第4話 合わせ技

「な、何をして、い、いるんですか?た、武田さん?」


 理解が追い付かない、という表情を浮かべながら恵が問う。


「何って?殺人?」


 何の罪悪感も感じていないように、武田が平然と言ってのける。


「あなたは、自分が何をしたのか分かっているんですか?大罪ですよ!?」


 パニックになりながらも恵が質問を続ける。


「勿論分かっていますよ、それがどうしたんですか?目撃者がいなければ、問題無いじゃないですか」


「なっ!」


 恵が驚く。


「でも、貴方だけは見逃しますよ。あなたのおかげで、この力が手に入ったんですから。それにばれても問題無いですし」


 武田の見た目がどんどん変化していく。


「見た目を変えるのは容易ですし、今の私を捕まえられる人はこの『世界』にはほとんどいないですから」


 そう言って武田はどこかに飛んで行った。


 恵はその場に泣き崩れた、声にもならない悲痛な叫びを上げながら。


 恵の頭に『ある人物』の声が聞こえて来るまでは・・・。




 そのころ俺は、刀をガントさんの家に運んだ俺は、家に戻って父にお小遣いを貰った後、ワープ屋に向かい友達が待ついつもの川岸に向かった。


「おー、来た来た待ってたぞー」


 川岸にいる男の一人が言う。


「ごめんごめん、でもまだ遅刻じゃないだろ?」


「まあな」


 また別の男がいう。


 こいつらは、俺がよくつるんで遊んでいる友達だ。


 ナナ=エレキトリック


 家系の者全員が『電気』の『異能』を持っている。


 名前の通り、電気を操る『異能』だ。


 エレキトリック家の次女で、中二病じみている。


 ちなみにナナは理科と数学が苦手。


 川口カワグチ 隼人ハヤト


 普通の少年。


 『スナイパー』の『異能』を持っている。


 『異能』の能力は、射撃や投てきの際狙った場所に正確に当てることができる。


 ガエル=カラサイ


 カラサイ家の次男。


 少し小柄で、根暗だが何故か急によく話始めたりする。


 『異能』は恵に似た『空間』という『異能』。


 『空間』の能力は、移動と収納。


 移動は生き物も移動させられるが、収納は生き物を収納できない。


 どの能力も、特別珍しい『異能』ではないが、連を含め全員『ランク6弱』とかなり優秀。


 ちなみに、『狭間の世界』の平均『ランク』は『ランク5弱』。


「まだ、隼人は来てないのか?」


 ガエルとナナに俺が聞く。


「ああ、隼人はまだ来てないよ。どうせまたゲームをやって長引いてるんでしょ」


 ナナが答える。


「お前がそのセリフを言うか」


 俺が笑いながら答える。


「おい、来たぞ」


 ガエルが隼人の方を見て言う。


「まだ遅刻じゃないだろ?」


 俺と同じ事を言いながら、隼人が近づいてきた。


「残念でしたー。15秒遅刻でーす」


 腕時計を見ながら、ナナが言う。


「いやー、それくらいよくね?」


 隼人が笑いながら聞く。


「まーねー」


 ナナが面白そうに答える。


 ナナは人をからかうのが好きなのだ。


「さて、今日はテストが終わって学校も早く終わったことだし、『異能』を試してみるか!」


「「おー!」」


 俺の声に皆が答える。


 ここは、あちこちに点在する『楽園』の敷地の一部で、今敷地内には俺達4人しかいない。


 攻撃系の『異能』を使うときは、周囲に迷惑をかけないように、許可が下りるまでは生徒だけで『異能』を使うことは禁止されていた。


 今日はテストが終わったので、ようやく『異能』と敷地の使用の許可が下りたのだ。


「誰から試す?」


 俺が皆に問いかける。


「じゃあ俺から試す!」


 始めに手を挙げたのは隼人だ。


「何やる?」


 俺が皆に聞く。


「じゃあ俺が的を置いてくるから、それを打ち抜くってのはどうだ?」


 ガエルが言った。


「おおー、いい案だな。それなら隼人の『異能』もガエルの『異能』も試せるな」


「それなら、いっその事皆の『異能』を合わせるってのはどうだ?」


「面白そうだねー、やってみよう!」


 ナナが賛成した。


「じゃあこんなのはどうだ?」


 俺が案を出した。


「まず、ガエルが的を出す、次に俺の『異能』で弾を作る、それを隼人が持って投げる時にナナが『電気』で加速する」


「いいねー、面白そう!」


「オーケー」


「いいよ!」


 皆が賛同し、準備をする。


 ちなみに、俺の『異能』は『爆弾魔』という。


 この能力は、自分が触れたものを爆弾にする能力だ。


 作った爆弾は、爆弾にする前と見た目は変わらない。


 本当は、『爆弾魔』には他にも能力があるが誰にも教えていない。


「準備できたぞー」


 ガエルが準備を終えた。


 俺は近くに落ちていた小石を爆弾に変えた。


「はい」


 俺が、作った爆弾を隼人に渡した。


「じゃあ、いくぞー」


 準備を終えて隼人が、手作りのパチンコで爆弾を打ち出し、それをナナが加速した。


 とても大きな音と共に、大きな砂埃が立つ。


 合わせ技は成功だ!


 数十メートル離れた場所にある的は、跡形も無く消し飛び、地面に小さなクレーターができていた。


 皆は嬉しそうにそれを眺めている。


 今まで、授業以外ではほとんど『異能』を使ったことが無かったにしては上出来だろう。


「いやー、すごいね『爆弾魔』!的だけじゃなくて周りの物まで攻撃できるなんて!」


 隼人が合わせ技の感想を言う。


「でもその分味方を巻き込むから連射はできないけどね」


「穴埋めなきゃ怒られるね、これ」


 クレーターを見ながら、ナナが言う。


 そうだね、もう少し合わせ技の練習したらまとめてやろうか。今度は攻撃にガエルの『異能』も合わせてみよう!」


 初めての合わせ技に、次は何をしようか創造を膨らませながら、俺達は練習を続けた。

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