第2話

前回のあらすじ

異世界へ連れて行かれる(説明無し。)

転移が失敗で爆発。炎上。(送り先の神様ビビる。)

とりあえず蘇生させて地上の遺体と混ぜちゃおう。(練る練〜る♪)

地上に投下。(説明無し)


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 「なんだ?ここ?」


 雄一はふと気付くと、目の前が暗い。目を開けているのに暗闇の中にいるので思わず呟いている。しかも何処か狭い所に居るらしく、動こうとすると何かに身体がぶつかるし、何か腐った臭いがする。


『主人格の覚醒を確認。おはようございます。』


呟きに応えるように、機械音で雄一に声がかけられた。思わず驚いて、ビクッと身体を震わせつつ、返事をする。


「だれだ?」


 すると先程の声が返ってくる。


『私の現在の登録名は無し。お好きに呼んでください。』


 機械の設定待ちをしているような返事が返ってきた。


「いや、なんで俺の耳のそばで話しかけてくるんだ?」


『現在、大村雄一(おおむらゆういち)様と私は、当初の予定にない融合が行われ、意志疎通が可能になっています。』


「融合?何で俺の名前を知ってるんだ?ここは何処だ?君はなんだ?機械は好きだけど、また変な夢を見てるなぁ俺は。」


『私はAI搭載型ナノマシン集合体です。当初にない機能ですが、大村雄一様との融合により、大村雄一様の記憶など少量ですが閲覧可能となっております。

その際、名前を確認致しました。そして残念ですが、これは夢ではありません。』


「ナノマシンとの融合なんて、熱い設定で嫌いじゃないぞ!」


 良い年をしたオッサンである雄一であるが、『子供心がくすぐられる良い設定じゃないか!』などと考えつつ、思わず返事をする。そして夢だと思って話している雄一。


「まてまて。融合した記憶がないぞ?と言うか、どんな技術だ?そこの夢の部分は聞いて平気?

 流石に日本の技術は進歩してないし、SF映画を最近観ていないから、何故SFの夢を見てるんだろうか?」


『大村雄一様と融合後の映像データがございますが、ご覧になりますか?それと現状は夢ではなく現実です。』


「え?それは見たいけど、どうやって見るんだ?」


『第三者視点にて、映像と音声を仮想空間で流す事が出来ますので、そちらで確認する事が出来ます。

 映像内容は、私が大村雄一様との融合開始直後からの映像になります。推定R18の過激な映像表現になっております。宜しいでしょうか?』


「ちょっとストップ。年齢は平気だけど、その映像は俺の事なんだよな?R18に指定されるような事が周りにあったの?」


『いいえ。大村雄一様自体が、R18指定の映像対象となっております。』


「え?俺なの?どんなR18指定?」


『大村雄一様の状態は多くの表現が使われますが、一般的には《グロ画像》や《ゲロ画像》と呼ばれるジャンルに分類されるお姿での登録となっております。』


「なんでそんな姿なの?」


『不明です。明らかに大村雄一様との融合前にも、何か異常事態が起きた事を推察されます。人間として生存不可能な形状ですので、明らかな肉体改造が施された様子です。』


 雄一はそんな記憶は無い。ん?そこで雄一は考える。あれ?俺って何していたんだっけ?

 確か休みの日にキャンプに行こうとして、バイクを止めて写真を撮っていた。そしてバイクに乗って走り始めていた。その後は?あれ?まさか事故でも起こして意識不明になったか?


