桜花

雪カメ

第1話prologue

ひらひらと舞い散る桜のなんと儚いことだろうか。夜の闇に燃え盛る火の粉のように輝きを見せて消えて行く。我ら悠久の時を生きるものの運命さだめだとしても、あな悲しきや。故に愛おしき人の子らよ。その一瞬ひとときを輝いておくれ。ああ、私の愛しき珠姫よ。千年の時を待ち侘びたよ。


人とあやかしが共存し対立した平安時代。人に葬られながらも現世うつしよに細々と生きながらえた妖たちの現代。今宵の時代は現世うつしよ隠世かくりよの境が曖昧になる千年の時。


「もし、また生まれ変わることが出来たなら、あなたに会いに参ります。そしてまたあなたに恋をします。約束ですよとおる様」


「ああ、約束しよう。生まれ変わった珠姫に会いに行く。そして其方の全てを攫いに行こう。」


闇に輝く星空の元、ソメイヨシノの樹の根本でひっそりと交わされた約束。それは一人の人間の娘と妖を率いた鬼神の男の恋の詩。混ざりて別れ今一度いまひとたびの音を刻む。人と妖の甘く物悲しい音色の詩となるか心躍る優しき音色となるかは神のみぞ知る。

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