第13話 協力者

 時は少し前まで遡る。


 俺が『楽園』を脱出した直後。


「やってくれたわね、でも、これで心置きなく『異能』を使えるわ」


「っち!」


「『神隠しの呪い』」


 エリウスが『異能』を発動した瞬間、その場からエリウスと恵(連の母)を含める全ての襲撃者の姿が消えた。


 そしてその約一秒後、『楽園』も姿を消した。


「ここは何処だ、何処に飛ばされたんだ?」


 笹口が、よろめきながら立ち上がる。


「ここが何処かは知らないわ、近くに生き物がいない場所に飛ばしただけだから」


 恵も立ち上がる。


「ぐう、邪魔するなーーー!」


 恵は『異能』でエリウスを攻撃しようとするが、『異能』は発動しない。


「無理よ、あなたの魔力はほとんど私が吸い取ったわ。まだ動けるのはすごいと思うけど、私を倒すのは無理」


「黙れーー!」


 エリウスの言葉には耳を貸さずに、恵がエリウスに物理的に攻撃しようとする。


 魔力の量が他の魔人と比べてもかなり多いので、単純な魔力の強化でもかなりの武器になる。


「無駄だと言ったでしょう」


 エリウスは恵の攻撃を避けることなく、ただ片手を突き出しただけで恵の拳を止めた。


「連の母親だったとしても、今のあなたは生かしておけません。心苦しいですがここで死んでもらいます」


 エリウスが拳を構える。


 その時・・・


「ぐっ!?」


 エリウスの体を無数の槍が貫いた。


「こ、これは・・・」


 エリウスが後ろを振り返る。


「ふふ、フハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 後ろでは笹口が笑っていた。


 さっきまでの傷も既に治っている。


「一体どうやって?さっきまで魔力もほとんどカラだったはずなのに」


 エリウスがよろめきながら言う。


 恵はその隙を見てエリウスを攻撃する。


 エリウスはギリギリの所でそれをかわす。


「お前の『異能』は自分よりも魔力の総量が少ない相手には、あまり効果が無い。つまり、お前より魔力が多い奴にはお前の『異能』はほとんど無力ってわけだ」


 笹口がエリウスに話しかける。


「ど、どうしてそれを?」


「知りたいか?だが教えるつもりは無い。油断したなー、魔力で肉体をもっと強化していれば、もしかしたらその攻撃も防げたかもしれないのに」


「まあ、今の俺の前では無力だっただろうがな」


 笹口が高笑いを上げる。


(一体何故急にこんなに魔力の量が増えたの?)


「まあ、なんにしても相手が悪かったな。それとあるお方からのメッセージだ『こっち側に付かなかったお前の判断ミスだ、あの世でみんなと仲良くな。呪われし者、善神エリウス』


「あ、あの方って一体!?」


 エリウスが質問したのとほぼ同時に、笹口がエリウスを蹴り飛ばした。


 そして・・・


「さようなら、エリウス先生」


 笑いながら笹口は上空から矢の雨を降らせ、エリウスにトドメを刺した。


 矢は高速で降り続け、エリウスが死んだ後もしばらく降り続けた。


「これで俺の仕事は終わりだな。最後のサポートが無かったら正直ヤバかったな」


 笹口の前に扉が表れる。


「さてと、俺はこれを渡して約束の報酬を貰うとするか」


 笹口は目の前に現れた扉に入って行き、笹口が扉に入った後、扉は閉じて消えた。


 恵は笹口が居なくなったのを見ると、『異能』で『楽園』に移動した。





 そして現在。


「エリウス先生が死んでいるのに教頭が生きてるってことは、エリウス先生よりも強い何者かがいるってことだ」


 丈に向かって俺が話しかける。


「光ってはいないが、まだ母さんの分の石が割れてないって事は、母さんもまだ生きてる」


 俺は魔具から離れ、地下室の出口に向かった。


「もうここに用は無いのか?」


「ああ、確認したかった事はもう確認した。まだやりたいことはあるが、一旦二人の場所に戻るぞ」


 俺は地下から出ると、地上の小屋から地下にあった物と同じ花の種を回収した。


 その後、後から出て来た丈と一緒に比奈とイルファの元へ向かった。


「よお、何かあったか?」


「うにゃ!?」


 比奈が驚く。


「もー、いきなり話しかけないでよ」


「ごめんごめん。それで、何かあったか?」


「うん、言われた場所は見てみたけど転移用の魔法陣も、ゲートも全部何かの爆発で破壊されてたよ」


 破壊された場所を指さしながら、比奈が答える。


「ありがとう。多分それはエリウス先生がやったんだと思う、後から追加の襲撃者が入ってこない用に」


 俺は足元に割れた鏡の破片を見つけた。


「三人とも、少し俺から離れてくれ」


「「「?」」」


 三人は少し疑問に思いながらも、俺から少し距離を置いた。


「よし」


 俺は足元にあった鏡の破片を拾って、それを巨大化させた。


「「おおー」」


 二人がそれを見て声を上げた。


 イルファは声は出していないが、同じ様な反応をしている。


「さあ出てきな、セルシウス」


 鏡の表面に誰かが映る。


「連く――――――――ん!!!」


 中から一人の男が出て来た。


「よお、さすがだな。あの襲撃で生き残っているなんて」


「えへへ」


 セルシウスは俺に抱き着きながら照れている。


「だ、誰だそいつ?」


 丈が少し引きながら聞いてくる。


「こいつか?こいつはセルシウス、俺の二つ下の後輩だった奴だ」


「連君、あの人達誰?」


「あの三人か?あいつらは俺の新しい仲間だ」

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