第5話

寒かったり暖かったりする今日この頃。いかがお過ごしでしょうか?現在の神奈川は、寒かったり暖かかったりして気候の変化がありますので、体調を壊しやすいのでお気をつけください。


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『ユーイチさん。推奨睡眠時間を経過した事をお伝えします。』


 異世界生活2日目の朝、身体を揺すられる。そしてマモリちゃんの声がする。よく見ると自分が勝手に揺れているので、不思議な起こされ方だ。それに合わせてデブ猫はユーイチをペロペロ舐めている。可愛らしい夢の様な起床の仕方だ。


 ユーイチは寝袋から這い出てテントを開けると、太陽がある程度上に来ている。大体9時くらいか?いや24時間なのかな?この世界は。


「おはよう。マモリちゃん。ナノマシン君。」


 昨日頼んだ通りに、お玉が宙を浮きながらカレーを混ぜていてくれている。しかも、焚き火を続ける為の枝の補充とか言い忘れてたのに、追加までしてくれていた。


「火の管理までありがとね。川で顔洗って、目を覚ましてくるね。」


 ユーイチはリュックからタオルを取り出すと、小川へと進む。冷たい川の水で顔を洗い、タオルを濡らして絞ってからテントへ戻り、裸になって身体を拭く。何故か寒く無いのがありがたい。


『体感温度の調節を行いました。』


「ありがとね。マモリちゃん。」


 予備の服に着替えてから洗濯物を纏めて朝食にする。朝ごはんはカレーにパンで済ませる。本当はやっぱりカレーライスで食べたい。しかし、朝から米を炊いて準備するのは面倒だから、楽にパンで済ませる。


 ちなみに持って来ていたカレーライスは中辛だったので、先程マモリちゃんからの脅威判定を頂きました。


『この食事は、ユーイチさんの精神に負荷が掛かっており、推奨しません。直ちに排除する事を進めます。』


 排除したくないユーイチは、せっせとチョコレート、トマトを刻んで追加して甘口にする。そしてマモリちゃんからは『今後もこのメニューを推奨致します。』と合格を貰えた。


 食後にコーヒー牛乳を飲みながら、ユーイチはマモリちゃんとお勉強する事に。


 今の俺のスペックを確認して、ナノマシンの強化人間として何が出来るか再度確認する。


「そう言えば、索敵してる範囲にいる生物を簡単な地図で表示出来る?追加で最大範囲の10キロ、5キロ、2キロ、1キロ、500メートル、100メートルみたいな感じで変更出来たりさ。」


『表示します。』


 うん。目の端にマップが出てきた。ゲームでよくあるヤツだよね。


『現在の生物の情報が少ない為、不確定を黄色。安全を青と表示させて頂きます。』


「来たばっかりだから仕方がないよね。」


 そんな事を喋りつつ、色々と設定を弄ってユーイチが分かり易いように作り替えてもらう。ちなみに食後の洗い物はナノマシン君がやってくれた。汚れた部分を食べてナノマシンに作り替えて、また補充するとの事です。

 マモリちゃんから『ナノマシンなので、ユーイチさんの身体に汚れは付きません。』と言われた。だが、毎日着替えるぞ。


 それからスペックの話しの続きになると、難しい事を言われ始めたので、『シンプルに教えて。』と伝える。すると、『全力を出すと、生えてる木など片手で引き抜く事が可能です。』と言われた。


 ユーイチは早速試してみた。そして案外簡単に出来ました...。


 そして色々と試すと、何故か身体が銀色になりました。思わず驚くユーイチ。そして、その事をマモリちゃんに尋ねると、『人としてではなくナノマシン集合体として動いた結果』との事。うん。全力を出そうとすると全身銀色になると教えられるユーイチであった。


「マモリちゃん。とりあえず緊急時以外は、銀色の俺は人で見られるようにしようか。服の中とかバレなければ良いんだけど、やっぱり見た目だけでも人間でいたいからさ。」


 そんな事を言いつつ、全身銀色状態のフォルムもマモリちゃんにお願いして、色々とフォルムを変えてもらう事にした。


 ユーイチの目の前に浮かぶのは顔の無い全身銀色のフォルム。でも、銀色の顔の部分に人間の顔が浮かぶのも嫌だ。

 やはりロボットの様な顔付きが良いので、色々と変更して作ってみた。とても満足です。


「マモリちゃん。これカッコよくない?」


『私はAIですので、機能美については把握していますが、形状に関しては知識不足となってます。』


 コレが男のカッコいいと言う事だと教えておいた。メタリックで、しなやかなフォルム。デザインに関して、無駄に額に角を付けたり、メカニックかつモビルなスーツを思い浮かぶ様な飾りを色々と付けてみた。だが、背中のバーニアとか形が付いていても空は飛べなかった。とても残念だ。


