第22話
マモリちゃん。ナノ君。待たせたな。君達の為の食事回だ。愛情を持って料理をしています。書いていた日の夕飯が同じメニューだったのは、何かの縁です。
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2人に家の補強をお願いしてるので、俺は早速昼ご飯の準備をする。そして気になっていた材料を追加する事にした。それはラプラ。
まだこの世界の食材に詳しくないので、少しずつ試して行くつもりだ。と言う事でリュックからお金を取り出すと、ミリィちゃんにお使いを頼む事にする。
「え?お使いですか?家の補強の話しをしていたのに良いんですか?」
「そういえば言ってなかったね。今、マモリちゃんとナノ君に頼んだから、補強の事は任せて平気なんだ。
今は家の補強を頑張ってくれている2人を労う為の、2人の好きそうな料理を作ります。そこでミリィちゃんに初めての仕事を頼みます。」
背筋を伸ばすミリィちゃん。ごめんね。そんなに大変な仕事じゃないんだ。
ナノ君に頼んで、リュックとメモ帳を作って貰う。そしてサラサラと書いて、ミリィちゃんに渡す。切った事に目をまん丸にして驚いている。
メモの内容として、
・ 宿屋の食堂でルークさんに話しを聞く。「昨日の昼に出てきた辛い香辛料を購入したいので、聞く。」
買う物。
・甘いラプラを5個。
・辛い食材を数種類位。量はそんなに要らない。
・ミリィちゃんが好きな野菜を3つほど。
・甘い食べ物。何種類かを4個ずつ。
・お金が余ったら、少量ずつで良いので、調味料。香辛料。を買えるだけ。
とメモに書いて、銀貨を2枚取り出して、ミリィちゃんに渡す。
「お金はこれで足りるかな?優先的な事を上から書いたからね。ミリィちゃん。君にお使いとお買い物をお願いします。」
(ユーイチさん。話し合いを提案します。辛い物は負担が大きいので、排除するのが良いと思うのですが。)
(大丈夫。マモリちゃんの味覚の時は食べないし、ナノ君にも料理を楽しんで貰えるように、2種類作るからね。)
《僕。楽しみ。》
(了解しました。貴方は素晴らしい融合先でした。)
なんか初めてマモリちゃんに褒められた気がする。ナノ君。初めて自分の事を『僕』って言ってたね。育ってるのを見守ってる父親の気分のようにほっこりした。
「それじゃ、食材を全部出してくれる?」
テーブルの上に置かれる食材達。
「ありがとね。チャレンジして、異世界の材料を使いつつ、色々と作ってみるね。」
そんな事をマモリちゃん達に伝えていると、ミリィちゃんから声がかかる。
「それじゃ、行ってきます。レオン。買い物に行くわよ。」
「ぼく、ここでみてる。」
「レオン君は俺が見てますので、良いですよ。」
ミリィちゃんにリュックの使い方を説明して、見送ってから料理を始める。
「ユーイチ。マモリちゃん。ナノ君。レオン君のお料理コーナー♪」
《パチパチ。パチパチ。》とメッセージが届く。いつも料理をする時に言ってたから、覚えていてくれた。
『楽しみにしています。』
うん。AIだから、マルチタスクが得意ですよね。と言う事で、4人で料理を始めます。
「では料理を始める前に手を洗います。」
テーブルの上に鍋と水。タオル。石鹸が用意される。本当はナノ君が殺菌してくれるんだけど、レオン君に教える為にやっておく。
レオン君にちゃんとした手の洗い方を教えて、今度はタオルでテーブルを拭く。そのたびに鍋の水は綺麗な物と交換されている。阿吽の呼吸である。
「レオン君。食べ物を触ったり、作る時は綺麗にしましょう。そうしないとお腹を痛くなったり病気になっちゃいます。
本当はこの水も汚れたりしていたら交換して新しい水に変えます。ナノ君が今回は変えてくれています。」
「そうなの?」
医学が発達してる感じはしないからなぁ。この世界。そんな会話をしながら鍋にサラダ油を引いて、ガスコンロで熱している間に、豚肉の塊を包丁で子供の一口サイズに切って鍋で炒める。
ついでに漬け置きした鶏肉も切っておく。瞬時に包丁とまな板が綺麗に。ナノ君は最高だよ!!
