続けて、むず痒くなってきた。
感謝は受け取っておくけど、俺の我儘な事もアピールしておく。その事を話すと、村人達は何故か、にこやかに笑っているんですよね。俺は知りません。
そんな事をしてから村長の家に辿り着く。2回目の来訪。ノックをしながら声をかかる。
扉を開けてくれる中年の顔色の悪い疲れてるくすんだ金髪の40代くらいのおばさんが現れる。倒れませんか?
「初めまして。ユーイチと言います。ゴワイルはこちらに居ますでしょうか?」
「ちゃんとお話しするのは初めてでしたね。村長の母親のメルビアと言います。死んだ息子を受け取りに行った時は泣き叫んでしまい、ちゃんお礼を言えませんでした。本当にありがとうございました。
そして、息子のカリウスがユーイチさんに大変ご迷惑をおかけしました。」
深々と頭を下げるメルビアさん。
「やめてください。女性に頭を下げさせたりする事は苦手なので。私は私のやりたい事をしているだけですし、別に恨んでませんので。」
その事に関して、カリウスは恨むほどの相手じゃない。マモリちゃん達のお陰で行動はバレバレだったし。日本にいた頃の人達の方が腹黒かった。
メルビアさんは顔を上げながら言う。
「本当に申し訳ありませんでした。そして村を助けていただきありがとうございます。」
「貴方からの謝罪と感謝を受け取りました。メルビアさん。」
メルビアさんに案内されて村長の家に入っていくユーイチ。すると1番奥の部屋へと通される。
そこにはベットに寄りかかりながら話しをする厳つい茶髪の40代の男。ゴワイルと甲乙つけ難いオッサンだ。
周りにゴワイルやグイフ君。何人かの村人達が居る。
俺が来た事で話しを中断するようだ。
「ユーイチ。どうした?」
「ゴワイルや村長に聞きたい事があってね。何人かは初めまして。ユーイチと言います。ゴワイルとの契約で1年ほどですが、村に居させて貰う事になりました。」
昨日話したから、みんな知ってるよね。まぁ本題はここからだ。
「つきまして、私の出来る仕事の一つとして、木工職人として働こうと思うのですが、その許可を貰いたいと思いまして。相談に来ました。
そして荷馬車の荷物の売り方なんですが、売れ残りがあった際は、逆オークションを行おうと思います。」
そうして、逆オークションの説明をゴワイル達に伝える。
「そして先先代の村長の怪我を聞きまして、商売の話しに来ました。お名前を伺っても宜しいですか?」
するとベットに居るオッサンは話し出す。
「先先代の村長を勤めたリッケルドと言う。こんな格好ですまない。片足と片腕をモンスターにやられてしまってな。
そして、息子達の件に関して、死んだ息子にあわせてくれて、本当にありがとう。そして馬鹿な息子のせいで迷惑をかけてしまい、先先代村長として。父親として謝罪したい。ユーイチさん。すまなかった。」
ベットの上で頭を下げるリッケルド。
「私は貴方からの感謝と謝罪を受け入れます。それに貴方が悪いわけじゃない。
では、それを抜きに貴方と商売の話しがしたい。失礼ですが、貴方の今後の生活を聞かせてもらえませんか?」
リッケルドは笑いながら言う。
「今後の生活?足も無くて腕も無い。こんな身体なんだかは、あとは衰えて死ぬだけさ。」
まぁ普通はそう考えるよね。魔法で足とか生えないのかな?まぁそこは知らないし、まぁいいや。
「では、そんな貴方に私からの提案を伝えます。報酬として、貴方が今言った『衰えて死ぬだけの今後の人生』をください。」
横にいたゴワイルから殴られる。ごめん。邪魔するな。片手で胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「ゴワイル。邪魔するな。ちゃんと話しを聞け。別に死ねと言ってる訳じゃない。もしかしたら、死ぬと考えているヤツを助けられるかもしれない。
そんなヤツに今後の楽しい人生と、余分な仕事を押し付けるだけだ。勿論。対価も頂く。」
暴れるのを辞めたゴワイルを下ろしながら、リッケルドに伝える。
「リッケルドさん。調べないと判らないが、衰えて死ぬだけの人生か、それとも俺が助けられるか調べさせてくれ。
ゴワイル。お前はリッケルドに借りがあるって言ってたよな?リッケルドさんを助ける為に協力するか?」
「あぁ。俺は何をすればいい?」
「まずはリッケルドさん。貴方の身体を調べさせてほしい。出来ない事を出来るとはいえないからな。そして、出来ると判断したら、俺の指示に絶対に従ってほしい。
その時にはゴワイル。俺の代わりに村で買える材料があるか調べてきてくれ。ちなみに指示に従うのは村長の家にいる家族全員だ。期間は余裕を持って1ヶ月。」
「最初は調べるんだな。生きれるかどうか。あぁ。調べてくれないか?」
さて、看護助手の血が騒ぐぞ。医療介護、看護の現場の知識を異世界で生かせる日がくるとは。
あとは追加でジルさん辺りの回復魔法と、マモリちゃん。ナノ君のサポートがあればいけるでしょう。
「ではゴワイル達は部屋から出てください。村の話し合いは別の場所でやっていてください。本人を調べるのに...そうだな。それは食事を始めて、食べ終わるくらいの時間がかかります。
他に必要な事があるから、全部で、ご飯をゆっくり5回食べるくらいの時間がかかります。メルビアさんにも話しがあるので残ってください。」
「ユーイチさん。父をお願いします。」
グイフ君。別にお父さんを今から殺す訳じゃないんだから、そんな心配な顔で見なくていいよ。
部屋で暴れたのはゴワイルだよ?さて、みんな部屋から出て行ったから、まずはリッケルドさんが『死なないようにしますか。』
扉を閉めながら、ユーイチは今後の事を考えるのであった。
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よく、冒険者が怪我して田舎で畑を耕すんだ。とかあるけど、その先が見たくて書き始めました(笑)
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