ふしぎメガネとひみつのカフェ
乃木ちひろ
1 サイアクの月曜日
「明日学校やだなぁ…」
教室の席は前から二列目。けれど黒板の字がぼやけてしまい、ついに昨日メガネを買ったんだ。赤いフレームの角に緑色のクリスタルがついているのがイチゴっぽくて気に入っていたのに、教室に入ったとたん、いきなり言われてしまった。
『あははっ!
同じクラスのタケトは、わざとイスをガタガタさせたり、授業中なのに工作したりして、先生によくおこられている。小学六年生にもなって、なんでそんなことするかなぁ。
でも声がでかいアホタケ(アホ+タケト)につられたように、クラスのみんながクスクス
「
親友のさくらはそう言ってくれたけど、今日はサイアクだ。もう泣きたいくらい。
だってノートを書いているとメガネが下がってきて鼻がかゆくなるし、体育で走ったらガクガクゆれるし。常に目に入る赤いフレームがとにかくジャマ。
「お姫様をやりたいなんて言ったわけじゃないのに」
そんなわけでわたしは付き人ではなく、姫がお
「もう、全部メガネのせいだ!」
だからメガネを外した。ピアノ教室では
ピアノだってもうやりたくないし。
夕暮れであたりは暗くなってきて、だんだんよく見えなくなってきたけどいいもん。もうメガネなんてこりごり。なんでうちはパパもママも目が
家のまわりは右も左も坂ばっかり。坂を上りきると、道路にくるりと
ここには
公園から駅の方を向くと見える高いビルは、マンクス
公園をつっきった向こうには、このあたりで一番大きなお
家の方に向かう道は下り坂だ。一つ目の坂を下ると、木がわさわさ
坂は左に大きくくねって、神社の
二つ目の坂を下り始めた時、左手に黒板の
「なんだろう…こんなところにお店なんてあったっけ?」
メガネをしていないからぜんぜん見えない。
【ようこそ ネコのミルクティーカフェ ロシアンブルーへ】
「ネコのカフェ!?」
ネコにさわれるのかな? 黒板には白でネコのシルエットが
それに
お店は
温かみのあるランプが一つ
「すてきなお店…!」
ミルクティー 400円
ハニーミルクティー 450円
いちごミルクティー 500円
アップルミルクティー 500円
ロイヤルミルクティー 500円
今週のスイーツセット 950円
「わあぁ! はちみつ入り! いちご!」
450円なら持ってる。今月は目当てのマンガが出ないから、おこづかいはそっくり
おおおおいしそう! でもお店に一人で入ったことなんてないし、
メニューを見ながらずっと
「…!!」
後ろからものすごい力で
やだっ!
かみつこうとしたり、足をジタバタして
テレビみたいに黒いワゴン車に乗せられて、海の近くの
「うべっ! いたーい!」
いきなりチョコレート色の
「お前、何を見ていた?」
上から
「なにを見たのか正直に答えろ」
「メ、メニューを見ていただけです」
「見え見えのうそをつくんじゃない。
なぜか男の人はものすごく
「本当ですっ! うそなんかついてません!」
「じゃあどうしてあんな近くで? まるで店の中をのぞきこんでいたよな?」
「それは…メガネしてないから見えなくて…」
「それが見え見えのうそだって言うんだよ」
すると男の人は、わたしの後ろにいたもう一人に向けて目で
男がレッスンバッグをひっくり返すと、
「なにするの!」
「一体おれたちの何を
灰色の男の人はノートを
その時、ひざにネコ耳メガネケースが当たる。そうだ! この
目にもとまらぬ
「え………っ」
さっきまで、
けれど今、わたしの目の前でノートをめくっているのは———
「なんでネコなのぉ———っ!?」
白いシャツと黒いエプロン
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