第7話
前回のあらすじ
村から来た男達。
とりあえず俺を生贄にしようとしている村長。
殴られる村長。
とりあえず敵討ちをしようかな?と思うユーイチ。
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異世界転生10日目。
うん。微妙に曇ってるけど、雨が止んだから良かった。そんな事を考えつつ、朝の支度や朝食を済ませてからテントを片付ける。
まだテントの片付けを慣れてないから、ナノ君に頼らず自分でやる事にした。
「ナノ君。テントに付いた泥とかナノマシン化して取って貰っていいかい?」
すると、テントに付いた泥が消えていく。ユーイチはテントを片付けるとリュックに詰める。荷物をある程度持ってないと不審がられるから、仕方がない。
「ありがとね。ナノ君。」
そして、外に立てかけてあったマイウェポン。マモリちゃんとナノ君の力作である巨大な木剣。ほぼ丸太に近い太さがある。
これは木を切り倒して、水分をナノ君が抜いて、ある程度の大きさのモンスターに叩きつけても折れなさそうな太さを残しつつ、マモリちゃん監修で握り手やらを加工した一品。それを武器として持っていく事にする。
丸腰で出歩いている人って居なさそうだし。
早速、右手で持って肩に乗せてみる。持てるけど、持ち歩いていたらヤバい人だよね。
長さ3m近く。直径80cm近くの、木剣と言う名の棍棒のような太さ。まぁ、人を脅す用で作られており、自分で殴った方が威力はあるとの事。
「マモリちゃん。今日の天気はどうなりそう?」
『本日の天候は曇りが1日続くでしょう。風の流れを予測しても雨雲など観測されておらず、この世界独特の天候異常や、外的要因が無ければ降水は0%です。』
流石マモリちゃんとナノ君。天気予報もバッチリだね。
「マモリちゃん。まだオークの居場所とか判らない?」
歩きだして、村に向かいながら確認して貰う。
『現在、索敵範囲に入っておらず情報は未取得となっています。村にたどり着いた際、ある程度の方向など情報収集を行う事を推奨致します。』
「まぁそうだよね。早く稼いで、この世界の他の食材を使ったご飯も食べたいよね。」
『ユーイチさん。現在の発言に関して、詳細な情報開示を求めます。』
「ん?マモリちゃんどうした?詳細な情報開示って。」
『今の発言の内容です。《この世界の他の食材「使ったご飯も食べたいよね。》との事ですが、ユーイチさんはこの世界の食材を使った料理を食したり、自分で調理する可能性が有ると認識しても宜しいですか?』
「まぁ、持ってる材料は簡単に作れてたから便利だし、材料を買った方がお金もかからないけど、やっぱりずっと同じ物を食べ続けるのも飽きるし、作るかな。
この世界にも色々と食材は有るだろうから、食べようと思ってるよ?その為のお金稼ぎでもあるんだから。」
『再度ナノマシンの配布エリア拡大を指示しております。上位者権限により配布エリアの規制が解けず、プロテクト解除を試みています。
現在の状態では規制解除は不可能と判断。継続的にプロテクト解除を試みます。』
マモリちゃんが熱くなってるなぁ。と歩きながら考えているユーイチ。デブ猫も目をキラキラさせながら、尻尾をブンブン振りつつユーイチを見上げている。
「マモリちゃん?とりあえず仕事をして、お金稼いで、そのお金で食材とか色々と情報収集をしよう。急がないからノンビリとやって行こう。俺が動けば索敵範囲も広がるんだし。」
『了解致しました。現在の生活目標として、食材の確保、現地の調理内容の確認を第一目標として、今後も規制解除の方法を研究し、能力の強化に努めます。』
うん。マモリちゃんはAIで殺戮ロボットだったよな?なんで食べ物に夢中なんだ?融合のせい?まぁ食べる事は好きだし、いいか。楽しそうだからね。
「それじゃ、俺、マモリちゃん、ナノ君の3人の目標は、美味しい物を食べながら生活しつつ、地球に帰る方法を探したり、あの銀髪の少女に仕返しをする事を考えていこう。」
笑顔で喋りながら進む。すると、遠くで弓を持って立っているクリミアちゃんを見かける。今日も彼女は革鎧を着た狩人の服装である。
そう言えば、村に行く時間を決めてなかったのに立ってるのも偉いなぁ。お父さんに言われたのかな?
