第21話 研究施設

「外に出るのか?」


 『楽園』の出口に付いた俺に丈が聞く。


「ああ、ゲートを使っても『楽園』に津繋がってるとは限らないからな。それにエリウス先生の『異能』で場所が移動している可能性があるなら、同じ場所に固まっている可能性もある」


 俺はそう言って、『楽園』の外に出た。


「おい、また空間の歪に巻き込まれたりしないよな?」


 丈が不安げに聞いてくる。


「大丈夫だ、問題無い」


「それ本当に大丈夫か?」


 丈がさっきより心配してくる。


「まあ肉眼でも目視可能だから、気を付けてさえいれば大丈夫だ」


 丈がホットする。


「いきなり歪が現れたりしなければな」


 俺がボソッと言う。


「おい、今何か不安な言葉が」


「気のせいだ」


 俺はそう言って、周りを見渡す。


 周りにはかなりの数のコロニーがある。


「魔力のコントロールに自信はあるか?自身が無いなら俺に捕まっとけ」


 俺が丈に聞く。


 コロニーの周りには、コロニーの中心に向かって重力が働いているが、少し離れると重力は全く働いていない。


 なので重力が無い場所では、自分の魔力をコントロールして飛ぶしかない。


「少しは自信があるが、不安だから捕まらせてくれ」


 丈はそう言って、俺の腕をつ掴む。


「しっかり捕まってろよ」


 俺はそう言って、思いっきりジャンプした。


 あまり遠くない距離の移動は、コロニーの重力に任せて移動した方が楽だ。


 丈は少しずれ落ちそうになっていたが、問題無く反対側のコロニーに付いた。


「魔力のコントロール練習はやっておいた方がいいぞ、コロニーの外に出た時以外にも色々と役に立つ」


 俺はそう言って、コロニーの岩盤に手を置く。


「にしてもどうやって入るんだ?まさか入口を探すのか?」


 丈が俺に聞く。


「こうやって入るんだよ」


「え?」


俺はそう言って丈の肩を掴む。


 俺は丈と一緒にコロニーの中に『空間』で移動した。


「成功したな」


 俺が言う。


「どうやって入ったんだ?」


「足元を見ろ、壊れた転移の魔法陣があるだろう?それを目印にして、空間の座標を合わせたんだよ」


 俺はコロニーの中を見渡す。


「ここは農場だな、かなり荒れてはいるがまだ使えそうな物がある」


 俺は近くの建物に入る。


「見ろよ、小麦の山だ。こっちには苗まである」


 丈も少し遅れて入ってくる。


「お前誰がいるかも分からないのに、よく平然と入って行けるな」


 丈が俺に言う。


「確かに誰かが潜んでる可能性もあるが、気にしててら切りがないからな」


 俺はそう言って建物を出る。


「ここの探索は終了だ、前からあった転移の魔法陣は既に破壊してあるから、新し魔法陣を書いてから移動するぞ」


 俺は魔法陣を掻く。


 その間に丈には軽く周りに何か無いか探索してもらった。


「ブー、ブー、ブー」


 俺が持っていた通信魔具に着信が入る。


 俺は魔具を手に取った。


「誰だ?」


「比奈だよ、今カルボと一緒に学校の地下にいるんだけど、そこにあった転移用の魔法陣を発動したら、建物が沢山ある場所に繋がってたんだよ」


「建物が沢山?」


 俺は、魔法陣を掻く手を止めて話を聞いた。


「うん、でもここも襲撃に会ったみたいで建物が壊されてる」


「分かった、直ぐに行く」


 襲撃にあった建物があるって事は、『楽園』の敷地を繋ぐ魔法陣かもしれない。


 俺は急いで魔法陣を完成させる。


「おい丈、用事が出来た。急いで学校に戻るぞ」


 俺は丈と一緒に学校のゲートへ向かった。


 学校の玄関の辺りに比奈が立っている。


「比奈、お前が言っていた魔法陣は何処だ?」


「こっちだよ」


 俺と丈は比奈とカルボに付いて行った。


 比奈達は、崩れた床から地下へ向かった。


「これだよ」


 比奈は目の前の魔法陣を指さす。


「これは、」


 俺が言う。


 そこには複数の魔法陣があった。


「ここにあるのは、学校の一部の者のみが使っていた魔法陣だ」


 俺は魔法陣を見ながら言う。


「何でこんなと所に魔法陣があるのにゃ?」


 比奈が俺に聞く。


「これは全部『楽園』の敷地の何処かに繋がっている魔法陣だ、学校から移動するときに移動を楽にする為のな」


 元々『楽園』と繋がっているゲート以外は、襲撃防止の為に全て使えない用にしてある。


 なので、『楽園』ではあちこちに転移用の魔法陣が用意してある。


 でもさすがに何処にでも転移出来たら、色々とマズイ事が多いため、学校の地下に侵入されたら困る場所の魔法陣が用意されている。


「この魔法陣があれば、探索の手間が省ける。ありがとうな、比奈」


 褒められた比奈は、嬉しそうにしている。


 襲撃の時に建物が壊されて、この魔法陣も破壊されているかと思ったが、ここだけは破壊されなかったらしい。


「じゃ、じゃあ私は瓦礫の片づけがあるから」


 比奈はそう言って上に上がって行った。


 俺は魔法陣を一つ一つ見て回る。


 重要な場所に繋がる魔法陣もあるが、普通の町に繋がる魔法陣もある為、どれが目的の魔法陣か探さないといけない。


「あった、これだ」


 俺は目的の魔法陣を見つける。


 何でエリウス先生が、ここの魔法陣だけ破壊せずに残していたのかは分からないが、罠では無い事を祈ろう。


「丈、準備は良いか?」


「準備って言っても、何も準備する事無いだろ」


「まあな」


 俺はそう言って魔法陣を発動した。


「ビンゴ」


 俺と丈は、いかにもな雰囲気を醸し出す建物の近くに転移した。


 あまり奥まで言った事は無いが、何度か来た事がある為良くわかる。


「これが、目的の場所か?」


 丈が俺に聞く。


「ああそうだ。あ、一応言っておくが、普通にお前よりも『ランク』が高い生き物とかいる可能性あるからな」


 俺の一言に丈が顔を引きつらせる。


「さあ行くぞ!」


 俺はそう言って建物の中へ向かった。


 

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