第4話
ある朝、僕は喉に違和感を覚えた。
痛みはないのになぜかガラガラ声になる。
そして、声を出しづらい。
「シャルナン、風邪か?」
朝食を準備するロマンの手伝いをしていると、僕の異変に気づいたロマンが聞いてきた。
「いえ、特にだるいとかないんですが…喉が…」
「お前もしかして、声変わりか?」
声変わり?なんのことか全然わからない。
声変わりという病気があるのだろうか。
だとしたら僕はどうしたらいいんだろう?
そうだ、朝食後にリュカに聞いてみよう。
リュカはここの子供たちの中でも1番年上で頭がいい。元々は結構裕福な家に育って勉強から習い事までやっていたそうだ。だけど、紛争で父親とお兄さんが死んで、家族がバラバラになってしまい、路上を彷徨っていたリュカをロマンがここに連れてきた。
僕より3つ年上だけど、背も小柄で顔つきも僕たちとさほど変わらなく見えるから、たまに年上ということを忘れて接するとしこたま怒られてしまう。
でも、来た時リュカは僕と背が同じくらいだったのに最近背が伸びたみたいで、追い越されてしまった。
「ねぇ、リュカ。声変わりってなに?」
「シャルナンなんだその声。あぁ、声変わりになったのか!」
「ロマンにも言われた。それって大変な病気?」
「病気?そんなわけないだろ!」
リュカは僕をからかうように笑った。
「病気じゃなくって、そうだな。大人になるための成長、かなぁ?声変わりは簡単に言うと声が低くなることだ。ロマンみたいにな!お前声変わりも知らないのか。でも確かに、ここには声変わりの子がいないよなぁ、俺くらいか?」
確かにここにいる子供たちはみんな女の子と変わらない声だ。
というか、子供しかいないから当たり前なんだけど。
「大人になったらここを出られるってことかな?」
「わかんねぇ。俺も声変わりしてるし、背も最近伸びてきた。ロマンから何か言われるかもな。外に出て働くようになるかもしれない!」
大人になると外に出られる?
夢のような話に頬が赤くなる。
僕は一生この地下室で暮らすんだと思っていた!
でも、どうせ外に出たところで僕は結婚できない。
アリストフとあの夜話した事。
アリストフがいなければ、僕は外に出てもなんの意味もないのだ。
「おい、暗い顔してるぞ。アリストフのこと思い出してるのか?あれは許せねぇよな。客は全員変態だって知ってたけどさ、薬盛るなんてよ…。なぁにが『気持ちよくて飛ぶ薬』だ。気持ち悪ぃ」
リュカは本当に賢いから、どんな手を使ったのかアリストフが死んでしまった原因をロマンから聞き出して翌日皆に話して回っていた。
聞いたところで僕にはどうでもいい。
知ったって、アリストフは帰ってこないんだから。
「大人になって外に出たら楽しいことたくさんだ!そうしたらアリストフの事も忘れられるよ。俺、ロマンから外に出られる話が来たらシャルナンにも教えてやるよ。つぎはお前の番だからな!」
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