雨の日の大福

 私のお婆ちゃんは小さな茶道教室をやっている。子どもから手が離れた御婦人や近所にある短大の女学生さんが家の一部を改装した茶室に通う。その中で私は一番若い生徒だった。他の生徒さんからは「お孫さん」と呼ばれている。


 放課後だった。お婆ちゃんの家に行く途中、予報にない大雨に私は打たれた。

セーラー服がびっしょり濡らしながら家に急いだ。玄関で水滴をポタポタ落としながら靴を脱ぐ。


「ばあちゃん〜タオル〜」


 あらあら大変と和服に襷をかけてお婆ちゃんが髪を拭いてくれる。

 お風呂をもらって適当な服を用意してもらった。ばあちゃんの家の匂いがする。好きな匂い。


「ばあちゃん〜お腹すいた〜」


 ふふっと笑って少し待ちなさいと告げる。私はあれが出てくるんじゃないかなぁと期待する。白くてモチモチのいつものあれが。


「はい、お大福ですよ。」


 私はこれが好き。お婆ちゃんの家で食べるこの大福が。


「お婆ちゃんありがとう。頂きます。」



「雨」 「大福」 「セーラー服」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る