「では次に野菜を洗ってあげてください。これはレオン君にお願いしようかな?出来るかな?」
「うん。できるよ!」
そんな感じで会話をしながらニンジン。ジャガイモ。トマトを野菜を洗って貰う。タマネギに関しては皮を剥くと目が痛くなるから離れるんだよ?と伝える。
すると、『その野菜もモンスターなの?』とレオン君に言われた。この世界には、そんなモンスターが居るらしいです。覚えておこう。
野菜の皮を剥いて、子供の一口サイズにカットしておき、軽く炒める。その間に、飯盒とガスコンロを4個ずつ用意して、無洗米を1合ずつ入れて水を入れて炊き始める。ここでも重要なのがナノ君だ。
ナノ君は炊かれてる米の中に少量いて貰う。そして米が踊るように中で動いてもらい、最高の炊き加減の時に本人が教えてくれる。
鍋の野菜にも火が通っているし、その鍋に水を入れて沸かしている間に、カレールーを4人前。トマト2つ。チョコレートを刻んでおく。
「あ、あまいやつだ!」
目をキラキラさせて、眺めているレオン君。チョコレートのカケラをレオン君の口に放り込む。そして俺も一口。これは料理のお手伝いをしている人の特権だ。
刻んだ物を鍋に放り込んで、蓋をする。そして熱に強いナノ君再び。俺の手首から銀色のナノ君が伸びていき、火に当たっている鍋の蓋の部分を覆い隠す。そう。圧力鍋をナノ君がやっている。中も勿論混ぜてくれているナノ君。ナノ単位で密閉できるナノ君。最高過ぎる!
あ、横でレオン君がポカンとしていた。
「レオン君。これもナノ君が手伝ってくれているんだ。こうすると美味しくなるんだよ」
「あつくないの?ぼくまえにさわって、あつかったんだ。」
「おじさんとナノ君だけ特別さ。真似しちゃダメだからね。あと、これも村の人には内緒ね。」
「うん。わかった。」
(ユーイチさん。普段のカレーと違いが無いのですが、良いのですか?)
(大丈夫。この後に刻んだラプラを入れて甘さを出していくんだ。フルーツによってカレーに合う甘さがあるんだけど、ラプラは多分カレーに合う甘さだから。)
食べた時の感想が、干しリンゴだったんだよね。味はリンゴだったし。
鍋に火をかけながら椅子に座り、レオン君と話しをする。レオン君の好きな事は、畑の虫を捕まえる事。今まで宿屋のアリアちゃんと遊んだりしていた。
だが、お兄ちゃんが死んでからお姉ちゃんが忙しくなり、遊びに行けなかった。
だから昨日はアリアちゃんに会えて嬉しかった事。そんな事を話してるレオン君の頭を撫でると喜んで笑っていた。
少し経つと、走って来たようで、汗をかいたミリィちゃんが家の中に入ってくる。
「ミリィちゃんおかえり。」
するとミリィちゃんは悲鳴を上げた。ユーイチの腕に驚いていた。
「驚かせてごめんよ。これマモリちゃん達のお手伝いしてるくれているから、こんな姿なの。ごめんね。」
落ち着いたミリィちゃんに、スポーツ飲料水を渡して水分補給をさせ、タオルで汗を拭いてもらう。
さて、ここからチャッチャと作るか。と気合を入れるユーイチ。
テキパキと砂糖多めの玉子焼き。クラムチャウダーの缶をあけて、牛乳を追加してスープを作り、味付け鶏肉を焼いたり、カレーの煮込み具合を確認して一人前を別の鍋に入れる。1つを味見して、ラプラを細かく刻んで入れて味見をして調節する。
(この味は、今までのカレーの中で最高評価の味付けです。)
マモリちゃんからお墨付きが出た。ラプラ1.5個入れてます。今度はナノ君用だ。ナノ君用の鍋に近づいただけで、マモリちゃんから話しかけられる。
(現在のユーイチさんとの味覚、触覚。嗅覚を遮断しました。)
(偉いね。この後のご飯を楽しみたいから、ちょっとマモリちゃんは我慢してね。」
そう伝えると、ミリィちゃんに買ってきて貰った食材を確認。刻んだ赤い葉っぱだな。
第一候補はルークさんの謎の辛み。カレーに合いそうなんだよな。唐辛子系だったし。少し刻んで、カレールーと混ぜてみる。うん。当たりだ。
後ろで腹を空かせた子供達の視線が痛いから、簡単に済ませるか。他の食材は実験だし。後でやろう。
謎の葉っぱを目安で刻み、カレーに混ぜて味見。
《もう。少し。辛く。》
ナノ君からのリクエストが来た。まだ辛くするのか。俺でも辛いぞ。でも頑張ってくれてるナノ君の為だ。追加で刻んで入れる。この鍋だけカレーの色が変わった。うん。味見したら、ヤバかった。
そしてナノ君からOKが出た。この食事には気合が必要だぞ。と思うユーイチ。
配膳はミリィちゃん。レオン君がするそうです。俺はテーブルに座って、ご飯やカレーの盛り付け方を説明して、椅子に座ってる。
まずはマモリちゃんや子供達との食事をする。
(ナノ君。待っててね。)
《大丈夫。この味。好きだよ。》
甘口カレー。甘い玉子焼き。鶏肉のマジックソルト焼き。クラムチャウダー。うん。子供向けな食事だが、みんな気にいるかな?
