第23話 扉の中

「私丈さんが連さんのお仲間が迷ってないか心配なので、少し様子を見てきます」


 そう言って女の研究員がその場を離れた。


「大丈夫なんですか?」


 俺はもう一人の男の研究員に聞いた。


「大丈夫だと思いますよ、あれでもあの人はランク6強なので」


 男の研究員が言う。


 ランク6強なら大抵の奴なら対処できるだろう。


 俺はそう思った。


 数分後、女の研究員が戻って来た。


「悪い悪い遅くなった」


 丈も一緒だ。


「それでは中に入りましょうか」


 男の研究員はそう言って、研究室の扉を開ける。


中には大量の資料や、何かの作りかけのパーツが置いてあった。


「貴方が何処でそのロボットの事を知ったのかは分かりませんが、そのロボットはエリウス先生が発案した『楽園』の作業用のロボットです」


 女の研究員が、近くにあった資料を見せる。


「このロボットは生き物の体をベースに作られていて、少しずつ改良を重ねていき、体を構成するパーツのほとんどを機械にしてあります」


 女の研究員が言う。


「ですが体の改良を繰り返す内に、だんだん制御が難しくなり、危険であると判断されました」


 男の研究員が言う。


「この鳥に付いては何か知っていますか?」


 俺が俺の頭にとまっている不死鳥を指さす。


「不死鳥ですか?珍しいですね。ですが私達は知りません、一体何処で見つけたんですか?」


 男の研究員が言う。


 思っていたより反応が薄い。


「それは教えられません」


 俺が答える。


「そうですか、残念です」


 男の研究員が言った。


 俺は丈と一緒に辺りにある資料を確認する。


 特に気になる物は無い。


 本当にただの失敗作だったらしい。


「丈、ここにある資料やあの人達が言ってる事に嘘は無いか?」


 俺は念のため丈に確認する。


「大丈夫だ、嘘を言っている感じはしない」


 丈が答える。


「すみません、ここにはもう他に研究室は無いんですか?」


 俺が二人に聞く。


「他の研究室ですか?ここ以外にはありませんね」


 女の研究員が答える。


「そうですか」


 思ってたよりあっけなかった。


 何かここにあるかと思ったが、ここには何もないようだ。


 丈も何も言って来ない。


「分かりました、いったん戻りましょう。ここにある死体はまた戻って来た時に処理しましょう」


 俺が提案し、三人が頷く。


「それでは私が一番近い出口に案内しますね」


 女の研究員がそう言って、俺を誘導する。


「疲れたな」


 俺は女の人に付いて行きながら、誰にも聞こえない小さな声で言った。


 俺は正直、こんな事するのは好きじゃない。


 誰かに指示されるのも、誰かに指示するのも、ほどほどがいい。


 最近はずっと誰かに指示を出して、皆に合わせて行動している。


 疲れた。


 俺は出来るだけ自由に生活したかった。


 でもずっと自由だといずれ飽きる。


 だから学校に行き、友達と遊び、誰かを助けたりする。


 そうすることで、より自由を満喫することが出来る。


 このままだと俺はずっと何かに縛られたままだ。


 早くこの現状をどうにかして、この生活から抜け出したい。


 俺はそんなことを思いながらも、女の人に付いて行った。


 出口に着く。


 正直俺の『異能』で移動しても良かったが、せっかく案内してもらえるのだから道を覚えるついでに付いて行った。


「少し待っていて下さい」


 俺が研究員の二人に言う。


 丈には念のため残ってもらった。


俺は俺がここに来た時に使った魔法陣の所移動した。


 何故もの魔法陣だけ破壊されていなかったのか気になったからだ。


 俺は魔法陣をまじまじと見る。


 俺は魔法陣を見た後、試しに魔力を込めて魔法陣を発動させようとする。


「・・・・・」


 なんの変化も無い。


 やはり、あそこにあった魔法陣は一方通行になっているようだ。


 しかし、比奈が使った魔法陣は戻って来る事が出来ていた。


 おそらく教頭や校長が、外部から内部への侵入が可能なようにあの魔法陣に細工をしていたのだろう。


 だからエリウス先生は、学校の中からしか使えないあの魔法陣は破壊しなかったのだろう。


 俺は、その辺の石を拾って爆弾にし、目の前にある魔法陣を爆破して破壊した。


 たとえ一方通行だとしても、念のため元々あった魔法陣は全て破壊する。


 俺は新しい魔法陣を少し離れた場所に書き、三人が待つ場所へ向かった。


「すみません、お待たせしました」


 俺が研究員の二人に言う。


「お二人はここに外と繋がっている、出入り口がある場所を知っていますか?」


 俺が二人に聞く


 「ああそれなら研究施設の中に、実験用と移動用の人工のゲートがありますよ」


 男の研究員が言う。


「その場所を教えて下さい、悪用を防ぐために破壊します」


 俺が二人に頼む。


「分かりました案内します」


 男の研究員が言う。


 研究施設の中をしばらく進む。


「もうすぐですよ、ほらそこです」


 男の研究員が前にある扉を指さす。


 入口に何か書いてあるが陰になっていてよく見えない。


 女の人は、扉を開けて中に入って行く。


 俺はそれに続いた。


 扉の中は何故か暗かった。


「ゲートはどこですか?」


 俺は周りに聞く。


 辺りは真っ暗で何も見えない。


「こっちですよ」


 女の研究員の声がする。


 俺は何も見えない場所を手探りで進んだ。


 こんなことなら、もっとまじめに魔力感知の練習をするべきだった。


 俺は声がした場所に着いた。


 その時部屋に明かりが点く。


 女の研究員は何かの扉の前に立っている。


「この中にゲートがあります」


 男の研究員が言う。


 俺は丈の方に近づく。


「嘘は無いか?」


「ああ、嘘は言ってない」


 丈が答える。

 

 俺は扉の前に立って扉を開ける。


「こ、これは!」 


 目の前にあった物はゲートではなく、空間の歪だった。


 それも、通常の青い歪では無く、見たことが無い赤い歪だった。


何でこんな所に?人口物か?


 そう思った瞬間・・・


 ドン


 誰かが俺を突き飛ばす。


 俺は、歪の中に飲み込まれた。

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異能が全ての世界で復讐劇 美海 あきら @13413988901016

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