#12
クレア 「…。」
ナツミ (…ちょい待ち。ものすごーく場に流されたんだけど、今何が起こったの??リベラ先生に超そっくりな個性的な人が病室に来て?手をかざしたら頬の痛みが引いて…?え、あれ魔法?リベラ先生なら保健の先生で治癒魔法もできて当然だけど…。うん…?っていうか友達ってみはるちあきふゆかのこと、だよね…?…
本当に?でも、もうすぐ授業が終わって駆けつけてくるって。いや、あたしはこんな病室知らないし、うちらの高校の保健室はあんまり行ったことないけど、絶対にここではない。じゃあ、誰が来るの…?)
ドアの開く音。
クレア 「…。」
リベラ 「あ、ねーね!ケーキ食べる?」
顔を見せたのはリベラだった。
クレア 「へっ?ケーキ?」
リベラ 「そそ、ケーキケーキ!ショートケーキなんだけど、頂き物であるんだよネ。あ、でも病み上がりか…まぁ、でも若い子の胃なら平気っしょ!問題は気持ちだ!さ、どうする??オトモダチが来るのも授業終わりがあと10分くらいだから、来るまでに食べきれる余裕があるけど?」
クレア 「じゃあ、いただきます…。」
リベラ 「よっしゃ!ちょっと待っててな、今机出すからベッドに座っててくれや。」
クレア、ベッドに腰をかけるとリベラがベッドに設置型の机を取り付け、そこにカットのショートケーキを置く。
リベラ 「おっとっとっと…。」
リベラ、隣の部屋から紅茶の注がれたティーカップもショートケーキとセットに置く。
クレア 「ありがとうございます。」
リベラ 「そんじゃ、ごゆっくりどうぞ~。」
リベラ、今度こそ退室する。
クレア 「…。」
クレア、リベラの勢いに押され、部屋に取り残されるような心地になり唖然とする。
静かにショートケーキを一口、口に運ぶ。
ナツミ (あ、優しい甘さで美味しい。)
優しいくちどけのケーキと紅茶で一息ついたナツミはもう一度部屋を見渡し、窓の外の景色を見つめる。
クレア「…はぁ、どうしよう。というか、どうなっているんだろう…。」
しばらくケーキと紅茶を堪能していると鐘が鳴る。
部屋の向こう側からだんだんと賑やかな音が漏れ聞こえるようになってくる。
ナツミ (ここは本当に病室じゃなくて保健室と捉えるのが正解なのかな。)
そんななか、ひと際はっきりとこちらに向かう騒がしい足音が耳に届く。
遠くでドアが勢いよく開く音。
リベラ 「コラ!そんな勢いで廊下を走るな!」
?? 「すみません!」
?? 「だって目覚ましたんでしょ!?」
リベラ 「確かに覚ましたけど、覚ましたばかりなんやからそんな騒がしくすな!…向こうの部屋にいるよ。」
ナツミ (2人、男子が入ってきたのかな?)
ドアが開く音。
2人の男子生徒が駆けつける。
くせ毛で活発そうな青年 「クレア!」
サラストクール系の青年 「クレア!」
くせ毛の活発そうな青年 「ってケーキ食ってる!?」
サラストクール系青年 「病み上がりにケーキはいいのか…?」
ナツミ (うわーすごく顔の良いノアとロイドのコスプレイヤーだなーあははー。本当にそっくり~…。…。)
クレア 「…ノアとロイド…?」
ノアとロイドと呼ばれた青年たちは顔を見合わせるとパっと笑顔になり、もう一度クレアを見返す。
ロイド 「良かった。何も大事はないんだな。」
ノア 「ほんっと、マジビビらせんなよ~?ロイドなんて起きたら別人になってたらどうしようとか泣き言言ってたんだぜ?」
ロイド 「それはお前が起きたら記憶がなくなって僕たちのこと覚えてないかもしれないとか言うから…!その可能性も…。」
クレア 「…。」
ノア 「クレア?」
ノア、顔を覗かせる。
クレア 「え!?あ、うん…。」
リベラ 「コラコラ、お前さんたち、長いこと眠っていて今起きたばかりなんだから、まだ本調子じゃないことを考えろよ?」
ロイド 「わかってます。」
ノア 「病み上がりにケーキ食わせた先生が言う~?」
リベラ 「ぬっ、それは体に別状ないんやし、起きたら美味しいもの食べたいっしょ?」
ロイド 「でも、いくらなんでもケーキは…。」
ノア 「っていうか俺たちの分は無いんですかー?」
リベラ 「いただき物やからさっきわいちゃんとクレアちゃんが食べた分で終わりですー。」
ノア 「ちぇー。」
クレア 「…あの、あたしに何があって、どのくらい眠っていたんですか?」
「「…。」」
ノア 「…覚えてないの?」
クレア、うなずく。
リベラ 「まぁ、無理もないかな。相当の衝撃が頭にきていたはずやから。他にも記憶の混乱や欠落、混濁があるかもしれん。…簡潔に言うとな、部活の最中に事故で相当な高さから転落したんよ。」
クレア 「転落…。」
リベラ 「そう。その晩に一度目を覚ましたらしいんやけど、そのあとまた意識を失って3日。今こうして晴れて目を覚ましたってワケ。」
