妖と人の街桜庭市〜百鬼夜行〜

一話桜庭市

私は天澄 珠代(あますみ たまよ)、ここ桜高校の一年生だ。容姿はそこそこで、自分で言うのもなんだがモテる。それでも私は誰とも付き合ったことが無い。それに、私には見えてしまう………妖が。

この力は普段妖を見ないように行動すれば大抵はなんとかなったし、襲ってくる奴は返り討ちにして来た。そして前世の記憶も持っていた。

私は前世から霊力が高いらしく、妖からするとご馳走に見えるらしい。また高位の妖になると嫁に欲しがるとか………


そして現在、下校中なのだが、困った事態になっている。

目の前にはかの有名な土蜘蛛がいるのですよ。それはそれはデカい蜘蛛がいらっしゃる。

「其方が珠姫だな?其方を我の嫁にしてやる故に来てもらおう。」

「いや、お断りですけど?」

蜘蛛と結婚なんてごめん被る。

「其方に拒否権はは無い!黙って我の嫁になれば良いのだ!」

いきなりキレだして道路のど真ん中で始まる大乱闘。

土蜘蛛はその鋭い足で串刺しにしようと足を振り下ろし、私は避けながら霊力を練って拳に集める。

「嫁にしたい女を傷物にするつもり!?」

土蜘蛛はまったく聞く耳を持たず、足を横に薙ぐもジャンプして避ける。

「ああもう、面倒臭い!かっ飛びなさい!」

握り締めた拳からは陽炎の如く揺らめいて霊力が迸る。そして撃ち抜く。

見事に土蜘蛛の脇腹を抉って吹っ飛ばす。民家のブロック塀にめり込み動きが止まる。

「がはっ!オノれ、ニンゲン風情に負ケるとは」


「まったく、これに懲りたら人間なんて狙わずに山に帰りなさい。大妖怪なんて相手にするの面倒だからもう来ないでよ〜」

少し回復してきたらしい土蜘蛛がふてぶてしく言い放つ。

「この土蜘蛛が貴様の言うことを聞くとでも?人をたくさん食らって貴様を食い殺してやる」

私は抑えていた霊力を解く。すると全身から霊力が溢れ、それを纏うと紅のはかまとなり、実体化してひたいからは二本の紅い角が生える。

「ねえ土蜘蛛、人を喰らうと言ったのかしら?私に逆らうのなら容赦しないわよ?」

滂沱の如く叩きつけられた殺気の圧力に土蜘蛛は震え出す。

「ヒィッ!?」

「私はねぇ、これまで貴方みたいなクズ大妖怪を血祭りに上げてきたの。私の前世珠姫はこうも呼ばれていた、『紅の鬼神』と。」


「ああああ、あの妖討伐の武将頼光一派を滅ぼした鬼神様!ご無礼を平にご容赦くださいませ。貴方の軍門に降らせて貰います。」

土蜘蛛がガタガタ震えてながら平伏す。

「私の配下になるなら星ノ宮神社を訪ねなさい。そこで奉公するも山に帰るも好きになさい。分かったら今後悪さをしないことね。」

そう言いすてて私は鬼神化を解いて帰途につくのだった。



桜庭市の北西部にある星ノ宮神社の鳥居の上から街を眺める鬼がいた。

「まったく、土蜘蛛が潜り込んだと聞いて慌てて見に出てきたのに、珠代ちゃんはおっかないねぇ。大妖怪の域にいる妖を軽々と下してしまう。それに、霊力が半端ないね。流石、鬼嫁といった所かな?俺の手には余るぜ鬼神様。ちゃっかりうちに後始末丸投げしてるし。さてと、あそこの家の塀と道路を治して来ておくれ黒子達」

黒い小人のような妖を送り出す。

もうすぐ百鬼夜行の時期だ。何も無いと良いのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る