「それじゃ食べようか。マモリちゃん。いつもありがとう。ナノ君。いつもありがとう。そしてミリィちゃん。レオン君。これから村にいるからよろしくね。いただきます。」
子供達は見たことのないカレーから試してみるようだ。うん。美味しそうに食べてる。
「すごいね!おいしいね!」
「そうだね。初めて食べたけど美味しいね。」
俺も食べてみる。チョコレートやラプラ、トマトなど甘味の多い食材を多めに入れているので、小さいお子さんでも食べれる優しい甘さになっています。
マモリちゃん喜んでるなぁ。聞き取れないくらい饒舌に話してる。今後も定期的に喜ぶ食事を作りたい。
ラプラはやっぱりリンゴの親戚と覚えておこう。パイとか食堂であったから、アップルパイもあるだろう。
2人は貝を食べた事がないとの事で、クラムチャウダーの貝を「クニュクニュしてる」との評価。
まぁ美味しいらしい。そんな楽しい食事会が終わろうとした頃、甘口カレーを食べ終わったユーイチは気合を入れる。辛口カレーだ。
(ユーイチさん。今日はありがとうございました。私の第六感が、あの鍋に近づくなと言っていますので、味覚、嗅覚、触覚、視覚、を遮断します。
防壁プログラム展開。味覚診断プログラムを待機状態にて展開。食事が終わった際は声をかけてください。)
マモリちゃん?さっきに続いて凄い饒舌だよ?しかもなに?その防壁プログラムって?そんなの初耳なんですけど。
カレー用に防壁プログラム作ったの?進化しちゃった?マモリちゃん。俺、進化なんてした事無いんだけど?
そんな疑問を考えつつ、ユーイチは牛乳を1リットル用意して貰った。俺だって味覚を遮断したいけど、それやると味が判らないらしい。あくまで共有だから。
《ユーイチ。辛い。嫌い。?。》
ナノ君に遠慮させてしまった。男は度胸だ!辛口カレーを食べ始める。無くなったはずの血管が開いてる感じがする。発汗してる気がする。口の中が痛い。
他のクラムチャウダーなどを間に挟んだりしつつ、一口。一口食べていく。一心不乱だ。牛乳も勿論飲んで口の中の辛さを中和させながら完食する。
《ユーイチ。ありがと。満足。感覚。初めて。》
良かった。ナノ君が喜んでくれて。ナノ君が気に入っているから定期的にやりたい。だが、この衝撃を忘れる方法は無いだろうか?俺にもマモリちゃん。ナノ君みたいに新たな進化とかしないかな?辛さに強くなるって。
あれ?そういえば味覚の辛さを鈍くなるのって、舌の細胞がバカにならないといけないんだよな。俺、ナノマシンだから、バカにならないじゃん。
そんな事を考えつつ、子供達やマモリちゃん。ナノ君は幸せそうな昼下がりを過ごすユーイチなのであった。
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書き終わった。どんだけ書いてるんだ。俺。と思いつつ、今までで1番長い回でした。読んでくださり、本当にありがとございます。
昼飯だけでほぼ1話って(笑)作ってる内容はちょい豪華な昼飯です。作者もユーイチも料理レベルは普通なので、普通の料理に力を入れました。
適当には作れません(書けません)。
このタイトル通り、マモリちゃん。ナノ君は食べる事が好きなので!
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