#2

なつみ、乖離の箱庭を起動してホーム画面を開く。



アレン ≪おかえり。イベントはまだまだ続くから焦らないようにな。≫



なつみ、ホーム画面から設定をいじる。



くせ毛の快活そうな青年 ≪やぁっと俺のこと選んでくれた。ずっと待ってたんですけど~?≫



アレンと入れ替わり、ノアがホームに立って頬を膨らまし拗ねたような顔をする。



ふゆか 「おぉ!これか。え、カッコいいじゃん。」


なつみ 「かっこいいよ。」


ノア ≪なになに、そんなに見つめて。もしかして俺に見惚れてる?・・・え、違う?≫


ふゆか 「ノアもさっき待ってたって言ってたよ?」


なつみ 「それはボイスじゃん。」


ふゆか 「いやいや、冗談抜きでなつみがそこまでノアを引くのは運命だと思うけどね?ウチじゃそんなに出ないもん。」


みはる 「うん。やっぱりなつみはクレアちゃんだから。ノア×クレアはおいしい。」


なつみ 「クレアちゃんと実際のあたしは何も関係ないでしょ~?」



なつみ、乖離の箱庭を閉じる。



ノア ≪・・・。≫



ノア、口を開きかける。

なつみのスマホの画面が閉じる。



なつみ 「えっ。」


なつみ (今、ノア、すごく悲しそうな顔した気がしたけど・・・。・・・何か言いかけてたし、もしかしてボイスの途中で切っちゃったかな?あとで、新規ボイス確認してみよう。)