「おはようございます。クリミアちゃんかな?」
クリミアちゃんは驚いた顔をしながら、胡散臭そうにユーイチを見つめ返してくる。
「...誰から名前を聞いたんですか?私は伝えてないはずなんですが。」
「ん?一昨日に、ゴワイルに怒られてた時、『クリミア!!』と言ってたから、名前がクリミアちゃんと思ったんだけど、違った?」
クリミアちゃんは苦虫を噛んだような顔をして言う。
「確かに私がクリミアです。でも、ちゃん付けするのは辞めてくれませんか?」
大人ぶりたい年頃かな?と思いつつ、まぁ知らないオッサンに言われるのも良い気分じゃないよな。と思い直す。
だが、俺の頭の中ではクリミアちゃんで呼び続けるぞ。
「それじゃクリミアさんと呼ばせてくれるかな?改めてまして自己紹介すると、オジサンはユーイチと言います。
クリミアさん。今度矢を向けたら、襲いかかって来ると考えて反撃するからね?こちらに戦う気がなくても、襲われそうになったら俺は反撃するから。他の人も同じ様に考えるだろうから、気を付けた方がいいよ?」
あ、クリミアちゃんがもっと渋い顔になった。
「...ごめんなさい。いきなり弓を撃とうとして。」
ちゃんと謝れる良い子だな。
「忘れないようにね?さて。お出迎えありがとう。村に行こうか。」
それ以上は突っ込まないおくと、デブ猫は歩き始めるのでユーイチも歩き出す。死なないと判っていても弓で撃たれたくない。そして追いかけるように歩き出すクリミアちゃん。
歩きながら弓で狙った理由を尋ねると、『こんな辺境に1人でいる人が怪しすぎたから。』との事。ここって辺境なのね。確かに怪しいわ。
「そう言えばこの辺りの詳しくないのですが、村には何か名産や、おいしい物は有りますか?」
クリミアは不思議そうな顔でユーイチを見つめる。
「名産ですか?オークの話しを聞くんじゃなくて?」
「オークの話しは村についてから詳しく聞きたいと思っています。同じ事を何回も聞くのは大変ですからね。」
「ウチの村は、元々が辺境で森を切り開くのが領主様から頂いている仕事ですので、名産と呼べる物はあまりないんです。でも、村のジル婆の作るキリキル漬けは美味しくて好きです!」
キリキル漬け...うん。想像も出来ないな。キリキルってなんだ?
「美味しい物は良いですよね。是非とも食べてみたいです。そのキリキル漬けは売っていたりするんですか?」
「近所に住んでいるお婆ちゃんのお手製なので、売ってはいないです。よく私はお裾分けで貰うんですが、美味しくて。」
「お裾分けですか..なら私の食材と交換を願いしてみようかな?あとで紹介をしてもらってもいいですか?」
するとクリミアはクスッと笑いながら答える。
「オーク退治で村長と交渉しないと言い切ってた人が、キリキル漬けでお願いするって。」
ユーイチは笑顔で答える。
「変ですか?美味しい物を食べたり、綺麗な景色を見たり、そんな生活が好きな自分にとって、こちらから料理をお願いするのですから。間違ってないですよ。
『美味しいは正義!!』と言う言葉が出来るほど、食事は偉大なのです。」
ユーイチは立ち止まると、リュックを下ろして鞄を漁り始める。
(マモリちゃん。バナナを2本だしてくれる?)
マモリちゃんにお願いすると、リュックの中にバナナが2本用意される。
「クリミアさん。ジルお婆さんに交換する食材なんですが、こんなのがあるんです。交換して貰えそうか味見をしてくれませんか?」
ユーイチはバナナを両手に持ちながらクリミアちゃんに差し出す。
「どちらか一本をどうぞ。私も朝ごはんのおやつに食べますので。」
「良いんですか?見慣れない食べ物ですが。」
「えぇ。まだ有りますし、相談に乗ってくれたお礼です。」
するとクリミアはバナナを一本受け取って、しげしげと眺める。
「これはここを持って、皮を剥くんです。こんな感じに。中の部分が食べれます。皮は食べ終わった後は捨てる感じですね。甘い果物です。」
マモリちゃんもお気に入りのバナナである。味覚をオンにしてるかな?歩きながら食べるのはマナー違反だが、ここはまだ村に着く前の森の中。
ユーイチはモグモグ食べていると、横でクリミアちゃんから声が上がる。
「甘い!!美味しいですね!!!」
やはり『甘いは正義』である。正義が2つあっても良いと思う。そんな事をしていると、木々の隙間から村の柵が見えて来た。高見台には男が1人。そして木材で加工された門が閉じられていた。
そんな村を肉眼で見て、初めてのファンタジーな村への訪問にワクワクするユーイチであった。
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第7話 いざ行かん。初めてのファンタジーな村へ。
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