霧のロンドン埋蔵金事件(のその後)【街の灯×探偵×黄金】

 真っ暗な夜道をコツコツコツと足音が響く。

 濃い霧に包まれたその街は、街灯程度では照らせない。

 でも、名探偵の私にかかれば…アイタッ!


「ヘイ!ミスター!

 夜道で何のポーズ決めてるんですか?」


 いいじゃない!たまには自分に酔っても!

 珍しくちゃんと事件を解決出来たんだもんっ!


「探偵なんだから、事件を解決して当然でしょうよ」


 いつも通り冷たい助手くん…。

 ちょっとくらい褒めてくれてもいいんだよ!僕は褒めたら伸びるタイプなので!


「あー…私、残業はしない主義なのでー」


 えぇ…あぁ、そう。お疲れ様ぁ。ありがとね。

 はぁ…夜は冷えるなぁ…。あははは……。


 ふと前を見ると、灯りの洩れる一軒の露店の八百屋。

 こんな時間に開けている怪しさよりも、一人ぼっちの寂しさが上回り、蛾のように惹きつけられる。

 そこに並ぶは、じゃがいもの山。


「いやあ、いっぱい採れたのに全然売れなくてねぇ」

 歯抜けでニッコリするお爺さんの笑顔につられて何となく財布が緩む。


 賞賛なくてもポテトがあるだけ、まぁいいか…。


 探偵は黄金ならぬ、黄土色の山を見つめて、目を細めた。

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