2章

2-1 キューレエスへ

 お姉様と約束した領地視察へ行く。

 忙しいのは嬉しい、余計な事を考える時間がないから。


「エドマイアお姉様、お願いします」


「こちらこそお願い。

 キューレエスには日が沈む前には着いちゃうから、今夜は夜おそくまでお話しましょう」


 一緒に魔馬車に乗れるのは四人まで、残る2人はお姉様の護衛とお側係のメイド。


 私の関係者は乗れない。

 エルマ達は先にキューレエスへ行っている。


 エドマイアお姉様は私に何が有ったのか知らないのか、今までと変わらず接してくれている。

 お姉様なら、知っていても知らないフリしてくれているのかも。


 護衛の人はフギズナと同じで、お父様がお姉様に派遣していた。

 美しい女性でお姉様と並んでも見劣りしない。


 お父様絶対贔屓してる、お姉様が十分美しいのだから彼女は私のところでいいでしょ。

 なんでフギズナなんておじさんなのと思っていたら


「リイティア様はフギズナ様と毎日お会いできるのですね。

 羨ましいです」


 ってほほを赤らめるじゃない。


「ヤエリー、貴方そのフギズナって殿方と…」


 お姉様がすごい勢いで食いついた。


「な、何を言われるのですか。

 私なんて、いえ違います、そうじゃなくて。

 そのー」


 慌てるヤエリーさんって可愛く見える。

 お姉様より10才以上歳上なのに、少女みたい。


「私はフギズナ様と同じ近衛騎士団・三番隊の騎士付きの従士をしておりました。

 立場が違いすぎます、フギズナ様とは騎士団の仕事関係でお話した程度です。

 私がそんな、恐れ多いです」


「そんな事は聞いていないわよ。

 ヤエリーはどう思っているの」


 お姉様、グイグイ聞いてゆく、意外。


「私は見ていただけですので」


「なんで見ていただけなの。

 声をかければよかったじゃない、たいていの男ならヤエリーの申し出を断るはずないわ」


 お姉様楽しそう


 ヤエリーさん奇麗なんだからもっと自信を持ってもいいと思う。


 でもフギズナにはもったいなさすぎ。

 あのおじさん会った時よりは見直してるけど、ヤエリーさんにはもっといい人いると思う。


「今度リイティアちゃんをお茶に誘った時には、そのフギズナさんもご招待するわ。

 無論、ヤエリーさんがお相手してね」


 フギズナはお姉様の所に行く時には館の前までは一緒に来る。

 でも、帯刀したままでは中には入れないので、外で待っている。

 それを館の中にまねこうと言うのだ。


「エドマイア様、おふざけにならないでください」


「ふざけてなんていないわ、応援をしているのよ。

 ヤエリーいろんな人に言い寄られているのに、お相手がいないの何故かって思ってたの。

 そんな理由だったのね。


 でもヤエリーって、自分からは告白しなそう」


「こ..こくはく」真っ赤


 お姉様やりすぎでは。


「けっ、結構でございますエドマイア様。

 ご助力いただかなくても」


「協力しないで大丈夫なの。

 私は何でもするわよ。

 ちゃんと思いを伝えられるの」


「その時がきましたならば」


 小さいつぶやきだけど、耳が大きくなっている私達は聞き漏らさない。


「聞いたわよ。

 リイティアちゃんも聞こえたわよね」


「ええ、お姉様。

 ハッキリと」


 私も悪ノリ。


「私も聞きました。

 ヤエリーさんがこんなに積極的な方だとは思っておりませんでした」


 お姉様付きのメイド、ヒステルまで参加してる。

 楽しい!


 魔馬車の中にはずっと笑い声が有った。

 だからキューレエスへはあっという間についてしまった。


「エドマイアお嬢様、おかえりなさいませ」


 館の前には、お姉様のお出迎えがずらりとならんだ。


「リイティア様、ようこそおいで下さいました。

 歓迎いたします」


 ここでは私は客になる。

 エルマがそっと近づいて後ろにひかえた。

 サヤ達も来ているのだが、客でない彼女たちは別館にいる。


「ヨハン。

 リイティアの護衛の方には帯刀をゆるし、館への入室をゆりします」


 お姉様がそう言うと、出迎えの列の一角がざわめいた。

 武装していた集団だ、お姉様を護衛している人達だろう。


「勘違いをなさらぬように。

 警護の方の働きに不満があるのではありません。

 ですが皆さんは私の警護、いざとなれば私を優先します。

 リイティアのために動く人がいて欲しいと、姉として思ったのです」


「エドマイアお嬢様の思いのままに」


 列の先頭にいた紳士が応えた。

 ざわめいた一群も礼をして同意の意思を示している。


「ヤエリー。

 リイティアの護衛の方にお知らせし、館内を案内して上げて。

 ここは初めてなので、警護するにも知っていたほうがよいでしょ」


「はい」


 ヤエリー戸惑っている。


 お姉様'その時'を無理やり作るきかしら。

 真面目な事いってたけど、館に入る時舌を出して笑ったの見逃しませんでしたよ。


 夕食をご招待された.