ふゆか 「ん、どした?」


なつみ 「あ、いや・・・。はぁ、とにかく、アレンが欲しかったのに今回も爆死ですわ。」


みはる 「40でそれなら、まだ爆死と言うには早いよ。」


ふゆか 「お、爆死王来た。」


みはる 「天井はすり抜けるもの。SSR出現率アップはまやかし。ピックアップは幻想。課金は当たり前。」


なつみ 「おおぅ・・・。言葉の重みが違うわ・・・。無課金で今までやりきれている自分がずっと恵まれているほうだと実感できる。ありがたや・・・。」



なつみ、みはるに対して合掌する。



ふゆか 「そういうことだ。頑張りな!」



ふゆか、なつみの肩に手を置きグッドサインをつくる。



なつみ 「はぁ、他人事だからっていいよな。」


ふゆか 「いや~。ガチャで心を乱す人を見るのって面白いよね!」


なつみ 「・・・ルイスで同じ目に遭え。」


ふゆか 「それは困るな。」


みはる 「二人ともこちらにおいで・・・。」


ふゆか 「あ、爆死王は結構です。」


なつみ 「おかえりください。・・・ってか、他のメンバーは?」


ふゆか 「ウチは何も聞いてないよ?」



ふゆか、なつみの座っている席の前の机に座る。



みはる 「私も。」


なつみ 「ふぅん・・・。」



なつみ、ふゆかの姿をまじまじと見つめる。



ふゆか 「なに?」


なつみ 「ん、インナーの色完全に落ちてパツキンになったなぁって。」


ふゆか 「あぁ。ね。」



ふゆか、自分の色の変わった髪を見やる。



なつみ 「それ、頭髪検査引っかからないの?」


ふゆか 「ん~?登校の時は髪結んでインナー隠してるから。先生も普段じゃそんなにうるさくないし。」


みはる 「一度染めたら黒染めするの面倒だよね。」


ふゆか 「そ~!だから元から茶髪っぽいみはるとか羨ましいわ~。それか、染めるの禁止な校則を変えてくれ。」


なつみ 「それはふゆかが生徒会長になって自ら変えてもろて。」


ふゆか 「それはだるいな。」


みはる 「だるいのか。」


なつみ 「スカートも短くしたでしょ?」


ふゆか 「うん。暑くなってきたから。」


みはる 「そのわりにブレザーは着るんだね。」


ふゆか 「生足はJKの特権でしょ~。積極的に取り入れないと損かなって。」


なつみ 「何折?3?」


ふゆか 「そ、3。冬は2で夏は3。」


なつみ 「あたしはあまりとやかく言わないけど、ちあきが何て言うか・・・。」


みはる 「あー、何か言いそう。」


なつみ 「「何そのスカート丈?痴漢してくださいって言ってる?」とか?」


みはる 「言いそう。」


ふゆか 「言いそうだなぁ。」


なつみ 「ピアスも開けてゴリゴリに校則破ってくじゃん。」


ふゆか 「まぁね。バレなきゃオッケー、怒られなきゃオッケーってことで。なつみは何かしないの?」


なつみ 「あたしは体は何もいじらない主義だから。父母からもらった遺伝子で自然に生きるつもり。」


みはる 「制服もしっかり着てるもんね。」


なつみ 「校則と法律は守るタイプの不良生徒だから。」


ふゆか 「それ不良生徒っていうの?」


なつみ 「税金泥棒の先公には積極的に逆らうよ。」


ふゆか 「みはるは?」


みはる 「え?・・・なんでもいいんじゃない?」


なつみ 「出た。お前意思ないのかよ。」


みはる 「だって、おしゃれとかかわいいとかよくわからないから。なんでもいいよ。」


なつみ 「なんでもいいと言いつつ、その実はただ面倒くさいから考えることを放棄しているだけというね。」


ふゆか 「みはるらしいと言えばみはるらしいけどね。」



突如、教室の引き戸が大きな音を立てて開く。



上ジャージの少女 「は~!お待たせ!」



制服に青の上ジャージを着て、胸丈ほどの髪を一つに結んだ少女、ちあきが疲れたような顔をして教室の扉を勢いよく開けた。



ふゆか 「うるさっ。」


なつみ 「もっと静かに開けられないの?」


ちあき 「え?あぁ。いや、この扉重いんだよ。」



ちあき、ズカズカと教室に踏み込む。



なつみ 「しょうがない、クソババァだから。扉を美しく開けられないんだ。」


ちあき 「クソは余計だよ。」


ふゆか 「ババァなのはいいのか。」


ちあき 「え?」


なつみ 「ふふっ。」


ちあき 「もう、ババァなのは否定できなくなってきたよね。アンタたちに言われ過ぎて。」


みはる 「いや、ちあきの老体関係なく、この扉に関してはオンボロ学校だから老朽化してるんだよ。」


ふゆか 「それな。マジ学校ボロい。トイレ臭いし、建て替えてくんないかな~?」


ちあき 「無理だろ。そんな金はない。」



ちあき、重そうにスクールバックを3人の近くの机に置く。



みはる 「でも、毎年家庭科室のミシンは最新のを買っているというね・・・。」


ちあき 「金の使い道がもっとあるだろ。」


なつみ 「なに、寝てたの?」


ちあき 「え、何急に。私?」


ふゆか 「いやいや、あなた以外誰がいるのよ。」


ちあき 「あそっか。いや、今日全身バキバキでさ。」


なつみ 「あのまま寝たんか。ちゃんとベッドに行けって言ったのに。」


ちあき 「意識飛んでて気づいたら朝だった。」


ふゆか 「人はそれを寝たと言うんだよ。」


ちあき 「そうか。」



ちあき、ふゆかのスカートを見る。



ちあき 「ってか、アンタ何そのスカート丈?痴漢してくださいって言ってる?」


なつみ 「ほら言った。」


ふゆか 「ほぼそのまま言ったね~。」


ちあき 「え?何?」


みはる 「ちあきならふゆかのスカート丈見たら同じこと言いそうだなってなつみが予想してたの。」


ちあき 「いや、言うよ。すごい心配だもんそのスカート丈。」


ふゆか 「ちあきは私のお母さんか。」


ちあき 「ほぼパンツじゃん。パンツ丈。」


なつみ 「いやいや、それはさすがに言い過ぎだって。ハーフパンツ以上短パン未満。」


ちあき 「これは痴漢してくださいって言ってるのも同じでしょう?なに、触っていいの?」


ふゆか 「ちあきが触っても痴漢されてもはっ倒すから。」


みはる 「やりそう・・・。」


なつみ 「言葉よりも先に手が出るからなぁ、この子・・・。」


ちあき 「そのスカート丈ではっ倒されたら、逆に痴漢が可哀そうだよ・・・。」


みはる 「痴漢が同情されてるとこ初めて見た。」

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