#22

リズ 「うんうん、どれ、ここは僕が一肌脱いでヤツのアホ話を・・・。」


クレア 「あの!お茶をお持ちしましょうか?」


リズ 「うん?あぁ、大丈夫だよ。それよりもクレア、君は早く部屋に戻って休みなさい。久しぶりの覚醒だ。表に出ていなくとも疲れているだろう。」


ロイド 「あの、僕たちは?」


リズ 「君たちは・・・消灯まで時間があるし、好きにしていてもいいけど・・・そうだね、吊るした生徒たちにも後で執務室に来るように伝えておいてもらえると助かるよ。」


ロイド 「わかりました。」



リズ、ヴァルを連れて執務室に向かう。



ロイド 「ふぅ・・・!結局叱られてしまったな。」


ノア 「なにも全部明け透けに言わなくてもいいのに・・・。」


クレア 「どちらにしてもリズ先輩に隠し事は難しかったんじゃない?」


ノア 「はぁ、珍しく真面目だったしな~。ツイてねぇ…。」


ロイド 「いつもは面倒ごとには我関せずなんだけどな。」


クレア 「一緒にいてあたしまで叱られてるような気分になっちゃったよ・・・。」


ロイド 「それは悪いことをしたな。」


ノア 「でも、真面目なリズ先輩のオーラすげーんだもん。」


ロイド 「なんというか・・・カッコよかったな!」


クレア 「さすが3年生って感じだね。」


ナツミ (飴と鞭のバランスが絶妙なところも含めてね。)


ノア 「んじゃ、俺らはさっきの奴ら見つけに行きますか。ロイドが派手にボコったし、ユグドラシルに降ろされてからそう遠くには行ってないっしょ。」


ロイド 「僕のよりもノアの策略で心が立ち直れていないだろ・・・。」


ノア 「え~なんのこと~心外だな~。じゃあな、クレア。ちゃんと休めよ。」


ロイド 「また明日。」


クレア 「わかってるよ、また明日。」



ノア、ロイド、談話室を後にする。



クレア 「・・・。」


ナツミ (・・・え、ちょっと待って。置いてけぼりにされちゃったんだけど、クレアちゃんの部屋ってどこ!?)



クレアの腕にユグドラシルの枝が触れる。



クレア 「ん?」



見ると、クレアの荷物を持ったユグドラシルが方向を指し示している。そして、手をつなぐようにクレアの手首に巻き付くと優しく引っ張り導いた。



ナツミ (よかった!ユグドラシルが部屋へと案内してくれるみたい!それにしてもユグドラシルの存在って不思議だなぁ・・・。不思議だけど自然と馴染む・・・。)



クレア、導かれるままテラスを出る。



クレア 「・・・!」



テラスを出て寮を振り返った景色は先ほどとは異なっていた。

塔と塔、層と層を繋ぐように無数の枝や木でできた橋や階段が幾重にも幾重にも折り重なっていた。夜に染まった空は完全に暗くなり、寮内の温かな明かりのみがぼんやりと照らしている。階段や橋には足元を照らすように蛍のような煌く明かりが取り付けられていた。

テラスの端まで導かれるように歩くと、足元から新しく一本の橋が生み出され架けられていく。クレアはそこにエスコートされると橋の行く先が歩くたびにどんどん作られていく。



ナツミ (わぁ!面白い!!アニメとかでしか見たことない幻想的な光景だ・・・!!)



空を架ける橋、吹き付ける少し冷えた夜風。



ナツミ (そういえば、リズに問い詰められている時、ノアが何か言いたげだったな。あたしはゲーム内で推しのアレンよりも多くノアのカードを持っていた。だから、ほとんどの彼に関するストーリーを読んでたけど、ノアはもっとこう、要領よく賢く立ち回るようなキャラだった気がする。もちろん、ノア、ロイド、ヴァルの3人で中学生男子みたいなアホなやり取りはしてたけど…。結局話を聞いた感じ、さっきの件はノア発案だったんだよね?リズ先輩は考えなし、と叱ってたけど、本当にそうだったのかな?だとするとなんだかノアらしくない、解釈違いだ。…ノアはあたしことクレアちゃんが異変を解決しにルイスに会いに行ったのを知っている。なら、あの異変も長くは続かないことをノアならわかっていたはずだ。だとすると…長くは続かないからこそ、安全だとわかってやっていた、とか?でも、リズの覇気にやられて言えずじまいだった。…それなら筋も通るし、納得するな。あたしが二次創作でノアを描くならこの状況はきっとそうする。もしかしたら、買いかぶりすぎかもしれないけど。)



