第22話 第七研究室
俺と丈が建物の中に入る。
辺りは静まり帰っている。
「うっ」
丈が顔をしかめる。
ここには死体があり、死体や血は異様な匂いを放っている。
「見た感じ誰も居ないな、二人で別れてくまなく探すぞ」
俺はそう言って、入口で二手に分かれた。
「荒れてるなー」
俺はそう言いながら、辺りに散らばっている資料を漁る。
特に気になる物は無い。
資料や機械類も血で汚れているが、中にはまだ使えそうな物もある。
入口からそう遠くない場所には、確か学生用の研究室があったはずだ。
俺は地図が無いか、辺りを見渡す。
襲撃にあった時のままになっている様で、明かりはついたままだ。
「誰か居るかー?」
俺は定期的に呼びかけながら探索する。
ここには死体がある為、もしかしたら生き残りがいるかもしれない。
俺は建物の地図を見つける。
「ここは第二研究室か」
俺が呟く。
俺が今いる所も学生がよく使っている場所だ。
全部で第六研究室まであるらしい。
プラナは、カルボが入っていた箱を学生が使っている研究室で見たと言っていたが、正確な場所も分からない上、学生だけが使っていたとも限らない。
俺は見落としが無いようにくまなく探す。
「ギィー」
その時何処からか物音がした。
「丈か?」
俺が呼びかけるが返事が無い。
物音がしたのは、地図によると室内プールとトレーニングジムがある部屋の扉の向こうだ。
「誰かいるのか?」
音がした場所に俺が呼びかける。
「五秒以内に出てこないなら攻撃をする、いいな」
俺はそう言ってカウントを始める。
「5、4、3、2、」
「ガチャ」
扉が開く。
そこからは、数人の研究員のような人物が出て来た。
「こ、攻撃しないでください」
手前にいる女の研究員が言う。
「何故直ぐに出てこなかった?」
俺が『空間』から取り出した剣を突きつけて言う。
「も、もしかしたら、襲撃者の残党かと思って」
男の研究員が言う。
出て来た研究員は全部で四人。
男が三人と、女が一人だ。
「どうやって今まで隠れていたんだ?」
俺が立て続けに質問する。
「こ、この中の部屋の物陰にずっと隠れていて」
最初に話していた女の研究員が言う。
「中を見せろ」
俺はそう言って、研究員達に剣を突きつけながら誘導した。
中には何人かの人間の死体があった。
俺は辺りに襲撃者らしき人間の死体の他に、魔人の死体がある事に気が付いた。
俺はその死体に近づく。
「この襲撃者は誰が殺した?」
俺が研究員に聞く。
「そ、そいつは、他の襲撃者の攻撃をくらって死にました」
男の研究員が言う。
最初に襲撃を始めたのは、普通の人間の襲撃者だった。
しかし、少し遅れて魔人が襲撃に加わった。
人間の襲撃者程度なら、『楽園』で生活している人間なら大抵は問題無いだろう。
ただ不意打ちだった上、中にはかなりの手練れも居たため被害が大きくなった。
俺は再び辺りを見渡す。
明らかに他の場所よりも死体の数が多い。
「全員同じ場所に隠れていたんですか?」
俺が研究員達の問う。
「い、いえ。私は一人で隠れていましたが、他の方々は分かりません」
女の研究員が言う。
「他の人は、」
俺が台詞を途中まで言った時にいきなり、二人の襲撃者が攻撃してきた。
「ヴヴヴヴヴヴヴ」
明らかに人間ではない。
「魔人か」
俺はそう言って、手に持っていた剣で攻撃する。
しかし二人とも俺の攻撃を難なくかわす。
「ギスゼライと同じレベルか?」
俺が言う。
あいつ自分で言ってたほど、強くなかったのかもしれない。
(優秀なのは『異能』だけか)
そんなことを思いながら、俺は二人の攻撃をかわす。
「きゃーーー!」
女の研究員が攻撃されそうになる。
「フン!」
俺は適当な石を投げて、それを槍にして魔人を攻撃する。
「ゴバァ」
魔人が血反吐を吐いて倒れる。
その隙に、もう一人の魔人が俺を攻撃する。
俺はその攻撃をギリギリで避けて、剣げカウンターをする。
剣は魔人の頭を切り裂き、魔人は動かなくなる。
「ふぅ」
俺は一息をつく。
「こいつら何も話さないから、少し怪しんでいたが魔人だったか」
俺は独り言を言いながら、死体から魔石と『核』を回収する。
「怪我はありませんか?」
俺が残った二人の研究員に話しかける。
「は、はい。おかげ様で」
男の研究員が言う。
「す、すみません。あの二人に口止めされていて」
女の研究員が言う。
「そういう事ですか。ここの死体は大方仲間割れをしたんでしょう」
俺は倒した魔人が持っていた『核』を見ながら言う。
周りにある死体からは、『核』も魔石も全て抜き取られていた。
「私は今、この研究施設を探索ているのですが、建物の作りが複雑で困っているんです。道案内を頼めますか?」
俺が二人の研究員に聞く。
「は、はい、構いませんが、一体ここで何があったんですか?」
研究員の女人が聞いてくる。
俺は大まかに襲撃があった日の事を伝えた。
「そんなことがあったんですか。分かりました、何処へ案内すればいいんですか?」
男の研究員が俺に言う。
「理解が早い方で助かります。それでは最近、この研究施設で小型のロボットが作られていたのは知っていますか?そのロボットが作られていた部屋の場所が知りたいのですが」
俺が二人に聞く。
「それなら私が知っています、私に付いて来て下さい」
そう言って女の研究員は俺を誘導する。
「ここです」
目的の研究室があった場所は、地下の頑丈な扉に塞がれた第七研究室だった。
「ここにあるのは第六研究室までじゃ無かったんですか?」
俺が二人に聞く。
「いえ、ここにはそれ以上の研究室があります。一般人が入室可能な場所は、第六研究室までですが」
男の研究院が言う。
俺は納得して丈にここに来るように、連絡をとった。
後は丈がここに来るのを待つだけだ。
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