第17話 飼育小屋
「まずは食料源の確保が最優先だ。とりあえず食べられそうなものを集めるぞ」
俺が四人に指示を出す。
「一つ質問なんだが、俺達だけでやる必要があるのか?」
プラナが俺に聞いてくる。
「良い質問だな、よく聞いておけ。今俺達は行き場に困っている人達を助けた、その人達が誰かも分からないのにだ」
四人が首を傾げる。
「あの人達の為に俺達が動けば、あの人達は俺達に恩義を感じるだろ?そうすれば後々指示を出したときに反抗する人が少なくなる。それに、あの人達の中に襲撃者が潜んでるかもしれないからな」
「なるほど」
四人とも納得している。
「人数がいる作業をどうするかは、後々考えればいい」
俺は『空間』から石を取り出した。
「これに転移の魔法陣が書いてある、丈達が野宿していた場所だ」
俺は石に魔力を込めて魔法陣を発動させる。
魔法陣は問題無く発動し、最初にいたあの森に戻って来た。
「おー、ここがその場所かー」
プラナが言う。
「ここにあった大きな飼育小屋で動物を育てる。あのままじゃ使えないから、かなり修復
が必要だけどな」
俺達は少し歩いて小さな村があった場所へ向かった。
「本当にこのままじゃ使い物にならないな」
プラナが言う。
「ああ、今からここの修復活動を始めるぞ」
俺達はそれぞれ作業を始めた。
建物を作る時は、元々あった建物に合わせながら作ればいい。
俺は作るのに必要な材料を集めた。
「イルファ、ちょっと良いか?」
俺がイルファに話しかける。
イルファは疑問に思いながら俺の所に来る。
「お前の『キャリーケース』の中にいた動物達を食料源として、ここで飼わせてくれないか?」
俺がイルファに尋ねる。
イルファの『異能』を見た時、中に大量の牛や鶏などがいた。
それを使えれば、動物を集める作業をする必要がなくなる。
「い、いいですよ。も、元々一人で牧場をやっていて、災害で農場が壊れてしまって新しい場所を探していた途中でしたし」
初めて会った時より、かなり流調に話している。
きっと今まで人とほとんど話していなくて緊張していたんだろう。
慣れてきてくれて少し嬉しい。
「ありがとう、じゃあ遠慮なくここで飼わせてもらうよ」
すると後ろからロボットがこっちに来た。
「マスター、ココニアルタテモノノセッケイズカンセイシマシタ」
ロボットがイルファに話しかけている。
「ありがとうカルボ、これで作業がはかどるわ」
どうやらロボットに名前を付けているらしい。
「ロボット相手には緊張しないんだな」
俺がイルファに言うと、少し恥ずかしそうにしている。
「あ、あの、これ」
イルファが、さっきロボットに渡された紙を俺に渡した。
どうやらここにある建物の設計図らしいが、とても分かりやすく丁寧に書いてある。
「二人ともありがとう、これがあれば直ぐに作業を終わらせられる。これなら古い建物はもういらないから取り壊しだな」
俺が建物の方に向かおうとする。
「カルボ、お願い」
イルファがカルボに言っている。
おそらく取り壊しを手伝うように言ったのだろう。
自分だけあまり働けていない事に、罪悪感を感じているようだ。
「リョウカイシマシタ」
そう言ってカルボは浮き上がって、建物の方に向かった。
「ケイコク、タテモノノトリコワシヲオコナイマス。スミヤカニタイヒシテクダサイ」
カルボの声と、何やら物騒な魔力を感じて皆が逃げる。
「何だ何だ!?一体何処だ?」
どうやらバカが一人逃げ遅れたようだ。
「トリコワシカイシ」
その一言と共に、カルボは腕から魔力弾を放出した。
「ギャーーーーーーーーーーー!!」
建物の方から、バカの叫び声が聞こえる。
器用な事に、地面にはほとんど傷をつけずに建物だけを破壊している。
「ミッションコンプリート」
カルボが言う。
その場の全員が唖然としていた。
サッカーコート程の大きさがあった建物がバラバラになっている。
カルボは、バラバラになった建物の破片を回収してそれを食べている。
「なんて化け物だ、あれ」
丈が言う。
確かにあれは化け物と言ってもいいだろう。
おそらく『ランク』は7だろう。
ここにいるメンバーは、イルファと比奈と丈が『ランク5強』。
セルシウスが『ランク6強』。
俺とプラナが『ランク7』なので、俺とプラナ以外の奴と戦ったら間違いなく勝つだろう。
「すげえ威力だ」
俺は独り言を呟きながら建物があった場所へ近づく。
「た、助けて~」
瓦礫の下から何かが聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
カルボは瓦礫を食べながら片付けをしている・
凄い速さだ。
「エネルギーガ、イッテイリョウニトウタツシマシタ」
カルボが何かを言っている。
「ゾウショクヲカイシシマス」
するとカルボは背中からセ○みたいに何かを生んだ。
最初に見た時のカルボと同じようなロボットだ。
カルボはそれを三個生んだ。
「えー、あいつ増えるの?」
俺は思わず思ったことを口に出した。
あれだけの性能の上に、量産が可能なんてとんでもない兵器だ。
あれが味方で本当に良かった。
もしも敵だったら、魔人と同じくらいの脅威になっていただろう。
その数分後、カルボとその量産されたガルボたちは全ての瓦礫を食べつくした。
食べつくしたころ、カルボはまた新しく三体のカルボを生んだ。
「とんでもない繁殖速度だな」
丈がカルボに向かって言う。
「私が生んでいるこの子達は、私の量産型コピーです。性能はオリジナルの私と大差ありません。マスターに危害を加える者がいたら、速攻で処分します」
カルボが流調に返事を返す。
どうやら本体も成長して、流調に話せるようになったらしい。
とんでもない成長速度だ。
イルファは嬉しそうにカルボと話している。
「おい、お前ー、さっきは俺の事気づいた上で無視してただろう?」
俺の後ろからボロボロのプラナが俺に話しかける。
「そんなことはないさ、心配してたぞ。大丈夫か?」
とても爽やかな顔で返事を返してやると、プラナに頭を殴られた。
今のは他の奴だったら重症だったかもしれない。
俺は割れそうなくらい痛い頭を押さえながら作業に戻った。
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