第5話 襲撃者

「ただいまー」


 合わせ技の練習を終え、家に帰った俺はいつも通り玄関で挨拶をしたが、返事は帰ってこなかった。


 どうやら、父は出かけているようだ。


 机の上に手紙が置いてあった。


「連


 今日は、ガントの所に集まりがあるから帰れん。


 今日も、母さんが帰って来なかったら晩御飯は自分で作って食べてくれ。


 明日の昼過ぎには帰る。


                              父より」


 俺は時計を見た。


 時計は6時を指している。


「晩飯作るかー」


 独り言を言いながら、俺は晩飯を作り始めた。


 結局今日は母も帰ってこず、一人で夕食を済ませて床に就いた。


 朝起きても、家には誰も居なかった。


 俺は、昨日の夕飯の残りで朝食を済ませ学校に向かった。


 学校に付いた俺は、いつも通り教室では無く理事長室に向かった。


「失礼します、エリウス先生」


「あら、おはよう今日も早いね」


 エリウス先生が笑顔で出迎える。


「今日も何か手伝おうかと思ってきました」


「それじゃあ、今日も手伝って貰おうかな」


 エリウス先生は写真を俺に見せた。


「昨日の夜か今日の朝、実験用のスライムが逃げ出したみたいなの、今日の授業で使う予定だから、探すのを手伝って」


「分かりました」


 俺はエリウス先生に連れられ、スライムが保管されている小屋に向かった。


「ここよ、きちんと蓋をしていたはずなのに何処かに行っちゃったのよねー」


 蓋が開いたガラスの容器を見ながら、エリウス先生が言った。


「誰かがエリウス先生より後に開けて、閉め忘れたんでしょうね」


「部屋の扉は開いていなかったから、多分隣の物置にいると思うわ」


 そう言われ、隣の物置に向かうと入ってすぐの所にスライムが居た。


 俺が見つけたと同時に、エリウス先生がスライムを捕まえた。


「俺いりました?」


 それを見てエリウス先生に聞く。


「何を言ってるの?人手は多いに越したことは無いし、それにあの容器に入っていたスライムは20匹もいるんだから、この部屋から探すのには時間が掛かるのよ?」


 そんな事を言いながら、スライム探しが始まった。


 30分後。


「捕まえたー!」


 俺が、最後のスライムを捕まえた。


「やったー、ようやく終わったわね」


 エリウス先生が笑顔で言う。


 正直俺が必要だったとは思えないが、達成感はあった。


「それじゃあ、そのスライムを容器に戻して私達も戻りましょうか」


 エリウス先生がそう言って物置を出ようとした時。


「エリウス先生!大変です!」


 いつもは、たいして言葉に感情が込もっていないガエルが焦ったように『空間』の『異能』で、目の前に現れた。


「どうしたんですか?」


エリウス先生が驚きながら聞く。


「襲撃です!今、『楽園』の学校や居住区を含める全ての敷地が襲撃されています!」


「そんな!」


 エリウス先生と俺が、ガエルの『空間』で移動した。


 移動先は学校の校門だった。


 そこから見えたのは、滅茶苦茶になった学校だった。


 多くの襲撃者が学校を襲撃していた。


 襲撃者は人間が多く、中には魔人もいた。


 襲撃者は服装はまばらだが、全員腕に色付きの布を巻いている。


「少し前までは、先生方や一部の生徒が襲撃を防いでいましたが、ついさっき守りが破られ学校に侵入されました」


 ガエルが、襲撃の様子を見ながら説明をする。


 どうやら、外の状況がばれぬように、物置の周りに結界が張られていたようだ。


 エリウス先生が、通信機を使って連絡を取ろうとするが、繋がらないようだ。


「全領土・・・」


 エリウス先生が呟く。


「校長先生と教頭先生は!?」


 エリウス先生が、ガエルに尋ねる。


「わ、分かりません。他の先生方が戦っているときは、居らっしゃいませんでした」


 エリウス先生が何かを考える。


「このままだと、楽園のエネルギー源である『核』は奪われてしまいます。なので、そうなる前に私が阻止します。あなた達はどうしますか?かなりきついと思いますし、命の保証はありませんよ?」


 俺とガエルに、先生が尋ねる。


「「勿論付いて行きます!」」


 エリウス先生が頷き、俺達は学校に向かってに走った。


「貴方達二人だけに教えますが、『楽園』のエネルギー源である『核』は学校の地下深くにあります。このことを知っているのは、私と貴方二人と校長のみですが、見つかるのも時間の問題でしょう。急いでかたずけますよ!」


 学校着いた時、エリウス先生が俺達に言った。


 いつになく深刻そうな顔のエリウス先生は、何か不安そうだった。


 学校に入った後、エリウス先生は物凄い速さで襲撃者を始末していた。


 生徒や住民は既に何人か死んでおり、エリウス先生はそれを見るたびに怒っているようだった。


 『異能』を使わずに戦っていたが、エリウス先生のビンタは頭を吹き飛ばし、拳骨は頭を潰し、調理器具で襲撃者を三枚に下ろしたり、魔法で攻撃していた。


 どうやら収納系の『異能』を持っているらしく、何もない場所から武器を取り出していた。


 使っている魔法は魔法の術式的には生活魔法レベルだが、威力は普通の攻撃魔法と変わらなかった。


 俺は、ガエルと一緒に襲撃者を殲滅していた。


 襲撃者が腕に巻いている布は、全員が同じ色では無いようだ。


 ある程度襲撃者がかたずいたとき、エリウス先生が外を見た。


 俺とガエルもつられて外を見た。


 そこには、校長先生が立っていた。


「何をしているんですか?校長先生」


 エリウス先生が、表情一つ動かさずに質問する。


「そんなこと、分かっているでしょう?」


 校長が、笑みを浮かべながら聞き返す。


「やはり、そうでしたか・・・」


 小さく呟いたあと、エリウス先生が息を吸う。


「武田あああああああああ!」


 今まで何度も聞いてきた、しかしそれとは比べ物にならないような怒鳴り声をエリウス先生は上げ、武田の事を魔法で攻撃した。


 そして次の瞬間、武田の後ろからいきなり現れた腕によって武田は胸を貫かれた。

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