探し物の多い彼


 朝、本棚を見ると読みたい小説がなかった。机を見てみる。ない。

枕元を見てみる。ない。鞄の中にもない。


「おはよ。」


 諦めて別の本を持ってリビングに出たら彼女がいた。手に持っているのは探していた小説だ。


「あのさ、勝手に小説持っていくの辞めてくれない?探したじゃん。」


「ごめんって。でも同じ朝に同じ本を読みたくなったの嬉しいでしょ。」

 困ったものだ。嬉しい。


「ココア飲むでしょ。」


「あ、うん。ありがとう。じゃなくて本。」

 いつも彼女のペースになる。ずっとそうだ。


「ねぇテレビのリモコン知らない?」


「どうせネットフリックスでしょ。スマホからアプリ使ったらテレビも付くよ。」


「そうなんだけど、そうなんだけどリモコンを探してるんだ。」


 探し物を始めるとそれが今本当に必要なのかを考えないで見つからない事が許せなくて探し物をしてしまう。僕の悪い癖。いつも何かを探してばっかりだ。


 僕がうまく見つけれたのは彼女だけ。


「本棚」 「ココア」 「探し物」

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