 ユーイチはその後も色々と機能を試す。ユーイチが空に20個ほど石を投げると、目の中にレーザーの枠が現れ、取る順番の表示まで出てました。


「マジで出来たよ、マモリちゃん。俺凄くない?」


『いえ。未確認ですが鏡の中に表示された生物の大きさや不確定な技能を考えると、不安要素があります。』


 例の鏡に写っていた人達の事ね。ちなみに、俺が寝てる間にも、ナノマシンで周辺を調べていたらしく、近くに村があるのを発見。住んでいるのは殆どが人間で、ナノマシンによる情報収集も開始しているそうです。


 そして驚きの出来事だが、近くの村の大人達の数人は、何もない所から荷物を取り出したり、火や水を操ったりしているとの事。うん。魔法を使っているファンタジー世界だわ。この世界の言語は判るんだけど、魔法の知識が抜けてるのが残念だ。


「マモリちゃん。この魔法の原理とかわかる?俺も使えるかな?」


『魔法など、非科学的なフィクションになります。ですが、この世界では常識であり、なんらかの法則があるようです。エネルギー源は不明です。』


 殺戮AIもフィクションじゃね?と思いつつ、黙っていたユーイチ。その後も色々と索敵してくれた映像を見せて貰ったりすると、森の中にファンタジーの定番のゴブリンとか居た。


 俺は普通のおっさんだ。ゴブリン退治とか無理そうだから、なんとか平和に暮らせる所を見つけたいね。


「今現在は、周りの偵察はどんな感じでやってるの?」


『広範囲にナノマシンをランダムで配置。情報収集を常に行っています。危険生物などの対応の為、半径100メートルには集中的にナノマシンを配置しています。』


 その後は、身体の動かしたり色々と実践をしてみた。出来なかったバク転とか出来て嬉しかった。

 そして、アニメみたいに木とか飛び移ったりしてみたが、やはり強化されているのが凄いなと思う。


 ナノマシンでの身体の複製を作って『分身の術!』とか、『残念だな!それは残像(本物)だ!!』が出来なかった。何かの制限がある様だとマモリちゃんは言うが、とりあえず手を伸ばしたり、色々と出来たので、調べる事も試すのも楽しいユーイチである。


 こんな機会は普通に生活していた地球では味わえないので、本気で楽しませてもらう事にした。異世界転移とか心熱くなるし!!


 そして漫画やアニメからインスパイヤされて、色々と動きやアクションを真似して動けるようになってみた。


 腕を変化させて、数メートル程伸ばして木に捕まったり、背中から腕を何本も作って、マモリちゃんが操作したり、良い大人が楽しく遊んでいる。全力でジャンプしたら10メートル以上飛び上がれた。


 これは転移して良かったかもしれない。マモリちゃんに感謝だ。


 そんな楽しい実験などの日々を過ごしていくユーイチ。村には近付かず、森の中で暮らし始めて数日が経ち、異世界生活8日目の昼。マモリちゃんから村から人間が近づいて来ている報告を受けた。


「そうか。こっちに来たか。」


 この頃には周りの情報や生活環境。村の中の会話や人間構成なども調べ終わっている。電気やガスのない世界だと知っているので、最近はバーナーなど使わず落ちた枝などを集め、料理など作る様になっていた。


 近づいて来ているのは村の猟師で、俺と同じ歳位の渋めのオッサンであるゴワイルさん。そして高校生位の娘のクリミアさんだ。


 ファンタジーだよな。2人とも髪が赤で目が緑ってさ。ナノマシン君の映像で見てたけど、目の前にいると違和感がある。

 そして美女と野獣のコンビに見える。これで親子らしい。


 服装は大量生産が難しい世の中なのか、村人達は似たような形で、似たような素材の服を着てる人が多い。

 革鎧みたいな物を着てる人が何人か居た。だが、俺の今の格好は、普通の一般的な日本の格好で浮いて見えるだろう。


 村の種族はほぼ全員が人間らしいけど、今は村人全員にナノマシン君が取り付いてるから、個人情報も筒抜けです。

 まぁ安全確認の為仕方がないよね。悪い事には使わないし。


 そんな事を考えていると、ゴワイルはこっちに気付いた様子が見えた。2人の装備は、革鎧っぽい服と弓と短剣。ロープとか色々と持っている。服の色は茶色や緑が多く、革靴を履いている。


 俺は気にせずに座って、コーヒー牛乳を飲む。そしてデブ猫はゴワイルに近付くと、身体をよじ登る仕草をして、頭の上に登ると、ユーイチを見つめる。


 笑っちゃいかん。渋いオッサンの頭の上にアニメキャラのデブ猫が乗っているのって。映像だけのデブ猫だが、なぜここで笑わせに来たんだ!