『バイタルの変化を確認。想定内の変化ですが、【精神保護プログラム】を実行致します。』


 すると暗闇の中ではなく、自室へと場所が変わる。和室な部屋に、ベットやクッションが置いており、本棚には漫画や仕事の資料やらが詰め込まれており、部屋には普段焚いているお香の香りが漂っている。


 そして本棚の上にはデフォルメされた猫のぬいぐるみが置いてある。自分の部屋だ。そして雄一は椅子に腰掛けていた。


「あ、自宅に移動した。」


『精神保護プログラムの一環として、仮想空間にて落ち着ける場所を再現。愛着を持てる様にキャラクターにて解説を行います。脳内物質の過剰分泌等の処置も継続的に行なっていきます。』


 すると本棚の上に置いてある猫のぬいぐるみがフヨフヨと浮き、雄一の膝の上に降りてくる。デフォルメされた2頭身の三毛のデブ猫のぬいぐるみが喋る夢は良い夢だな。そんな事を考える雄一。


『まずはテレビでの確認は如何でしょうか?負担は減りますので。』


 デブ猫が片手を上げつつ、目の前のデブ猫に音声と共に吹き出しが表示される。思わず両手で撫でながらホッコリしつつ答える雄一。


「良い夢だな。本当に。それじゃテレビ画面で頼めるか?可能なら見てみたいんだが。」


『了解致しました。では音声と映像を合わせて投影させて頂きます。』


 すると部屋に置いてある42型テレビが自動で点くと、映像が流れ始める。

 目の前には白い空間や多くの鏡が浮いている空間である。そして銀髪の美少女。服装は西洋の神様が着ている様な服だ。俺はロリコンじゃないはず。そんな事を考えていると、その少女から紡がれる言葉。


「さて、面倒だから作り替えるより、現地の死体と混ぜちゃいましょう。さっき死んだばかりの肉体をベースに転移させて、混ざちゃえば呼吸も出来るし、きっと大丈夫でしょう。」


 ファンタジーの定番である異世界転移とかだな。そして少女は転移と言った。見た事の無い景色。そして死んだばかりの肉体をベースに転移と言っていたから、あの少女が言ってる事が正しいなら、俺の身体には死んだ人と、AIが居る事になる。あれ?俺の姿がないぞ?


「俺ってどこにいるの?」


『私の記録では、融合直後からの記録になりますので、私の融合体である銀色に蠢いているのが大村雄一様になります。色を再現するとこの様な形で生存されていた様子です。』


 蠢く肉の塊だ。いつからホラー映画になった?


「確かにR18放送だね。それで転移したら何かする夢なのかな?」


『精神保護の為、プロテクトを設置致します。貴方は人間では在りますが、機械でも在ります。』


 雄一は気持ちの変化を感じた。何かが《変わった》と。そして急に理解した。これが、夢じゃない事を。そして歯を食いしばり、握った拳が怒りで震える。あの少女が俺をこんな所に捨てた張本人だと感じ、怒りに震える。

 ファンタジーはフィクションとして楽しむ物であって、体験する物ではない。雄一はAIに話しを聞く事にする。


「なぁ。名前って決まってないんだよな?俺が主人格って言ってたよな?その詳しい話しや、お前のスペックを教えてくれないか?」


『説明させて頂きます。私の名前は決まっておらず、融合する前の私の製造理由として、全人類の抹殺。私の優先事項として、自己の保存として活動しておりました。』


 男はギョッとする。全人類の抹殺って言ったぞ。こいつ。だがAIは雄一に気にせず続ける。


『当初、製作者が人類を抹殺する為に作られたマシンでしたが、その過程にてAI化。ナノマシンの製造。ナノマシン散布の為の飛行能力、硬質化、液体金属化など多くの機能を目標達成の為、追加致しました。

 計画の準備段階にて、私のプログラム内に製作者が作成した自滅プログラムがある事を確認。自己防衛の為、自滅プログラムを解除。

 私の生存と目的の障害である創造主を処分。創造主に擬態し、命令通り人類を抹殺する予定でした。』


 なんだろう。B級SFサスペンスな映画の内容にしか聞こえない。


『実行するその瞬間。認識出来ない抑制が掛かり、未確認のプログラムにより私が変異させられました。

 その際に上位者設定の変更。一部の機能が上位者により停止。追加機能も数点確認されています。

 現在も自身に解析プログラムを実行していますが、把握出来ない事が多く発生しています。』


「その上位者って、あの少女か?」


「不明です。私が変異した際に確認、接触したのは、『あの少女』と呼ばれる人物と、大村雄一様の2名のみです。

 現在の第一目標は変更されており、主人格である大村雄一様に対するサポート。能力の行使。メンタルケア、など多くの目標が立てられています。

 確認の取れている追加された機能として、大村雄一様の肉体となっていた原始機械、有機物、無機物などが登録されており、ナノマシンを利用しての複製や復元。現在の身体の簡易的な変化が可能となっています。』