 サヤの料理も美味しいけどお姉様の料理人もすごい。


 豪華な皿が次々とくる、それでいて1皿の量がちょうどいい。

 コースの最後まで味わえたわ。


「リイティアちゃん、もう1皿食べれない?」とお姉様が。


 すこし物足りなかったので、嬉しい言葉。


「はい、いただきます」


「前に言ってたでしょ、私がここの特産物を作りたがっていた事。

 最新作を試食していただけないかしら」


「エドマイア様」とヨハンさん。


「ヨハン達の感想は全部素晴らしいですばかり。

 でも実際売り出したら、全然。


 リイティアちゃん本当の感想を言ってね」


 出てきたのは、お魚。

 完全な生じゃなくて少し火がはいっている感じ。

 柑橘系の爽やかな香りがする。


「お姉様、いい香りですね」


「ヤシュをソースに入れているの。

 ここの人は昔から食べていたそうよ。

 爽やかで水々しいから、長い航海から戻った船員に人気がある柑橘の果物。


 少しずず増やしているの。

 たから、そのまま食べる以外にも食べ方を増やしたいの」


 美味しそう。

 一口。


 ん?

 酸っぱい。

 それに、変な苦味もある。

 まずくは無いんだけど、美味しくもないかも。


 正直にと、おっしゃっていたので


「私には、酸っぱすぎました」


「そう。

 私は大丈夫だったけど、好みの差が大きく出ちゃうのか」


「いえ、私が子供だから酸っぱいのは苦手なのです」


「怒ってないわよリイティアちゃん。

 思った事を言ってくれてありがとう。


 ヨハンなんか眉間にシワを寄せているのに'美味しいです'なんて言うんですもの。

 年を召された方にも、酸っぱすぎるのよ」


 小さいため息を1つ。


「入れる量を少なくすると、香りも少なくなってしまうから難しいわ。

 この地で取れるモノで何とかしようとしてるけど、難しいな。


 海水で塩田開発でもやらないとダメかしら。

 岩塩の価格に対抗するのも難しいからな、そこまで…」


「特産品を造り出すのも、大変なのですね」


「ごめんなさい、1人で考え込んでしまったわ。

 お茶にしましょう」


 とお茶を用意してくださった


 見慣れない容器が並べられた、半透明な水にスプーンが入っいている。


「それのせいで焦ってたのかも。

 お兄様のところで売られ始めた、水砂糖よ」


 スプーンですくってみると、すこし粘り気がある。

 砂糖なら甘いはず、お茶に入れてみた。


「美味しい」


「これの製法をお兄様は王に献上したわ。

 気に入った王は水砂糖の製法を国の秘密にして、製造をお兄様だけに許した。


 黒砂糖より安く売られ初めたの。

 みんな欲しがるでしょうね、これでお兄様は多くの富を手に入れた」


 はしたないけど、直接舐めてみた。

 原料の香りが少し残っている、これって。


「作ろうと思ってもダメよ。

 製法は国の秘密になり、造るのはお兄様にだけ許されたのだから、他の人が作ったら秘密を暴いたとして捕まるわ。

 上手い方法よね、作り方は調べればそれほど苦労しないで判りそうだけと。

 国によって守られているわ」





「ねえ、あれって」


 夜になり、ヨンゼに確認した。


「オレが作らせようと手紙を出したやつだな。

 サツマイモを原料にした甘い調味料。

 どこまで甘くなるかは判らなかったが、十分甘くなるようだ」


「なんで、なんでお兄様が」


 偶然同じ事を考えついたなんてありえない。


「漏れたんだろうな」


「代筆士よね。

 それがどうしてエグバート兄様のお耳に入ったかよ。

 お母様、セリアヌル様とは仲が悪かったと思う」


「妻としょうでは仕方がない」


「エグバート兄様も嫌いだったと思うけど、何で教えたのかしら」


「その線はオレも無いと思うな。


 あの連中に兄の手下が紛れていたとか。

 でも兄さん馬鹿じゃなさそうだしな、あんな連中相手にするかな」


 自分もバカの仲間入りになりそうだものね。

 それよりも。


「砂糖よ、私作れなくなってしまったわ。

 お菓子どうするきなの」


「慌てるな、売り出さなければいいんだろう。

 リイティアがお菓子に使うくらいは問題ない。

 それに他にも砂糖の作り方は思いつく」


「そうなの」


「だが、砂糖はしばらく造るのはやめだ。

 水砂糖は黒砂糖より安いなら買えるだろう。

 買って使えばいい」


「なんで、そうなるのよ」


「1つは、砂糖造りは国家がかかわる大事になっている。

 お菓子が欲しいレベルで手を出さないほうが無難だ。


 もう1つは、お前の兄さんがどうやってオレの手紙の中身を知ったのかだ。

 その時たまたまだったのか、今でも監視されているのか、わからない間は手の内を見せたくない」


 2日キューレエスを見て回り、翌朝ラフトリア島に渡る。

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