第11話 出発
日が昇り始めたころ、俺は目を覚ました。
俺は他の三人の方を見た。
「よお、おはよう」
丈が、俺に挨拶をした。
昨日は話が終わった後、辺りが既に暗くなっていたので、全員で見張りをしながら眠った。
最後の担当が丈だったので、今まで辺りを見張っていたのだろう。
「ったく、ここは寒いなー」
丈が俺に小言を言ってくる。
「でも、焚火があれば眠れないほどじゃないだろ?」
「まあな」
昨日は俺も見張りをした。
普通は、ついさっき会ったばかりの奴に、見張りなんてやらせないだろうが、丈の『異能』で俺は信用してもらえたらしい。
丈の『異能』は『嘘発見器』、名前の通り嘘を見破る『異能』だそうだ。
能力について聞く時も、『異能』でばらさないことを確認された。
戦闘には不向きだが、こういうときにはとても役立つ『異能』だ。
「いつここを発つんだ?」
丈に俺が聞く。
「決めてねーよ、来たくてここに来たわけじゃないし。ここが何処かも分からないからな」
「俺が住んでいた町にはどうやって来たんだ?」
「ここのゲートがたまたまあの町に繋がっていたんだ」
丈が答える。
「なるほど」
ゲートはコロニーとコロニーを繋ぐ安全な道だ、離れた空間まで移動できるが、決まった場所にしか移動できない。
「行く当てが無いなら、しばらくここに住んだらどうだ?見た感じ俺達以外に人はいないぞ」
俺が丈に提案する。
「でも大丈夫か?誰が来るか分からねえぞ?」
「大丈夫だ、このコロニーのゲートを使えないようにて、移動が必要になった時にだけ使えるようにすればいい」
ゲートは、ゲートを形どっている周りの石を少しずらすだけで簡単に消える。
ある程度技術があえれば、ゲートの大きさを変えることも出来る。
「なんなら、少し面倒だが、ここに合言葉つきの転移の魔法陣を書けばゲートを使わなくても移動はできる」
「なるほど、それなら他の場所の転移の魔法陣からでも、合言葉さえ知っていればここに戻って来れるな」
丈が納得する。
「考えておいてくれ、俺は向こうに少し用がある」
俺がその場を立ち去る。
「直ぐに戻ってこいよー」
丈が俺に呼びかけ、俺が手を振って答える。
俺は、俺が昨日拘束されていた場所にやって来た。
昔はここに小さな村があったらしく、俺がいた小屋以外にも古びた建物があった。
「ここは飼育小屋か?」
小屋から少し離れた場所にあった建物を見て呟く。
サッカーコート程の大きさがある大きな建物だ。
ここで動物を育てて生計を立てていたもかもしれない。
他には、大きめの家が一つと小さめの家が六軒ほど建っていた。
そこに、起きて来た他の二人と丈が来た。
「うわっ、こんな所があったのか!」
丈が驚く。
どうやら、この場所のことは知らなかったようだ。
反応を見た感じ、比奈は知っていたようだ。
「昨日、そこの小屋を見つけた時に一緒に見つけたんだけど、それどころじゃ無かったからねー」
比奈が説明する。
「でも、結構古くなってて住めそうにないな」
丈が言う。
「そうだねー、ここに住むにしても耐久力的にも、衛生面的にも、安全ではないにゃー」
どうやら丈が既に、ここに住む事に対して比奈達にも相談しているようだ。
その後、村以外の場所も見て回ったが、ただ草と木が生い茂っているだけで、何も無かった。
辺りを探索した後、寝床の焚火の場所に戻り、干し肉で朝食を済ませた。
どうやら比奈は、収納系の『異能』を持っているようで、空間に手を突っ込んで物を出し入れしていた。
「自分勝手な事を言って申し訳ないけど、俺はどうしても行きたい場所があるんだ。だから、この後直ぐにここを出ていくつもりだ」
俺がいきなり、三人に言い出した。
「それって、昨日言ってたお前が行ってた『楽園』っていう学校の事か?」
丈が俺に聞く。
「そうだ、俺はそこに行って色々とやらないといけない事がある」
他の三人が、顔を見合わせる。
「それって、一人じゃないと駄目なの?」
比奈が俺に聞く。
「いや、別に一人じゃなくてもいいけど・・・」
「じゃあ、私達も一緒に行っても良い?」
比奈が俺に聞く。
「良いのか?まだ冒険の途中なんだろ?」
「別に構わねえよ、昨日も言ったが冒険に疲れて休んでたし、特に目的も無いからな」
「それに、ここで会ったのも何かの縁だしにねー」
二人が答え、イルファが頷いている。
「そうか、とても心強いよ」
「それで?今から行くのか?」
丈が俺に質問する。
「ああ、直ぐにここを出ていくつもりだけど、一応使えそうだからここのゲートは閉じておくよ。三人は出発の準備をしておいてくれ」
俺は立ち上がって、ゲートの方に向かった。
このコロニーのゲートは二つあるようだ。
しかし、一つはかなり前に壊れて使えなくなっているようだ。
基本的には、一つのコロニーに天然のゲートは二つある。
辺りをよく見ると、周りの木が何本か傷ついたり切り倒されていた。
おそらく、ここで町で作った武器の試し切りなどをしていたのだろう。
俺は、『空間』で俺が住んでいた町に向かった。
俺はそこで、転移用のゲートを破壊して町のゲートも封鎖した。
これで、ここには誰も入ってこれないはずだ。
俺は再び、さっきまでいた森に戻ってゲートを閉じ、三人の下へ戻った。
「ゲートは閉じて来た、ついでに俺の住んでいた町のゲートも閉じて来たよ」
俺は三人に報告する。
「よし、それじゃあ目的地に向かおうか!」
比奈が張り切って言う。
「どうやって『楽園』まで向かうんだ?」
丈が俺に聞いてくる。
「俺の『異能』で向かう、俺の『異能』なら魔法陣が無くても移動することができる。準備は良いか?」
三人が頷く。
「いくぞ」
俺達は、『楽園』に向かった。
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