第19話 衣・食・住

 これはおかしい、絶対におかしい。


 俺はカルボを見ながら思った。


 こんな化け物を景品にするはずがない。


 じゃあ一体何で、あんな所にこんな危険な奴が置いてあったんだ?


 俺は疑問を抱きながら、カルボが入っていた箱を取り出した。


「うーん」


 俺は唸る。


 見た目は何の変哲もない普通のゲージだ。


 しかし強度が以上なまでに高い。


 俺は箱の底を見る。


「あ」


 俺は思わず声を上げる。


「失敗作、開封厳禁」


 箱の裏にはそう書いてあった。


 俺の声に反応して、プラナが俺に近づく。


「おいおい、それあのロボットが入ってた箱か?」


 プラナが俺に聞く。


「ああそうだ、何かの失敗作らしい」


 プラナが箱を手に持つ。


「この箱は、『楽園』の研究室で使われている箱と同じ奴だな。多分あのロボットは楽園で作られた物だ」


 プラナが言う。


「研究室?何でお前がそんなことを知ってるんだ?」


「俺は生徒会長だぞ?研究室を使って活動している生徒がいたから、そこの見回りの時に見かけたんだ」


「なるほど」


 一応は生徒会らしい活動をしていたらしい。


 考えている事が顔に出てのか、プラナに睨まれる。


「分かった、後で研究室を探してみよう。何かが分かるかもしれないからな」


 俺はプラナにそう言って、とりあえず飼育小屋がある場所に皆で戻った。


「それじゃあ、今後の活動について説明する。俺達が生きてる事を知っている者は、恐らく今は一人も居ない。だから、再度襲撃される可能性はかなり低い。襲撃の目的だった『核』ももう無いからな」


 皆が頷く。


「今の俺達に必要な物は、衣・食・住の充実。今のままでも、しばらくは生活できるだろうが、このままだと精神的に疲れるし、ストレスも溜まる。とにかく今は、俺達だけでここの管理をして学校があるコロニーは、他の生存者と一緒に少しずつ復興させていく」


 セルシウスが手を上げる。


「役割の分担や、細かな活動内容はどうするの?」


 セルシウスが俺に聞く。


「その辺りはもう考えてある。とりあえず、俺達以外の生存者はプラナに任せようと思う。農場の管理は、イルファが適任だろう。比奈とセルシウスは辺りの探索をしつつ、他の生存者の手伝いをしてくれ。俺と丈はどうなっているのか分からない『楽園』の探索を行う。異論は無いか?」


 俺が皆に聞く。


 比奈が手を上げる。


「建物はどうするのかにゃ?まだ未完成の建物もあるし、今のままじゃ足りないと思うけど」


 比奈が言う。


「全くその通りだ、今の所建物に関する事はどうしようもない。俺がいる時に少しずつ完成させるしかない」


 俺が言う。


 イルファが手を上げる。


「あ、あの、カルボは使えないでしょうか?こ、この子はよく働きますし、何か手伝える事があると、お、思います」


 皆がカルボを見る。


「マスターがそうおっしゃるのなら、私はそれに従います」


 カルボが答える。


「ありがとう、助かるよ。じゃあ飼育小屋の周辺と、学校の周辺の管理を任せてもいいか?建物の建設や、瓦礫の片づけをしてほしい」


「了解しました」


 カルボが答える。


 本当に優秀な奴だ、これなら安心して『楽園』探索が出来る。


「それじゃあ話し合いはここまでにして、各自自由に休んでくれ。俺が建築したその辺の家を使ってくれ、もう暗くなる時間帯だ」


 コロニーの中は、天井が周期的に発光したり、暗くなったりする。


 俺は皆が男女別に家に入って行く中、イルファに付いて行くカルボを引き留めた。


「何か御用でしょうか?」


「これを渡しておこうと思ってな」


 俺は、ギスゼライ(襲撃者)を殺した時に手に入れた『核』をカルボに渡した。


「その『核』には『創造』の『異能』が入ってる。安心しろ、一緒に入っていた他の『異能』は取り除いてある」


 カルボが『核』を眺める。


「確かに。ですが何故私にこれを?」


 カルボが俺に聞く。


「これがあれば作業の効率が上がるだろう?」


 俺が答える。


「なるほど、お気遣い感謝します」


 カルボはそう言って、家の中に入っていった。


 カルボならあれを有効活用してくれるだろう。


 俺は後ろを振り向き、男性陣が居る家へ向かって中で眠った。


「うーん」


 俺は起きて早々、外から音がする事に気が付いた。


 俺は窓から外を眺める。


 外ではカルボが何かの作業をしていた。


「あいつ夜通しで作業してたのか?」


 俺はそう言った後、服を着て外に出た。


 着替えが無かったので、昨日の夜は上着を脱いで寝た。


「よおカルボ、夜も寝ないでずっと作業か?」


 俺がカルボに話かける。


「おはようございます。私に睡眠は必要ありません」


 カルボはそれだけ言うと、作業に戻った。


 どうやら、飼育小屋の細かい仕上げをしているらしい。


「何か増えてるな」


 俺が呟く。


 昨日の時点よりも、人型カルボの数が増えていた。


 俺は俺が寝ていた家よりも大きい家へ向かった。


 起きた奴がいるかもしれない。


「誰かいるかー?」


 俺が中に入ると、既に俺と比奈以外のメンバーがそろって食事をしていた。


「あ、連君おはよう」


 セルシウスが挨拶をする。


「おはよー」


 他の奴も挨拶をする。


「おい、一体どうなってんだ?ここに食料なんて用意してなかっただろ?」


 俺が椅子に座りながら聞く。


 するとカルボが俺の前に朝食を置いた。


「カルボが昨日の内に用意して、俺達が起き始める時間に料理してくれたんだ」


 既に食事を済ませた丈が答える。


 朝食のメニューは、目玉焼きと何かの肉と果物だ。


「凄いな」


 俺が関心する。


「おはよー」


 遅れて起きた比奈が、家に入って来た。

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