ナツミ (3日間も…)
ノア 「先生まだ疑ってんの?本当に起きたんだって!それでめっちゃでっかい治癒魔法使ってまた気を失ったの!」
リベラ 「そもそも、勝手に保健室に侵入して寮にも戻らなかったことから問題なんやって!」
ノア 「それはもう寮長からしこたま叱られたからいいじゃん!クレアがすごい治癒魔法使ってすぐロイド叩き起こして先生んとこまで報告しに行ったの!」
リベラ 「マジであの時夜中に先生の宿舎をドタバタと叫びまわって…。」
ノア 「だって先生の部屋どこだかわかんなかったんだもん。めっちゃ急いでたし。」
リベラ 「ある意味クレアちゃんのせいで色々大変だったんよ?」
クレア 「はぁ…。」
ロイド 「僕もノアの話は事実だと思います。実際、僕が叩き起こされた時にはクレアの傷は跡形もなく綺麗になくなっていました。」
リベラ 「うーん…確かにわいちゃんが治したわけではないし…。でも、そんな強大な治癒魔法を生徒が…。」
ノア 「本当なんだって!クレアも治癒得意って言ったよな!?」
クレア 「えっと…。」
リベラ 「だーだー!わかったから!病み上がりの人間に詰め寄らない!ほら、もう教室にお戻り!授業始まるで!」
ロイド 「やばい!次の授業飛行術だぞ!」
ノア 「うわっ着替えてない!?飛行術遅れるとだるいんだよな…。」
リベラ 「あと一限なんだから、はよ行って放課後戻ってきな。もう一人のオトモダチも一緒に。」
ノア 「あ、そういや特待生は?」
ナツミ (特待生?)
ロイド 「なんでもディアス先生に頼まれごとをされたらしい。ついでに着替えるから保健室には放課後寄ると。」
ノア 「お前そういうの知っていたのなら早く言えよな。」
ロイド 「ノアが僕の話も聞かずにチャイムが鳴ってすぐ駆け出したんだろう。」
ナツミ (特待生についてあたしが知っていること…。特待生はたった一人でこの異世界に突然飛ばされた女の子。魔力のない世界で育った彼女には当然魔力はなく、世界に適合しない不便な体での生活を仲間のキャラ達によって支えられ、懸命に過ごす。その代わり、特待生には魔力を増長する不思議な力があるから、それを分けてもらってwinwinといえば、winwinな関係だ。特待生はプレイヤーつまり、ゲームをプレイするあたしたち一人ひとりだから、具体的な個性を出さないことによって感情移入がしやすいように設定されていた。なので、性格も生い立ちもわからない、作中一番謎の多い人物といっても過言ではない。見た目も名前も個性もない、のっぺらぼうのような存在…。だから、プレイヤーが選ぶ行動次第では、キャラクター達を手玉にして転がす、悪女にだってなれたはずだ。でも、この世界では一人の人として存在している。果たしてどんな子なんだろう…。)
リベラ 「なんでもいいから今度は特待生ちゃん連れて放課後戻ってき。そんとき、クレアちゃんの服とか諸々持ってきてな。はぁ、喧しくてしかたないわ。」
ノア 「喧しいのは先生には言われたくない!」
リベラ 「わいちゃんは喧しいんじゃなくて賑やかなの~。」
ロイド 「それはなにが違うんだ…?」
ナツミ (あと、特待生について…。そういえば、特待生はこちらの世界に来るとき、なにか一つだけ物を持ってこれたはずだ。それによって主人公の性格が決まるとか、ルートが決まるとか…。どれも確かな情報じゃないけれど、何か持ってるはずなのは確かだ。特待生は何を選んだんだろう…?)
リベラ、ノアとロイドの背を押して部屋から出そうとする。
ロイド 「じゃ、クレア、また来るからな。」
ノア 「寂しくても泣いたりするなよ?」
ロイド、ノア部屋から出て扉が閉まる。すぐに奥の扉も開いて閉まる音がする。
ナツミ (あとは…あとは…?ダメだ。さすがキャラとしてみたとき作中最も謎多きキャラ。これ以上は、何も浮かばない、知らない。…あ、“主人公黒幕説”。主人公が不思議の力を持っているのにあまりにも何も出てこなさすぎるから浮かんだ噂…。こんな時に嫌な言葉が浮かんじゃったな。でも、もし、あたしに起こったことも、これから起こることも、全部全部特待生のせいだったら…?あたしを、作品の世界に入れて…あたしの、オリキャラで…)
リベラ 「まったく。心配で泣きそうだったのはどっちなんだか。ノアちゃんとロイドちゃん、最初は寮にも戻らないでクレアちゃんの目が覚めるまでそばにいるって聞かなかったんよ?さすがに説得して帰したけど、本当に仲良しやんな~。…クレアちゃん大丈夫?」
クレア 「あっ…。」
クレア、血の気の引いた真っ青な顔をして冷や汗をかいている。
リベラ 「起きたばかりにはちょっと彼らは元気すぎたかな?放課後までゆっくり休み。」
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