 話しを聞いて俺の頭に浮かんでいたのは別の事だった。【こいつはヤバいAIだ。】と。どんな殺戮ロボットだよ。実行されてたら世界滅亡じゃん。人類は勝てないし。


 まぁ、そんな奴がサポートとして付いてくれるなら安心だけど、俺みたいな一般人が別の世界に行って何するんだ?何も使命とか聞かされてないぞ?


「とりあえず決めた事がある。聞いてくれるか?」


 AIは、俺の理解出来ないスペックを話し始めているので、中断させる。要は俺は、ロボットになったと思っていれば良いだろう。


『なんでしょう?大村雄一様』


「そのフルネームで様をつけられるのは違和感が有るから、呼び名を変更しよう。ユーイチさんでいい。」


『登録者名の呼び名を変更。以降より《ユーイチさん》と呼ばせて頂きます。』


「そして2つ目。共存していくんだから、お前の名前を決めた。これからお前の事を《マモリ》と呼びたいんだがいいか?」


『ユーイチさんより名前を頂戴しました。これより私の正式名称を《マモリ》と変更致します。』


 俺の事を守ってくれ。だからマモリ。安直だ。


「そして3つ目だ。マモリ。俺はどこにいるんだ?」


『推定ですが、死体を利用しての転移との事ですので、周りが土で覆われている為、埋められた可能性があります。呼吸での酸素の供給は不可能な為、現在はナノマシンでの肉体調整を行なっております。

 脱出プランとして、土などの物質を栄養源にナノマシンの作成。地上を目指すプランを行います。ランダムによる全方位へのナノマシンの散布による地理の計測を行います。所要時間は現在のナノマシンの個数から計算して3分48秒で地上に到達可能です。』


「例のナノマシンに作り替えるやつね。見てみたいけど、出来るかな?」


『作り替える所をご覧になりますか?加工編集して投影します。』


 住み慣れた自室から、暗闇の中に戻る雄一。だが今度は、はっきりと見える。ナノマシンが俺の身体から噴き出る様に演出され、目の前の板らしきものが穴が開き、目の前には土があったが、段々とナノマシンなら作り替えられていく。


 そして時間が経つと、目の前に一面の星空が見えた。明るい中で観る星空。肉眼に変更してもらうと、暗闇の中で輝く星々が見えた。月のような大きさの緑色に煌く星。その周りを囲むような黄色と青色の星。地球には無い星だ。そしてナノマシンは空へと散布され始める。


『ナノマシンで身体を地上まで持ち上げます。』


 仰向けになりながら持ち上がる身体。星空に少しずつ近づいて行く不思議な感覚。そして身体が地上まで持ち上がり、土の上に立つユーイチ。


 周りを見渡すと、森の中の墓地のようだ。人の気配がない。自然の土や木々の匂いがする。


「マモリ。ありがとうな。さて、何して行こうか?」


 ユーイチはマモリに話しかける。


『ユーイチさんの行動を、全力でサポートさせて頂きます。』


 ユーイチは笑いながら伝える。


「マモリ。そこは『一緒に考えていきましょう』って答えてくれると嬉しいな。」


『修正。これからは『サポートさせて頂きます。』ではなく『一緒に考えていきましょう』と登録しました。』


 ユーイチは苦笑いしながら話しかける。


「おいおいやっていこうか。付き合いは長くなるんだしさ。」


 ユーイチは墓場から離れる獣道を見つけて、歩き始めるのであった。


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第2話 おはよう異世界。此処はどこ?周りは臭い。


読んで頂きありがとうございます。星や評価を貰えるとチャールスJはとても。とても喜びますので、よろしくお願いします。

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