『ストレスを低下させる為のアクションとなっています。そして話し合いの際には、ストレス低下の為に糖分摂取を勧めます。』


 マモリちゃん。砂糖はこれ以上入れないよ?人と話す為の糖分は、そこまで必要じゃありません。毎日コーヒー牛乳を3杯以上飲めと言われても...。

 そんな事を考えていると、2人は近づいてきて、話しかけてきた。


「近くの村に住んでいるゴワイルと言う。ここの森は村の管轄になってる森でな。人が居た場合は話しを聞く事になっているんだが。」


 ゴワイルさんが話しかけて来た。自分との距離は7m程度。人と話ができる距離で、座っているこっちは手の届かない距離。でもゴワイルさんの弓なら、必中の距離だね。


 ユーイチは椅子に座ったまま、挨拶をする。


「はじめまして。ユーイチと言います。私はノンビリと旅をしている者です。近場に村があると聞いていたので、森の生き物には手を出していませんのでご安心ください。」


 数日前に襲いかかってきた軽トラサイズの猪みたいなヤツがいたのは内緒だ。とりあえず倒してナノマシンで猪は処分してるから大丈夫なはず。


 よく、『ここは我々の森だ!勝手に肉を取るな!』とか言われるのをアニメで観た気がする。男は訝しげな表情を浮かべつつ質問を続ける。


「近くに村があると言うのに、何故ここに居たんだ?こんな森の中に。」


 まぁ正論だよな。だけど答えも準備してある。


「私の雑用をこなす能力が便利で、村や街で生活していると、色々と便利屋として忙しくなります。なので、静かに暮らしたい時は旅に出ているのです。」


 この世界の人型は、何個か魔法を持って生まれている様子である。ある程度の子供から、腕輪を外して魔法を使っている。小さい子はみんな腕輪持ちだ。腕輪をしている子は魔法を使っていない。


「私の力は強化のような物です。試しに足元にある石を取って貰っても?」


 ゴワイルさんは、足元に転がっている石を取らず、後ろを見ずに声をかける。


「クリミア。石を放ってやれ。」


 まぁ警戒している人に目を離すような事はしないよね。クリミアさんは足元の石を取ると、ユーイチに向かって投げてくる。下投げじゃなくて上投げで。


 危ないな!この子!と思いつつ、ユーイチは受け取る。そして目の前で石を握り潰して砂にする。その砂を2人に見せつける。


「こんな力があると、荷運びやら魔物退治の壁役やら色々と便利に使われるんですよ。村を広げるために木を切り倒せ。力があるんだから平気だろ?ってね。

 だから嫌気がさして旅を出ているんです。金が無くなったら村で働いて、金を貯まったら旅に出るって。」


 厳ついおっさん顔なんで、何とも言えないが、石を砕いて見せてから一層厳つく渋い顔になったゴワイルさん。なんだ?と思うユーイチ。


 ゴワイルさんは俺に近付いて話しかける。立ち上がるとユーイチの攻撃範囲になる中に。

 クリミアさんは焦った表情をして、いつでも弓を当てるように構えている。


「色々と大変なんだな。ウチの村にも力の必要な仕事があるんだが、どうだ?少し働かないか?」


 先ずはクリミアさんを注意してくれないかな?なんで話してる時に、弓で狙われなきゃいけないんだ?


「いや。辞めておこう。後ろのお嬢さんに狙われながら仕事の話しをする気も無いし、気持ちよく働けない仕事なんてやりたくもない。」


「クリミア!!!」


 振り向きながらゴワイルさんは怒声を上げる。振り向いてる最中の顔が怖いって。

 あ〜。クリミアちゃん凹んだな。あの表情は。呼び方は子供っぽいのでクリミアちゃんだな。


 怒られたクリミアちゃんは、弓は下に向けたけど、相変わらず持ったままなのね。矢を矢筒に仕舞っただけ良しとするか。


「すまない。話しを聞いて貰ってるのはこちらの方なのに、失礼な対応をしてしまった。」


 赤い頭のつむじが見える。うん。フサフサでハゲなさそう。そしてちゃんと謝れる大人はまぁまともな部類だよな。


「まず言っておくが、働くようなら先に報酬も貰う。報酬の金額交渉なんて面倒な事を長くしたくない。

 1回だけお前達が金額を提示して、それで受けるか受けないか俺が決める。

 再交渉は無し。泣き落としや面倒ごとはゴメンだ。」


 厳つい顔でゴワイルさんは話す。


「村長と相談してくる。俺が決められる事じゃないからな。その時間は貰えるか?」


 そりゃ当然だよね。狩人が村長だったら、死に易いし、い色々と大変だよね。


(マモリちゃん。このゴワイルさんの事を詳しく調べてくれる?この後に誰と話したり、話の内容について。あと人間関係とか。)


(了解しました。)


「まぁノンビリとしてるから、村長に相談して来てくれ。俺は自然の中が好きだから数日はここに居るし、ここでノンビリ暮らしているから。」


 話しを終えると、ゴワイルさんとクリミアちゃんは村へと帰って行った。ゴワイルさんは相変わらずの厳つい顔をしていたが、正直、厄介な事を抱える村の中に行きたくない。


 漫画のように面倒な村に近づいて、人々を助ける勇者のような心も俺は持っていない。だって、ナノマシン君達のお陰で、頼まれる仕事内容も聞いているし。


 まぁいつか現地人との接触は必要になる。恩を売った相手から情報収集する機会だ。なんとかなるだろう。

 そんな事を考えながらコーヒーを飲むのであった。


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やっと村人が出てきました。そして村に行きたがらない主人公。まぁお金無いのに村には行けないよね。って事で仕事を貰ってお金を稼ぐようです。

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