第十三話 鉄乙女は右手を振るう
謎の少女が操る怪獣は向かうのは、この町に一つある市立真芯高等学校だ。
その目的とは真宮眞央の力の目覚めであった。
「さぁ進め、怪獣エンドラドン。もうすぐ君を倒すものが現れるよ!」
エンドラドンと呼ばれた怪獣の歩みに合わせて、少女は驚異の身体能力で建物から建物へ跳び移っていく。
「あ、あぁ……怖い、怖いよ真宮くん、町がどんどん崩れていくんだ……助けて、助けて真宮くん!」
怯えた声をする謎の少女だが、手元の華麗なコントローラーさばきで怪獣エンドラドンに雄叫びを上げさせながら進路の邪魔な建物を壊して進む。
「あの時みたいにヒーローは来るんだ…………真宮く……誰だ?!」
段々と近付いてくる甲高いエンジン音に謎の少女の手が止まった。
その黄色い物体は怪獣エンドラドンよりも小さいが、足元の車を器用に避けながら猛スピードで向かってくる。
「いた、トカゲの化物!」
ミツキを乗せて走る鋼鉄の巨女ライトニングは怪獣エンドラドンを目視で捉えた。
三半規管の弱い普通の人ならば一分も持たないライトニングの揺れるコクピットの中で、ミツキは両脚部の高速回転するホイールをアスファルトに切りつけさせて、暴れまわる怪獣エンドラドンに向かった。
「こういうのは先手必勝なのよっ!」
元暴走族、現在は立派なモーターバイク整備士である兄の言葉を思いだし、ライトニングは怪獣エンドラドンの眼下に颯爽と潜り込む。
「そんなロボット捻り潰せ、エンドラドン!」
目の前のライトニングを捕まえようと手を伸ばす怪獣エンドラドンだったが、ライトニング既に天高く飛び上がっていた。
「なにぃ?!」
「ライトニングのスピードを舐めないでよねっ!!」
真っ赤な太陽を背に空を舞うライトニングは背部のブースターを吹かして垂直にに急落下。
電撃を帯びて光る黄金の足で、怪獣エンドラドンの顔面を思いきり蹴り飛ばした。
吹き飛ぶ怪獣エンドラドンは自ら作った道路の亀裂に頭を突っ込み倒れた。
「え、エンドラドン?!」
謎の少女はコマンドを入力すると怪獣エンドラドンは直ぐに起きあがると、すかさず口から炎を吐いた。
「この黄ばみ色ロボットめぇ! 燃えろ、お前なんか燃えてしまぇー!」
逆上する謎の少女の叫び。
真っ直ぐ吐かれた炎をライトニングは横っ飛びで路地に逃げ込みやり過ごそうとするが、炎の射線上にあった車の列が爆発を起こし、周囲の建物を巻き込んで大きな被害を生んだ。
「このままじゃ町が……そうだ!」
被害をこれ以上、出さないための秘策を思い付くミツキ。
まずは手元のタッチパネルから操作ガイドを確認する。
「どうにかして町から追い出さないといけないんだ……それをやるには……やっぱり、これしかない!」
ライトニングは怪獣エンドラドンの前に姿を現すと全力で後退した。
「恐れをなして逃げ出したか……やっぱり本物のヒーローじゃないとダメなんだね」
「逃げてるんじゃない。こうやって助走をつけるためにある!」
数百メートルの距離を開けたところでライトニングは方向転換。
今度は怪獣エンドラドンに向かって全速力で駆ける。
「ライトニング、ライトアーム……チェンジ!!」
ミツキは力を込めて操作レバーを押し込んだ。
するとライトニングの身体が変形、その姿を巨大な“右腕”に変えた。
「アクセラレイトォォ・サンダァァァァ・ナックル!!」
吼えるミツキ。
疾風迅雷の速度で加速するライトニングの拳が怪獣エンドラドンに激突。
流れる超高圧電流が怪獣エンドラドンの動きを止め、ライトニングはそのまま勢いで押し出し、機体の方向を上に向けて空の彼方へ殴り飛ばした。
「……え、エンドラドン…………が」
空を見上げる謎の少女はセレクトボタンを長押しする。
体内から閃光を発して、怪獣エンドラドンは青空の下で跡形もなく爆発した。
「…………はぁ、神様は焦らし上手だね。でも障害があった方が燃えることもあるって覚えたよ……次はもっとピンチがあると良いね、真宮くん!」
自分の怪獣を自らで自爆させた謎の少女は、次の戦い機会を楽しみにする。
「僕は覚えてるからね真宮くんがボクを助けてくれたこと……今度はボクが君を助ける番だ、ふふふ」
コントローラーをポケットに仕舞うと、上機嫌に鼻唄を歌いながらその場から姿を消すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます