愛しのキャロル【私のガソリン×土埃香る×懸想】

 感情エネルギー。

 数十年前には発見されていたらしいけれど、ここ10年で急速に普及した。それまでの電気や石油エネルギーの内、ほぼ9割は感情エネルギーにとって代わってしまった。


 私には、詳しい原理は全く分からないのだけれど、感情の落差を使うらしい。昔の漫画やアニメで出て来そうな話だ。


「ふぅー…」

 その感情エネルギーのおかげで、インフラがまだ整っていない火星でも、安心して暮らすことが出来る。

 今日は、ドライブがてら、食糧の買い出しに来た。

 綺麗な青空。

 ここ最近は、ずっとこの薄い青が保たれている。

 重力装置の不調なんかで、いつも火星用スペーススーツが手放せなかった頃が懐かしい。

 ただ、土埃が立ちやすいは変わらない…。

 愛車を覆う砂埃に眉をひそめ、急ぎ足でスーパーに向かった。

 帰ったら、綺麗に洗ってあげなきゃ…。


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 広い荒野を走り抜けるのは、いつも気持ちを晴れやかにする。それと、同時に過去の様々な情景が思い起こされ、走馬灯のように流れてゆく。失恋、裏切り、別れ…。

 それらは、全て今の私の源となり、私を前々へと推し進める原動力となっている。

 だから、それを否定は出来ないけれど、出来るなら、避けて進みたい。いくら近道だとしても、危険な道は避けたいもの。

 …だから。

 私はこの恋を胸に潜めて、前に進む。向かい合う刻が来るなら、それまでは…。


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 カーラジオを付けると、機械愛護団体のデモ活動の話を取り上げている。

 感情エネルギーが一般的になった現在でも、“心の在処”について理解しているのは、専門分野の技術者と研究者たちに限られていた。

 私自身も分かっていない。

 けれど、もうこれを無しには生活は出来ない。

 AIにチャンネルを変えてもらって、家路を急いだ。

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