ナツミ、考えながら歩いていると、ユグドラシルの橋が終わる。

中はルイスのときの改装と同じような構造で、幹に沿うように緩やかなカーブの直線の廊下が温かい光に照らされて長々と続いている。

しばらく歩くと、ある扉の前でユグドラシルの動きが止まり、今までユグドラシルが持っていたクレアの荷物が返された。



クレア 「ありがとう、ユグドラシル。」



ユグドラシル、感謝の言葉を聞くと枝を引っ込めスッと姿を消した。



ナツミ (ここがクレアちゃんの部屋…。オリキャラの、自室…!?)



ナツミ、生唾を飲むと、ゆっくりと扉を開けた。



ナツミ (想像の何倍も広い…!これ、寮の一室ってか普通にアパートじゃない!?…1DKだ…!寮の一室に個別のトイレ、バスルームがあるだけじゃなくてキッチンまであるなんて…。これで、全校生徒が利用できる大食堂と大浴場があるんだっけ…?さすが、世界一の魔導士学校、リッチだぜ…。…何かのストーリーでちらほらキャラクターの部屋を見ることはあったけど、具体的な間取りがわかるのは初めてだな。…っていうか、そんなことより部屋可愛すぎない!?壁紙、カーテン、家具どれをとってもめっちゃ可愛い!!絵に描いたような女の子の部屋って感じ!まさしくクレアちゃんの部屋!そのまますぎてなんか見覚えすらある気がする!え、なにこれ、ルームツアーしちゃっていいんすか?推しのルームツアーしちゃっていいんすか!??)



ナツミ、部屋中を歩き回る。



ナツミ (え~、メインの家具はベッド、クローゼット、部屋の多くを占める大きな本棚、ドレッサー、勉強や作業のできるデスク、それにいろんなところにぬいぐるみが飾ってある。…あ、裁縫、手芸、刺繍道具、画材に楽器まで。なんでもあるなこの部屋。そのどれもが絵に描いたように完璧におしゃれで可愛くて、部屋はとてもきれいに掃除されて整っている、塵もしわもない。…整いすぎてむしろ生活感がないな。まるで、モデルルームみたい。そういうところも含めてクレアちゃんらしい部屋だ。…待って、思い出した。なんか見覚えがあると思ったらこの部屋、あたしがクレアちゃんの過去編で考えた、“元居た部屋”にそっくりじゃない?そう思うと、確かに寮の部屋なのに壁紙とか普通備え付けであるものの自由が利いてるのが不自然だ。)



ナツミ、自分の荷物をデスクに置く。



ナツミ (とにかく、次はもっと細かく見ていこう。もしかしたら、あたしやクレアちゃんがこの状況になった手がかかりが何かあるかもしれないし。まずは…)



ナツミ、本棚に近づく。



ナツミ (部屋に入った時にまず、本の量に目がいくな。ジャンルは…タイトルを見た感じ雑多だ。知見が広がりそうなものから流行りものの小説、漫画まで。…あ、ファッション雑誌まである。見た感じじゃ普通。読書家なのかな?ってくらい。でも、これらはクレアちゃんの趣味じゃない。向こうにある、趣味の物と思われる、画材や楽器、手芸道具も含めてね。みんなみんなクレアちゃんの育ての親である“ジョーカー”によって与えられた物だろう。少しでも普通の子として生きられるように。それが彼女にできる唯一の贖罪だったと私は設定に書き記した。じゃなきゃ立場の難しいクレアちゃんがこれだけのものを手に入れるのは不可能だしね。育ての親からもらった物だからそれはそれは大切にしていたんだろうな。寮の部屋に移すくらいだし。…いや、あっちに置いておいても意味ないか。)

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